ミサイル七変化 ADM-160 MALD
MALD(マルド)は1999年に開発された、アメリカの囮ミサイルです。
基本形にA型とB型がありますが、おそらく現在使われてないと思われるA型は解説しません。
MALDの解説に入る前に、RCSという考え方について説明します。
RCSはレーダー反射断面積と言い、航空機に電磁波を当てた時にどれほどの大きさの円として認識されるか?を表します。
大型の爆撃機であればRCSは大きくなり、小型機やステルス機では小さくなります。
言い換えると、レーダーが放射した電磁波の跳ね返ってくる量です。
当然RCSが大きいと見つかりやすくなり、小さければ見つかり辛くなります。
ところで、電磁波を増幅して跳ね返すことができれば、このRCSは実態よりも大きくなります。
通常であればそんなことをやる意味がありません。
しかし、囮であれば、意味が生まれます。
MALDは電磁波を増幅する、SAS(シグネチャ増強サブシステム)を備えています。
これにより、B-52からF-117まで様々な機体のRCSと反射特性を真似することができます。
ちなみに、B-52は巨大な爆撃機で、あまりのRCSの大きさは政治的な威圧に使われるほどです。どんなちんけな防空網でも、B-52の存在ははっきりと見えるからです。
逆にF-117は、ステルス性を極限まで求め、他のすべてを切り捨てた戦闘機です。戦闘機と言っても対空能力は無く、実質的な攻撃機です。
これだけ多様な航空機のRCSを真似できるので、MALDは優秀な囮になり得ます。
速度はマッハ0.91まで出せます。
あくまで囮なので小型です。
一機に多数のMALDを搭載することもでき、大量発射することで攻撃成功率を大きくあげることができます。
100以上の飛行ポイントを指定でき、MALDは発射後にポイントの順番に従って飛行します。
誘導は、アメリカお得意の慣性航法装置とGPSです。
慣性航法装置は精度が悪く、GPSは妨害を受けるという欠点がありますが、MALDは囮ミサイルなのでコースを大きく外れなければ問題ありません。
射程は920km、目標上空を徘徊する能力があります。
高性能ですが、その分高価です。
MALDの欠点は、4000万円超の値段です。
巡航ミサイルよりは安いですが、囮としてはかなり高額な部類です。
これをバカスカ撃ちまくるわけにはいきません。
使い捨てで、しかも敵に直接打撃を与えるわけでもないミサイルに、4000万円を出せる国は少ないでしょう。
また超音速は出せないので、高速侵攻する戦闘機部隊の囮として使うのは難しく、綿密な作戦が必要です。
しかし、囮としては十分でしょう。
値段こそ張るものの、それ以外で大きな欠点は見当たりません。しかもウクライナは買うのではなく、供与されるのです。
MALDはC型(ADM-160C、MALD-J、Jはジャミングの頭文字)があり、囮ミサイルとジャミング弾を兼任できます。
データリンクシステムを備え、敵の電子戦システムを把握しつつ経路を変更して妨害する目標を変えることができます。
囮でありながらジャミングで敵のレーダーを妨害できるので、強力です。
複数放てば、その地域の電子戦システムや防空システムは一時的にですが崩壊する可能性さえあります。
敵レーダーによる味方の捕捉を邪魔することもでき、同時に戦闘機や攻撃機で侵攻すれば圧倒的に有利な状況を作り出せます。
2023/5/15現在、ウクライナで確認されたのは、B型のみです。
MiG-29などに搭載して発射することができるとされており、ストームシャドウを搭載した航空機と共に発射したと考えられています。
補足が難しいものの迎撃は簡単なストームシャドウと組み合わせることで、敵の迎撃を引き寄せることができ、命中率を上げることができます。
ストームシャドウはロシア軍が展開しているGPSジャミングが効かないので、これの補佐は非常に重要な任務となるでしょう。
または、全く別の機体に化けて混乱させることができるかもしれません。
使い方次第でトリッキーな戦術を取れるMALDは、ロシア軍の兵站や通信能力の破壊に一役買うことでしょう。
ちなみに、MALDの有り無しでどれほどストームシャドウの突破率が違うかを端的に表した動画がこちらです。
https://www.youtube.com/watch?v=d6p0YY_VQZY
このシナリオでは、ストームシャドウは二つの目標に攻撃するのが成功条件となっています。
途中で出てくる高速のミサイルはウクライナに供与されていませんし(HARMの代わり?)、複数のミサイルの挙動がおかしいところもありますし、Mig-29にこんなにMALDを搭載できるか分かりませんし、配備数の少ないS-400を置いていますし、現実の防空指揮官はもっとうまいことやるかもしれません。
ですが、攻撃の成功に大きくかかわってくるというのは、なんとなくわかると思います。
あくまでゲームの再現動画ではありますので鵜呑みにされぬよう、しかし読み取れることの大筋は正しいので、見ていただけると分かりやすいと思います。
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