第14話 喧嘩でしょ
そんな会話をする二人に近づく一人の男。
「お兄さん。もしかして。やっぱりそうだ。あの時のお兄さんじゃありませんか」
感極まり飛びつきかねない状態。アナシタスアファミリーの一人。
「知り合いですか?」
「知らんな」
Nはメッサーに聞く。この街では彼の方が知り合いは多いはずだ。
しかし男が握手を求めたのはNの方。
「忘れちまったんですか。ダンジョンで助けて頂いたんですが」
「あ、あぁ、そういえば」
そういってNは握手を返す。
「あの時は本当にありがとうございます。私がこうやって立ってられるのも兄貴が生きてるのもあなた様のおかげです。どうお礼を言っていいものかわからない無学の私を」
云々と調子がいいことをまくしたてる。
「少し落ち着けよ。どうしたんだ」
メッサーは止まらない男を黙らせてNに聞く。
「ダンジョンでモンスターに襲われてたんです。あれは4階層だったかな」
「へぇ。まったくその通り。無謀なことをしちまいました。粋がってたんです」
そんな切り口であらすじを述べる。
感嘆と謝罪と調子がいい口上で話がわかりにくいが、まぁこんな話だ。
今のファミリーに所属する前は兄弟3人でダンジョンを攻略しておりました。
これでも強かったんです。まぁ今思えば下の下よりはマシなくらいで。
それを自覚してなかったんです。で無謀にも5階層まで言って、モンスターにであって。
一体はなんとかなりました。それで自信をつけちまって。
二体目で兄貴が傷をおいました。それでもうだめです。引くに引けない。じりじりと傷を増やして、もう傷のひどい兄貴をおいて、それでも逃げれるかはわかりません、とにかくひどい状態で。
そこにふらりとお兄さんが現れたんです。
お兄さんは私らを見ると事情を聞いて、そういうことなら手助けをと。
正直私は信じてませんでした。だって、そもそも4階層に一人、新人の恰好をした男が現れるなんてこと自体信じられねぇことです。
それでももう信じるしかありませんので縋りついて。そしたらすごいのなんの。
出るモンスターは一撃でしとめるし、千輪眼でもあるんじゃないかって感じでモンスターが来る前に隠れて。
正直私は足を引っ張るばかりで。死にかけの兄貴二人担いでその後ろを走ってついていくのがやっとでやっとで。
そして出口まできて、入口の守衛に飛びついて、兄貴二人と俺はそのまま医者に運び込まれましたって具合です。
「お兄さんは元気ですか」
「一番上の兄貴はなんとか、足はもう動きませんが、真ん中のやつは、もう遅すぎました」
「そうですか。哀悼の意を。遅かったですかね」
Nはそう返すが
「いえいえ、お兄さんに助けてもらわなきゃ三人ともダンジョンで死んでおりました。葬儀ができただけ僥倖というものです。ほんとに、気づいたらいなくなってお礼の一つ言えなくて、ほんとほんとありがとうございました」
「いえいえ」
「ほんとかよ」
頭を下げ続ける男の後ろから口を挟む男。
「適当なことを吹聴してるだけじゃないか」
「身内の言葉を信じないのか」
アナシタシアファミリーの一人だと見たメッサーはそう答えた。
「新入りの話はたいてい嘘だ。俺らをだまそうとしてるだけじゃないか」
ぞろぞろと二人の周りに集まるファミリーの人間たち。
「そんなわけございません。本当にたすけて頂いたんですって」
「まぁまぁ、信じるかどうかはあなた次第、ってなにかでききましたし」
Nは止めようとしてるのかよくわからないことをいう。
「まぁとりあえず落ち着け。店の中で騒ぎを起こすのは迷惑だ」
「お客様、お席にお戻りください」
ざわざわしだす店内。酒場に喧嘩はつきもの。
「なに?」
酒を飲んで気が強くなってる。判断力も鈍っている。
ウェイトレスに啖呵も切る。
周りはあおる。冒険者である。そういうもんだ。マナーなどない
「ですから」
「うるせぇ」
そして手を上げた所で木のコップを投げつけられる。
クリーンヒット。
メッサーだ。
「店で暴れるのは迷惑だと言ってるだろう!」
あなたが言うか。サラはそう思ったが、助かったには違いないということで酔客に絡まれたウェイトレスを引っ張り店のバックヤードに逃げて行った。
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