第11話 金銀
Nはメッサーに言われ、代わりに説明してやる義理まではない、自分の状況と目的を説明した。
「質がいい金銀や宝石類については当店でも買い取らせていただきます。武具の類は向かいの店がいいでしょう。無口ですがよい男です。マジックアイテムであればよい商人がおりますので紹介させていただきます。質が悪いものであれば装具屋や屑鉄屋、古道具屋に売るのがよいでしょうな」
「ありがとうございます。じゃぁ金貨とか銀貨、あと宝石なんかを見てもらってもいいですか」
新人冒険者が持ってくるアイテムなどどうせ二流品だ。
そんなのはメッサーもこの老人もわかってる。というかサラも多少はしっている。
そんなもんなのだ。
でもまぁ、そんなもんという予想はたいてい破られるのがお約束。
「ほぉう」
サラが店主の息子に助けられながら書類を製作、この店は固い店だからポンと現金を渡して終わりということはない、しているとき老人はNがリュックサックから出してきた宝石や金貨、細工物の類を鑑定していた。
「なかなか」
「どうでしょうか」
唸るだけで評価を言わない老人の反応が心配になりNは聞く。
「いや、素晴らしい。金の含有率が多い。宝石もなかなかのものだ。細工は古典ですな」
「良さそうなやつだけ選んではいますが、どれも小粒なのでね」
「その分数がある。飾り石なんかに使えそうですから、そうですな」
老人は一通り見て、紙に値段を書いて渡す。
「すべてまとめて、ということならこの値段でいかがでしょうか」
書かれていた金額はNが考えていた金額よりも安い。
それでも結構な額だ。先ほどの剣の宝石の数倍はある
「もう少し高いものかと」
「どの程度でございましょうか?」
老人の言葉にNは答える。
Nに渡された紙の値段をみたメッサーは
「それじゃぁ店が売る値段だろう。仕入れ値は安くしないと利益がでない」
と口をはさむ。
「そんなものですか」
「えぇ、手間賃やら加工賃やら考えますと少々難しいです。がそれでも良い値段を付けますな。もっととんでもない値段を仰る方も大勢いますが、旦那様は相場にお詳しいようだ」
そういって先ほどの紙にもう一回書き加える。
おまけ程度だが買値を上げた。上客になりそうなら少しくらいの損は惜しくない。
「これ以上はさすがに難しいですが、いかがでしょうか。当店を愛好していただけるならという条件付きですが」
「それはもちろん。よろしくお願いします」
商談は成立。
サラの書類も終わったようだ。
向かいの武具屋で買い取ってもらえるものをすべて買い取ってもらい、こちらもいい値段で売れた、マジックアイテムは後日老人に紹介してもらうということになった。
なので彼の財布には今結構な額が入っている。
「新人冒険者ってそんなに儲からないと思うんですが、違うんでしょうか?」
「普通はなぁ。ファミリーに入ってないような新人冒険者なんかガラクタを鉄くずで売って日銭稼ぐのが普通なのに」
この町の住人として冒険者の相場を知っているサラとメッサーはそのやり取りを眺めながらそんな感想を漏らす。
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