第16話 話をつける方法

「ひどい目にあった」

 裏口から裏通りを駆けていき、表通りで馬車を拾ってLAXEまで逃げていった三人。

「そういえば会計、してないや」

「明日でいいだろう。お前さん、名前は」

「ピーターです」

 店の中に入り、店長の吸血鬼が調子よく切り盛りしている、裏の休憩室で席を取って落ち着いた三人。

「そうか。ピーター、帰れるか?」

「あのまま帰ってたら俺も責任取らされますし仲間からは針の筵です。とてもとても。兄貴に手を出すってことはねぇと思いますが」

「しかしよくわからない理由で喧嘩吹っ掛けられましたね」

「酔っぱらになんてそんなものでございますよ。旦那様」

 何処かからぞろぞろと出てきたゴブリンの一人がそういって三人に水を差し出してきた。


「馬車の支払いはしておきましたが、オーナーはおとなしく飯を食うってこともできねぇんですか」

「そういうなよ」

 メッサーは自分でも呆れたようにそういった。

「アナシタシアファミリーってそんな強いんですか」

「新興で現在拡大路線ですが、実力は折り紙付きってやつで表通りにデカい本拠地を構えてるってあれで。俺も経験者だからって下っ端にもぐりこめたようなもんです。これじゃ俺も終わりだ。お兄さん助けてくださいよ」

「アナシタシアファミリー?そりゃ旦那、ニコライさん所の面子でしょ」

 ゴブリンの一人がNとピーターの会話を聞きメッサーにいう。

「あ、あぁ、そんな名前だっけ?」

「常連さんがやってるファミリーの名前くらい覚えておいてくださいよ。今同業者と奥で一緒にカードで遊んでますから、一つ詫びでも入れて若い連中を抑えてもらったらいいんじゃないんですか」

「そうするかなぁ」

 そういって立ち上がったメッサー。

 その会話を聞いていたピーターはNに聞く。

「私もボスのニコライさんなんか遠目でしか見たことないんですが、この店ってそんな大物があつまる店なんですか。というか冒険者じゃないんですかあの人」

「詳しくはぼくもよく知らないんですよ」

実際知らないのでそう答えるしかないN。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る