言語化されなかった哀れな欲望

言語化されなかった哀れな欲望が

ぼくらに囁いている

別にばれやしないだろうと

誰も困らないんだからと

みんなやっているからと

くだらない悩みだと

忘れてしまえと


嫌いなものは言語化されていないもの

どろどろしていて確定されていなくて切り離せないもの

つまるところそれが「ぼく」であり

どうしようもない痛みでもある


言語化されなかった哀れな欲望が

ぼくらの言語化された光り輝く目標を

貪り食って大笑い

お前はダメな人間で

どうしようもないやつなんだと

頼んでもいないのに教えてくれる

結局お前は凡人なのだと

凡人の僕が語る


言語化されなかった哀れな欲望が

それぞれの真剣な実際生活を

満たされない感情に還元し

取るに足らないくだらないものだと評価する

そうして起きた戦争に

ぼくらの人間性は

犯人捜しを始める

隠れた欲望は

新しい対象を探している


人間は美しい生き物ではなくて

でも美しい瞬間はあるから

言語化されなかった哀れな欲望が

時々ぼくらに美しいものを見せてくれる

言語なんてくだらないもので

感じられたことがすべてなのだと

言語化されなかった哀れな欲望がぼくらのすべてなのだと

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