第7話 ギルドってなにやんのよ


「まだ一人なの」

「はぁ、すいません」

 冒険者ギルドの受付で受付嬢にどやされる冒険者が一人。

「あやまる必要はないけれど、本格的にやるなら早くファミリーに入ってとなんども」

「頼んだんですが入れてくれなくて」

「そりゃ一人で7階層まで行ったとか言ったらそうなります。見栄を張る人間はどこもお断りですよ」

「はぁ。実際に行ったんですが」

「ギルドでもダンジョンの中までは確認が取れないからってそういう嘘をつく人はたくさんいますけどね。嘘をついてもなんの特に」

 云々。説教を一から書いても仕方ない。

「ごめんなさい。エイプリルさん」

「はぁ」

 嘘をつくような子には見えないけれど、武具は何も知らない新人しか買わない入門者キットのままで更新もしてない。

 これで七階層まで行った、次は8階層だなんて言っても誰も信じない。私もそうだ。

 虚言癖でもあるのかしら。

「普通新人一人は一階層か二階層、経験者でも4階層が限度なのよ。どうやって7とか8とかに行くの。そんなの熟練の冒険者でも難しいわ」

「どうやってって、まぁどうにかこうにか」

「はぁ」

 もう仕方ない。とは言っても当分は担当する冒険者の一人なのだ。

「無茶はしないで。嘘もつかない。いいわね」

「はい」

「それで今日は?」

「ダンジョンに潜ろうかと。申請書です」

「また?昨日も潜ったじゃない」

「友達がいなくて、やることがないんですよ」

「あきれた」

 そういって申請書にハンコをポーン。


昼前


 ダンジョンに入る場合、その前にいるギルドの守衛に許可を取る必要がある。

 この許可がなんの意味があるかはみんなよくわかってない。

 とりあえずギルド窓口で書類を出せばフリーパスで通れる簡略化の仕組みが取られているが

「これ、申請書です」

「はい。お気をつけて」

といってもギルドに出したところで何かすごい審査がされるわけでもない。

 なので実力を弁えず進みダンジョンで死ぬ奴もたくさんいる。


「じゃぁね」

 フリフリ手を振りながら露出が多めな服を着た女二人がLAXEの二階から出ていく。

 それにフリフリと手を振りながら

「働くか」

とこの店のオーナーはひとこと。


昼過ぎ


 LAXEは夜から始まり朝方まで続く。

 なので準備は昼過ぎてから。という建前だが実際はオーナーと店長がそれまで寝てるか女遊びしてるかだから昼から準備が始まる。

「酒三ケースはいりました」

「今日の食品は」

「軽食の用意もできました」

「パンが遅れてますから」

「帳簿のチェックをお願いします」

 なので従業員たちは大慌てで用意。

 それに指示する店長には牙がある。

 吸血鬼だ。

「帳簿の数字があってないから計算しなおせ。女の子の用意は?高い酒は棚にならべろ。あとあのブランドの酒が手に入るなら並べたいんだが仕入れることはできるか。軽食はクラッカー中心で出しておけ。パン屋は急がせろ。大口注文してるんだぞこっちは」

 云々。軍隊のような的確さで支持をだす吸血鬼の隣でもしゃもしゃと朝食を食べながらオーナーはたまに指示を出す程度

「オーナーは仕事ないんですか」

「オーナーは金主兼飛び道具兼客引きだからな。あれでいいんだよ」

 テーブルの掃除をしているオークの新人の言葉に上司のゴブリンはそう答える。


夕方

 仕入れ業者と入れ替わりに酒を運ぶウェイターや出し物の踊り子、バンドマンなんかが集まりだす。

「今日が終われば明日が来る。明日は休日だ。それまで頑張るように」

 オーナーがそう簡単な朝礼をしたら吸血鬼やそれぞれの部門の号令で今日の仕事へ動き出す。

 休日といっても平日のど真ん中だ。土日祝日は稼ぎ時なのでこういう変則的なシフトとなる。


 騒がしい音楽。

 きらびやかな衣装で店の前に集まる女と男とその他

 決めたバーテンにウェイター。ボディーガードに料理人たち。

 開店の出迎えは手が空いている物皆でやるのがこの店の習慣。

「諸君。今日も繁盛して喜ばしいことだ。ここに来る以上騒ぎは許さん。しかしだ。飲め。楽しめ。自分に正直になれ。本日もクラブLAXEここに開店だ」

 その場で考えた適当な挨拶。

 しかしこの場の適当な雰囲気にはマッチしているようで客は盛り上がる。

 そしてバンドマン達が客を迎える一曲。


 そして客は店の中へ。


夜中


「こんな生活は夢見てた冒険者と違うなぁ」

 ダンジョンから一人でてきたNはカバン一杯に詰めた宝物を担ぎながらダンジョンからでてきた。

 この時間になるとギルドの係員もいない。

 係員の詰め所にあかりもついてないから真っ黒。

 冒険者たちの多くはもっと前に出てきているか、すでにダンジョンの中で泊まる計画をしている。

 だからこんな時間に出てくる男は彼くらいしかいない。といってもいい加減なものだ。


 彼はカバン一杯の宝物を確認して

「帰るか」

そういって街の明かりに向かっていった。

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