第146話 完全昇華
『酷い夢を見た気分だ』
『それが現実の歴史です。そして今、その全てが貴方という個人に集約されました』
正直な話、
『私の使い方は分かりましたか?』
『はい』
『ならば、私の役目はここまでですね。次は、霊装解放を習得した時に会いましょう』
『はい、色々とありがとうございました』
『どういたしまして』
その声を最後にテトラさんの声は聴こえなくなり存在が薄れたのが分かった。俺はこれまでの人生を経て自分が特別ではないことを理解している。だからこそ、特別になることを願い生み出されたこの力を正しく扱える気がした。
『貴方を救う為ならば、俺は喜んで英雄になる。待っててね、父さん。今解放してあげる。霊装解放、
霊装解放の全能感に包まれながら止まっていた時間が動き出すのを知覚する。俺の霊装解放である
「英雄斬」
普通ならば間に合う筈のないタイミングだが
全身から迸る青いオーラを剣に纏わせるだけで父さんの放った霊装による必殺の一撃を相殺して見せる。
「流石に左腕の修復には時間が掛かるか」
「
「英雄斬、くっ、まだ押されるか」
霊装解放によって向上した
「
現在父さんが使用している十三個の霊装は全てが圧倒的に優れている訳じゃない。その代わり、全ての霊装の相性がよく相乗効果によって圧倒的な戦闘能力の獲得に成功している。
「せっかく霊装解放に目覚めても、この戦いの中で使い熟さないと結局負けるな」
「
「英雄斬」
俺と父さんの攻撃のぶつかり合いで周囲を激しい風圧が襲う。どちらも通常攻撃が必殺の一撃になっているのでただ戦闘をするだけで周囲には被害が出る。
霊装解放である
「技術があるのが何より厄介だ。流石はロゼリアさんに褒められた霊装だね」
既に死んでいる筈の父さんが
能力は常に最適解を選んで行動出来るという普通ならば微妙にも思える霊装だが、これを身体能力がロゼリアさん並みのインサニアシリーズが使うと劇的に化ける。
「けど、今まで見えなかった弱点も見えて来た」
インサニアシリーズの特徴は霊装を組み合わせられることでありそれが十三個も組み合わせられた父さんはまさに最強のインサニアシリーズと言っても過言ではないだろう。だが、いくら上手く組み合わせても霊装は人工的には作れない。
天然物の霊装をいくら上手く組み合わせても数が大きくなれば必ず髪合わない部分も出てくる。
「右手の剣は自身の体を自壊させる代わりに身体能力を向上させ、それを更にもう一つの霊装で負の効果を強化している。そして自身に掛けられた負の効果を別の霊装で反転させることで身体強化を転換する。本当によく出来ている」
激しい撃ち合いで周囲に災害を撒き散らしながら俺は父さんの弱点を分析する。身体能力を向上させる代わりに体を自壊させそれさえも身体強化に利用する。確かによく出来ている仕組みだけど、完璧なものほど一つでも歯車を失えば簡単に壊れる。
「負の効果を反転させる霊装の霊核を砕けば勝手に自壊する。そうすれば後は超再生の霊核も壊して終わりだ。ただ問題はどうやって左肺にある反転の霊核を壊すかだな」
技量にそこまでの差はないから普通に攻撃は通らないし、例え攻撃が当たっても英雄斬の威力だとオーラ型の霊装を防御にフルで回されると傷は付けられても霊核を潰すまでは出来ない。そうなれば、一瞬で再生されて初めからやり直しだ。
「まぁ、既に手は打ってあるんだけどね」
俺は父さんの斧と剣を交える度にひたすら同じ場所を攻撃し続けていた。どれだけ初めの頃よりも斧の強度が上がろうと英雄斬を同じ場所に何度も受ければ当然ただでは済まない。
「これで耐久力の限界値だ」
どれだけ技術があろうと思考力がなければ先を見据えた作戦を立てられない。なまじ最適解が分かるからこそ、先を見据えて敢えて最適解を外すという選択肢が取れない。
「父さんなら、こんな手に引っ掛からなかっただろうな」
斧が砕けたことで父さんには致命的な好きが出来た。その隙を利用すれば高確率で仕留めることが出来る。そう思った瞬間、進化した
これまでの経験に従ってすぐにその場を後にした俺は自分の見通しの甘さを思い知ることになった。
「霊装解放、
「ダメだな、常識に囚われ過ぎた」
目の前で霊装解放を披露した父さんを見て自分の中の誤った認識を即座に改める。インサニアシリーズは霊装解放が使えない。これまでずっとそう考えて来たし実際に霊装解放を使えるインサニアシリーズは見たことがない。
だが、そもそも霊装解放が使える人間自体が貴重であり、俺がグランドクロスなら霊装解放まで至った優秀な人間の意思をわざわざ奪って弱体化させるような真似はしない。しかし、死霊のアマンダによって復活した人間なら話は別だ。
「霊装解放の能力は脊髄反射レベルを超えた完全な体のオート操作か。そう言えば、ギルガイズも最後に至ったって言ってたもんな」
「
「やっぱり、技術以外にも霊装の使い方も最適化して来たか」
ここまで来ると本当に戦闘用の人形みたいだ。だからこそ、早く解放してあげないといけない。
「左腕も動かせるようになったしこっちも本気で行くよ。父さん」
これまでの攻防でずっと休ませていたのと
そもそも
「このオーラ自体には他の霊装の能力のような特別な力はない。けど、纏うと攻撃力が上がるなんて平凡な能力な筈もない」
「霊装解放を使用してようやくスタートラインに立てる霊装。その本質は願望の実現にある」
恐らく、青いオーラで攻撃力が上昇するのは英雄が強いというイメージが先行している結果だ。なら、
「つくづく便利な霊装だな」
どれだけ今の状況がピンチでも急激な成長は出来ない。けど、方法がない訳じゃない。
「
足りないのなら強制的に進化させれば良い。そうして俺は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます