第3話 悪役、この先を考える

 

 ◇



 フィリップグリノア彼女の出会いは今から約二年前、俺が一歳になった時、赤子のフリをしていた時の出来事だ。

 ノア……グリノアの本名はグリノア・ノースベルと言う。彼女は当時奴隷で、それを俺……父様が俺の専属メイドとして雇った。

 彼女は奴隷の中でも忌み嫌われる『忌み子』と呼ばれる存在だ。『忌み子』は一種の「呪い」とも呼ばれている。


 そして、際も重要なことが……彼女は悪役とは違って『空彼』の「正ヒロイン」である。

 そしてそして……主人公であるマルスと恋に落ちる――即ち俺をする人物でもある。

 俺は彼女とのイベント出会いを分かっていた。分かっていたから回避のしようはいくらでもあった。なのに今はこうして俺の「専属メイド」となっている。


「……どう致しましたでしょうか?」

「あ、ううん。なんでもないよ」

「左様ですか……」


 フィリップはまだ真新しい記憶を手探りで手繰り寄せ、背後に立つグリノアに視線を向けていた。

 その視線に気づいたグリノアが無表情で問うが、それを誤魔化すように笑いかける。



 ただ、起きてしまったことはしようがない。俺は現実を認め持ち得る記憶と今までの生活で紡いできたこの信頼を育もうと思う。

 この後にも色々と困難はまっているが、俺は最悪な運命を変えるべく、前に進むことを強く誓う。



 たとえ、それが――だとしても。



 ◇◇◇



 天界にてとある人物の先行きを眺めている人物がいた。


「――へぇ、運命を受け入れる、か。君らしい。けど、それが幸福な運命なのか。はたまた最悪な運命なのか。でもわからない」


 色とりどりの花で埋め尽くされる真ん中に聳え立つ黒曜の塔にその人物は居た。

 白いローブに身を包む人物はフードを被り、唯一見える口元だけを楽しそうに緩める。


「ただ、そうだな。君の運命はそう悪くないものになると私は思う」


 「ま、全て君の行動次第だけどね」という謎めいた言葉だけを残し、その人物は塔の中に消えてゆく。





 ※ここまで読んで頂きありがとうございます。

 この作品は三話で完結となります。

 ただ、「短編」ではなく「長編」として書く予定……と言いましたが、「長編」での投稿を決めました✨

 ただ、カクコンに出している作品ですので一旦コンテストが落ち着いてからになります。それまでにできるだけストックを貯めたいとは思っております。

 最後に、少しでも楽しかったり、続きが気になったら評価をお願い致します。




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奴隷メイド少女にコロコロされる運命を迎える悪役〜二度目は細々と生きます……公爵家次男という枷が許しません 加糖のぶ @1219Dwe9

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