ねえ、兄さん結婚しようよ

サマエル3151

第1話結婚しよう、兄さん

ねえ、兄さん、結婚しようよ


                              サマエル



序章 結婚して?兄さん



 俺の名前は葛木命(かつらぎみこと)。さがないサラリーマンだ。

 と言っても渋谷の一角にあるマンションで住んでいるからそこそこ年収があるサラリーマンだけど。


 いや、一応これでも学生の頃は小説家になりたかったよ?でも、あまりにネットとかで小説家を目指した人の末路(まつろ)を聞くたびに、夢と現実の間で苦しみ、そして、現実を選んだ男。それが俺だ。


 俺は、今サラリーマンをやりながら、同じくOLをやっている妹の、葛木(かつらぎ)ゆかりと一緒に暮らしている。


 俺の目覚めは普通。

12時に寝て、6時に起きる。そして、ドリップコーヒーを仕掛けて昨日、コンビニで買ってきたパンを朝食とし、妹と一緒に食べる。


 妹は洗濯物を洗ったり、干したりとかしているから、朝食の担当と皿洗いは俺の担当だ。

 そして、食べ終えた後、後片付けと、ゴミは俺が出す。しかし、可燃物と不燃物を分けてそれぞれの日に出す。それ以外の日は俺は隙間(すきま)時間を利用して本を書いている。


 今は、マイフィロソフィシリーズというものを描いている。今は大学生編で、主人公笹原一樹(かずき)が勉強やら恋やらに頑張る一大シリーズものなのだ。今、それを描いている最中だ。


 それに妹曰く、俺は笹原一樹に似ているらしい。なんでも優しいところがそっくりとのことだが、俺自身そんなに意識していない。


 今日は金曜日。うちの職場は基本週休2日。ただし、納期の日があるとバタバタして休みが吹っ飛んでしまうところも度々あるが基本的に俺は今の職場には感謝している。


 そんないつもの平日に俺はメロンパンを妹は焼きそばパンを食べながら、ぽつりと妹が呟いた(つぶやいた)のだった。


「あのさ、兄さんいい?」


「ああ」


 妹のゆかりとは3歳年が離れてる。だから同じ学校に一緒にいた経験はないが、妹は美人な方だと思う。


 小柄な鼻(はな)、唇、細い眉毛、シャープな顎、それに細身の体にふさわしいすっきりとした黒髪のセミショートに小さなおさげ。なおかつ、ぱっちりとした目が、その容姿のシャープさに冷たさを感じさせない。兄の目からしても妹は美人だと思う。


 しかし、ここで、兄弟がいない人のために行っておくけど、兄にとって妹とは家族だから、どれだけ美人でも、あ、そう、的な感覚なのだ。


 父と娘で、娘が美人だと、それは父は内心いい気分だとは聞いたことがあるが、兄弟は別にそんなのはない。

 

どれだけ美人でも、妹は妹だ。ただの家族にすぎない。


 だから、妹がどれだけ美人でも兄としては、ふーん、で、何?的なのだ。

 そんな妹がある爆弾発言を言った。


「兄さん、私と結婚しよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「なんですと!」


こうして葛木(かつらぎ)家の平凡な日常は終わりを告げた。

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