第55話 監査実行の手続き
一週間後 ギルド会議室
「会議中。入る際はノックをすること」
「それで?」
ギルドの幹部の一人が口を開く。
「はい。守衛の一人が買収されていました」
ギルド内部の監察担当部門のトップが報告する。
「ダンジョンに大きな箱を持ち込むがそれを見逃せ。書類にも残すなと」
「時間は」
「夜、守衛の受付終了直後で人が居ない時間帯です。本人は街の産廃を持ち込んでると聞かされていたようですが」
「産廃ねぇ」
確かにダンジョンは不法投棄してもばれなさそうだ。
「ギルド名はわかってるな?」
「はい」
ファミリーの名前をいう監察担当。
事前の調査でも名前が上がっていたファミリーの一つ。
「やはりか。決め手にかけるとは思ってたが。それじゃぁ監査に入る用意を」
「その前に、産廃を持ち込んだのは一回だけではなく複数回だとのことです。つまり」
「まだ本拠地にいる可能性があるってことか」
会議の参加者は皆黙る。
「信頼できるファミリーに募集をかけろ。街の自治会と軍の方にも急ぎ話を通せ。兵隊を集めて一区画を閉鎖する」
「了解。急がせます」
ニコライファミリー
ニコライが執務室で仕事をしていると、偉い人間は書類仕事が増える、秘書の来客を告げる声。
あいてはギルドの幹部の一人。
「いつもお世話になっております」
「これはこれは、本日はどのような件で」
「例の件です。確定情報が出ました」
「そうか」
ニコライは後ろに控えていた秘書に人払いをさせる。
「それで、こちらに来たということは」
「はい。監査に入ります。ですが、まだモンスターが基地内にいる可能性がある。ですのでそれぞれのファミリーに監査業務の補助を依頼したいと思っています」
「補助。つまり兵隊をだせってことか」
「そうです」
部屋に残っていた副官の顔を見る。
「乗り掛かった舟ですから」
「わかった。しかしお願いがある。ペドロファミリーの方にも話を通してもらえるか」
「あそこを関わらせるのは」
「本人たちもメンツを建てたいらしいし、あそこならうってつけだろう。無償で出すくらいの勢いだ」
ギルドの幹部がその言葉を聞いて少し考えて
「わかりました。通しましょう。しかし暴走しないように手綱を握る役が要ります」
「それが当ファミリーってことですね」
副官の言葉。
ペドロファミリーがでるならニコライファミリーからの人員は少なくていい。体よく金にならない仕事を押し付けた感じ
ヘルファイヤー 中央西北北西部通り 喫茶店モース
「この辺の番地は複雑すぎだ。まだ迷う」
遅れてきたひげもじゃのオークは隣にいた吸血鬼にそういった。
「いくら何でもあなたは迷いすぎですよ」
昼間から厚着をしている吸血鬼はそう答えて席を詰める。
本日はヘルファイヤーの自治会幹部で行われる集会が行われる。
緊急で集められた。
なぜかギルドの関係者と街の守衛の偉い人たちもいる。
「こういう集会はいやだな。何かあるって感じだ」
「この街で何もなかったためしがないでしょう」
「それもそうか」
そんな会話をしていたら集会が始まり、議題へ。
とあるファミリーがモンスターを飼っている疑いがある。
その調査のために監査を行うが、もしものために自治会、守衛の方に協力を願いたい。
ギルドから提出された話に喧々諤々な議論が交わされ、最終的に
「そんなもの街にいる可能性があると聞かされた以上協力するしかないだろう。人払いくらいはやろう」
というドワーフの意見で自治会、守衛の立場は決まった。
「この件だったのかね」
これはナイトクラブの店長をしている吸血鬼の独り言。
西 拠点
西と東という組織はファミリーのようにダンジョンに潜ることがないため、基本的な収入は所属しているファミリーの会費である。
なので西の拠点は非常に小さい。中古の集合住宅を借り上げて改装した物だ。
そこの二階、会議室
「そういうわけで西からは我々がでることになった」
ギルドから西に出された支援の要望は西の組織が直接雇っている面々がこなすことになった。
そういった雑務や金にならないから組織に加盟するファミリーがやりたくない仕事をするために彼らは雇われているのだ。当然である。
「了解」
隊長の号令で彼らは挨拶。
そして計画。
「銃砲は用意しますか」
「使うかわからないが用意はしておけ。我々の主な仕事はことが起きた場合の支援だ。まず第一にギルドの監査と応援を頼まれたペドロ、アナスタシアファミリー両組織が前にでる」
「銃砲を使うとなると周辺の封鎖を行ったほうが安全かと思います」
「それは街の自治会と守衛の協力を頼めるそうだ。我々は付近で待機しモンスターなどが登場した場合に火力での支援を行う」
そういった相談と、それに合わせた銃砲の用意。
今回は前回の反省を生かして念の為に大物を用意することになった。
そういった相談が、静かに、そして素早くなされ、監査は3日後の昼丁度に開始と定められた。
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