“聖地巡礼”はじめました!
曲がり
プロローグ 波乱の高校生活!?
漫研に入部したい! 漫研に入って、中学では出来なかったオタク友達と仲を深め合いたい!
その気持ち一心で私は漫研の部室の扉をノックした。
コンコン。
「失礼します! あの、部活見学をしに来たんですけど……」
私は手の甲で二度ノックして、ガラガラと引き戸を開く。
「あら、いらっしゃい。でもせっかく来てくれて悪いんだけど、今月でうち廃部だよ?」
中で待ち受けていたのはここの部員と思われる先輩? だった。窓際に立っているその女性は目鼻立ち整ったスラッとした体型で、それだけで絵画じみた光景だと……
って、今なんて?
「えっ? い、今なんて言いました?」
「えっ? だから、この部活は今月で廃部だって……」
「え……えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
*
遡ること一週間前──
今日から私は華の高校生。中学では全くと言っていいほど友達が出来なかったけど、今度こそは沢山友達を得て、楽しい高校生活を送るんだ! でも、高校デビューみたいな野暮なことはしない。入学までに自分磨きをして、無理やり人当たりも良くするなんてこと私はしないぞ。と心に決めている。ではどうするか。それは、「趣味の合う友達」を見つけることだ。中学はその趣味のせいで引かれて友達が出来なかった。ならば、気の合うヤツが見つかるまで探せば良いではないか! 登校中、そんなことを思考しながら歩く。
「ち、チヨちゃ~~~~~~ん、遅れてごめ~~~ん」
私は走りながら、集合場所で携帯を眺めている少女に向かって大きく手を振る。
これからの意気込みについて考えていたら、いつの間にか道を間違ってしまい、集合に遅れてしまっていたのだ。
「タマ、遅いぞ~。もうすぐで8時になっちゃうじゃないか」
「はあはあ……。ごめん、ちょっと道間違っちゃってたみたいで」
「なーにやってんだよぉ。まぁタマのことだからそんなことだろうと思ったよ。……さ、急ごうぜ。今ならまだ間に合う」
「そうだね。急ご!」
幼馴染のチヨちゃんはすんなり許してくれた。千代田瑞穂の千代田からとってチヨ。小学校からの付き合いだからか、私のことを知り尽くしている。悪気があってのことではないと確信しているのだろう。それとも、ただ単に呆れられているか。そのどっちかだ。
「でもよく考えればチヨちゃん、どうして高校まで一緒のところ志望してくれたの? 私が『中学のクラスメイトが選ばなそうなところに行きたい!』って言ったばっかりにここまで……。」
「どうしたよ改まって……。別にタマがほっとけなかったってだけのことだよ。ほら、タマってほっとくとすぐ死んじゃいそうじゃん? 友達も私ぐらいしかいないし」
「死なないし! それに、よりペット感だすなし!」
チヨちゃんは私をタマと呼ぶ。児玉三郷の児玉からタマとなったのだが、どうもペットっぽい。ネコ感が半端なさ過ぎる。だから私はあまり気乗りしないが、何回も呼ばれるうちに慣れてしまった。
そんなことを話していると着いた。高校だ。校門の右端に「花西高等学校第58回入学式」と記された立札がある。急いで下駄箱に駆け込み、上履きに履き替える。
「ふう……。ギリギリだったけど間に合ったなタマ」
「ねえ、チヨちゃんあそこ……」
タマが指差す方向にはクラス分け表の紙が壁に張り出されていた。ついでに体育館への順路の張り紙も。
「ええっと……、私はB組だ。タマは?」
「うーん……、私もB組だ! やったね!」
「喜んでいる暇はないかもしれないぞ。多分。」
「へ? なんで?」
「この体育館までの張り紙さ、多分遅刻してきた人用に貼られているとしか思えないんだ……。だって事前に集合は教室って知らされてたし」
私は名推理と言わんばかりのテンションでやけに重々しく話した。
「チヨちゃん……、名推理だ……。」
言ってくれた。
私もタマと同じクラスになったことで浮かれすぎていたのかもしれない。私の推理は“迷”推理に終わった……。
──なぜならば、下駄箱で上履きに履き替えた後、推理基直接体育館に向かった二人。しかし、体育館は静寂そのものだったのだ……!
「“迷”推理だったね……、“迷”探偵チヨちゃん」
「うるさい、そこは言わんでよろしい」
結局、ギリギリ遅刻という形で、素直に1年B組の教室に向かい、初めての学校の初めての教室で初めましての周囲の視線を感じながら自分の席に着く二人だった。
*
入学式を無事に終え、クラス内での自己紹介は無事に失敗に終わった三郷は、現在机に突っ伏して項垂れていた。
「うぅぅ……、あんなの端から無理ゲーなんだよぉぉ……。皆の前でいきなり自己紹介とか。チヨちゃんはいいよね~、コミュ強だし、人当たりいいし……」
チヨは、貰ったばかりの教材や書類をバックにしまい込んでいた手を止め、こちらを向いた。
「タマは毎回のように失敗するよねぇ。いつも考え過ぎなだけだって……。気軽に自己を紹介すればいいのに。」
「気軽に自己を紹介って……。チヨちゃんだからできるだよ……。気軽になんてできない! 笑われたらどうしようとか、噛んだらどうしようとか、色々考えちゃうもんなんだよ。」
クラス内での自己を紹介なんてもう10回目くらいだけど、未だに慣れない。あんな多寡が数秒で今後のクラスヒエラルキーが決定され付けるなんて残酷過ぎない? 組み分け帽子ですらもうちょっと優しいぞ。だって願えば叶うんだもん。ぼっちは嫌だ。ぼっちは嫌だ。ぼっちは嫌だ。ぼっちは……。
「タマ、でも本命はこっちじゃないんでしょ? 言ってたじゃん『私は漫研がある高校に行くんだ!』って」
「そうだよ! そうだったね! 私はこの学校で漫研に入部してマンガやアニメのオタク友達を作ることが志望理由だった!」
「不純な志望理由だな……。」
「そんなことないよ! れっきとした志望理由だよ! それよりチヨちゃんは部活決めた?」
「まだ初日だからなー。でもここは部活は必須で入らないといけないらしいからなあー。私はタマほどあまりマンガに詳しくないし……。」
チヨはさっそく配られたばかりの様々な部活の書かれたプリントを取り出す。
「うーん……と、この少し前から気になってた写真部とか興味あるなー。私カメラとか結構好きだし。」
カシャカシャと言いながら顔の前で写真を撮るポーズをとるチヨ。
「あー、確かチヨちゃん、私がここの高校のパンフレット貰って一緒に見てたときもいってたねー」
「まあね。でも今度しっかり部活紹介とかあるだろうし、部活必須っていってもまだ時間はあるだろうからぼちぼち考えとくわ」
心細いからチヨちゃんも一緒に入部してほしいとは、高校まで付いてきてもらった手前流石に言えず、先々を少し心配しながらも三郷は部活見学(仮入部)書類を週末の金曜日には担任に提出した。
*
入学から一週間後──
三郷は窮地に立たされていた……!
「え、廃部ってマジですか?」
「うん」
児玉三郷の初めての高校生活、これからどうなる!?
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