第53話 誰がどこからどうやって
西の幹部の話を聞いたNは少し考える。
「知恵と言っても」
「さすがに無茶じゃありませんか」
ニコライはそう西の幹部に言った。
「物は試しって言葉もあるだろう。まぁ当事者の一人としてこういうことになっちまった以上進展くらい知っとく権利はあるしな」
それに箝口令をしっかりと守っている。
常識がない人間も多いこの業界でそれができるだけで下の上くらいには入れていい。
「知恵、というほどではないのですが」
Nは二人の会話の間を見て口を開いた。
「あのモンスター、サイズはともかく狂暴で力がありました。ということはそれなりに大きな拠点なり、まぁ施設じゃなければ扱えないでしょう」
「それは考えてる」
ファミリーを一つつぶしてたモンスター。また施術を行うということはそれなりの設備がいる。
そういった設備を保有している、というのは一つの条件。
「もう一つ。どこで捕まえてどうダンジョンに捨てたのか、って事です」
「捕まえるか。確かにそうだな」
西の幹部はその視点にすこし驚く。ニコライも同じ反応
「犬や猫みたいに繁殖させた、とは思えませんね」
「可能性はあるでしょうけど、それでもアダムとイブはいる。二匹はこの町の外で、って可能性はありますけど、捨てたのがダンジョンということならダンジョンから拾ってきたってほうがあり得ると思います」
「捨てるのと反対でやればいいだけか」
「正確に言えば拾ってきたのと反対ってことだと思いますけどね。拾ってきて、色々やって、処分に困ってダンジョンに捨てた。モンスターは人より処分がしにくい。街角に転がしておくなんて事にはいかないし、焼くも埋めるも手間だ。豚や薬品、まぁそれはいいでしょう。人手がいればモンスターを捕まえて外まで運び出し、馬車かなにかに入れて街の拠点まで運び込んだり、その逆はできると思いますが、そこで気になるのがダンジョンの守衛は何をしてたって事です」
「ダンジョンの守衛たって夜中はいない。その時に運び出したんだろう」
「行きと帰り、二回もですか?夜中には入っても朝になれば守衛はいるはずだし、繰り返してたら回数は増えていく。守られているかは知りませんが夜間は出るのはよくても侵入は禁止でしょう」
「話としてはありそう。くらいだな」
西の幹部の話にニコライもうなづく。
あそこの守衛は基本的にやるきがない役所根性がしみついている部署だが、モンスターを出したり入れたりするのを見逃すほどやる気がない集団でもない。
しかし証拠はない。夜中に入って翌日の夜中に出てきた可能性もある
「まぁよくは知りませんけど、あそこはたぶんギルドの管轄じゃないかと。ギルドに賄賂を求められたと苦情が上がっている、通報がある以上調べないといけない、なんて口実を付ければファミリーに内偵を送るより調査も簡単でしょう。別の線として調べてみる、くらいの話でしかありませんど」
「まぁ、考えてみるよ」
西の幹部は遠回しにそう答えたが、顔色を見る限り調査する気があるようだ。
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