平行世界30日目その2にゃ~


「この人が国家主席にゃ?」


 恰幅のいい偉そうな男がわしの前にひざまずかされているので、念話を使ってSPみたいな人にとりあえず聞いてみた。


「はっ! 逃げようとしたので連れて参りました!!」

「ご苦労様にゃ。でも、やりすぎにゃ~。国家主席に対してにゃにしてるんにゃ~。かわいそうにゃろ~」

「いや、逃げられると困るので……」

「もう君は行っていいにゃ。国家主席、こちらに座ってくれにゃ~」

「「は、はあ……」」


 これだけ脅していた者が逃げ出そうとした国家主席を擁護しているので、誰もが首を捻りながら行動する。

 わしの土魔法で作ったテーブル席に国家主席が着席すると、お茶と動画配信中のスマホをセッティングして、交渉のスタートだ。


「さってと……猫の国の国民が人権侵害にあっていたんにゃけど、どう落とし前つけよっかにゃ?」

「いえ、私どもは何も……」

「言葉には気をつけろにゃ。嘘ついたら、わしはお前をウイグル人の前に投げ捨てるにゃ。それでいいにゃ?」

「いえ……私にどうしろと……」

「簡単にゃことにゃ~。人権侵害をやめてくれたらいいだけにゃ~。中国各地に散らばっている漢民族と軍隊を北京周辺にまで戻して、それから独立をするかどうかの住人投票をするだけにゃ~。絶対にお前たちが関与しにゃいでくれたらいいだけにゃ~」

「それのどこが……中国が分断してしまう!」


 わしが簡単だと言ったことは、無理難題みたいだ。てか、わしもそう思う。でも……


「それでよくにゃい? 人種も文化も違う人をひとつにまとめるのが無理があるんにゃ。まとまらないから、人種を入れ替えるような無茶をするしかないんにゃろ? お前たちが同じことされたら嫌にゃろ??」

「いえ……それが敗者の末路ですから……」

「じゃあ、お前はわしに負けたんにゃから、いまから拷問しにゃ~す!」

「え……ま、待った!」


 国家主席の待ったは聞かず。土魔法でイスに張り付けて国家主席の右手人差し指をわしは握る。


「待って……」

「うち、つい15年前まで奴隷制度にゃんてまかり通っていたんにゃよ~? それはもう、壮絶なことされていたにゃ。お前の理論だと、わしはにゃにしてもいいってことで間違いないにゃ?」

「違います! ダメに決まってます!!」

「殴る蹴る、爪を剥いだり指を折るのは日常茶飯事にゃ。食事にゃんてよく抜かれるし、地面にまきちらかされた物を食べさせるんにゃよ? それはまだマシなほうにゃ~」

「聞いて! 聞いてください!!」


 国家主席は前言撤回しまくっているが、わしは人差し指をぐらぐらしたあとは、刀を抜いて振り回す。


「面白いからって、ムチで打たれるにゃ。面白いからって、腕を斬られるにゃ。叫んだからって、殺されるにゃ」

「もうしません! 助けてください!!」

「嘘つきは極刑にゃ~~~!!」

「ぎゃああぁぁ~~~!!」


 ちょっと脅しただけで懇願して来たが、わしは容赦なく国家主席の右手を刀で貫いた。


「て、手が~~~……痛くない??」


 神剣【猫撫での剣】は、例え首を斬り落とされてもしばらく斬られたことも気付かないのだから、貫いたぐらいでは痛みもないのだ。


「これから徐々に痛くなるにゃ。このように二つに分かれたとしてもにゃ」

「ぎゃっ……なんで……」


 手の平は真っ二つになって血が噴き出したとしても、まだ痛みがないようだが、国家主席の顔色は恐ろしく悪くなっている。


「そろそろ痛くなって来たにゃろ?」

「はい……あ、いだいっ!?」

「痛いの痛いの飛んで行けにゃ~」


 タイミングを見て回復魔法で治してあげたら、最後の脅しだ。


「治った……」

「次は両手両足を一本ずつ斬って治してあげるにゃ。もっと痛い方法で斬り落としてやるからにゃ? それが嫌にゃら……わかっているにゃ??」

「はい。人権侵害はやめます……」

「嘘ついたんにゃから、それだけで終わらないにゃよ~?」

「はい。シラタマ王の仰せの通りに……」


 これよりわしは、他国にちょっかいを掛けるなとか、領土を国際基準に戻せとか、国際法を順守しろとか、北朝鮮とミャンマーをなんとかしろとか、思い付く限りいろいろ付け足してやるのであった。


「あ、それとにゃ……」


 中国のやっていた悪事を全て禁じたのにまだ付けたそうとしたら、国家主席は一瞬嫌そうな顔をしたが、すぐに下を向いた。


「お前が生きているうちに、わしはこの地に戻って来るにゃ。わしとの約束を守っていないと知ったら、お前の目の前で中国を更地にして拷問の続きをするからにゃ? ゆめゆめ忘れるにゃよ」

「はい。シラタマ王の仰せの通りに……」

「にゃはは。それじゃあ、バイバイにゃ~ん」


 これにて、中国成敗完了。わしは笑い声を残し、この場から消えるのであった……



 全速力でダッシュしたら、新疆しんきょうウイグル自治区に到着。更地になった収容施設にわしは着地した。

 そこで人権侵害を受けていたウイグル人にインタビューして配信をしていたリータたちに合流し、わしからの結果はっぴょ~~~う!


『え~……国家主席との話し合いの結果、新疆ウイグル自治区は猫の国となりましたにゃ~。というわけで、これから住人投票をしてもらうにゃ。その後はどの国にも属さない国とにゃり、みにゃさんは自由の身にゃ。もう、中国に怯えて暮らす必要はないんにゃ~~~!!』

「「「「「うわああぁぁ~~~!!」」」」」


 わしの説明を聞いて、この地の者は泣き叫ぶ。


『でも、これからが大変にゃ……世界中のみにゃさ~ん! この哀れにゃウイグル人に、手を貸してあげてくださいにゃ~!!』


 わしが叫ぶと、リータたちが頭を下げる。遅れてわしも頭を下げたら、UFOから光が下りて来た。


『では、わしができるのはここまでにゃ。ウイグル人に幸多からんことを……次は、ウクライナに行きにゃ~す! 待っててにゃ~』


 この言葉を最後に、わしたちはUFOに乗り込んで消えるのであった……



「ウウウ、ウクライナ~~~??」


 UFOの戻ったら、天皇陛下が大声を出して詰め寄って来たのでわしは押し返す。


「にゃんですか?」

「ウクライナの前に、中国で何してるんですか!?」

「日本でもやらかしてしまったからにゃ~……ちょっと慈善活動をして帰ろうと思ってにゃ。誰も助けてやらなかったにゃろ?」

「これのどこが慈善活動なんですか!?」

「わしもその域を越えてるのは理解しているにゃ~」


 ぶっちゃけいまやっていることは、天皇陛下以外の全員の総意。

 玉藻が勉強しているのを見て、さっちゃんやリータたちもちょっとは勉強したら、国際的な問題でまったく解決できないことが多かったので、わしの元になんとかならないのかと相談が来たのだ。

 わしとしては、この世界の問題だし下手なことしてアマテラスの逆鱗に触れたら怖いので断りたかったが、できることなら解決してやりたいとも思った。


 なので、アマテラスに祈ってみたら「やっちまいな~!」と、意外と軽かった。どうも、ここ最近の人間の動きは気になっていたので、天罰を落とそうか悩んでいたらしい……

 かといって、アマテラスが手を出すと世界が分岐する可能性が高いので、ちょうどいいからやっちゃってとのこと。拉致する手間も省けたとか言われた……


「まぁ神様からも許可もらってるから、天皇陛下が心を痛める必要はないにゃ~」

「アマテラス様から!?」

「ぎゃっ!? その名前を出すにゃ~」

「アマテラス様……」

「ぎゃっ!?」


 天皇陛下が神の名前を言っただけで、タライが落ちて来てわしの頭に「ガィィィン」と直撃。めっちゃ痛いから注意したのに、天皇陛下はボソッと呟いてもうひとつ落とすのであったとさ。



 それからさっちゃんたちも、わしの頭にタンコブを作ろうとアマテラスコール。しかし、天皇陛下にしか使えない必殺技と知って、残念がっていた。


「ぎゃっ!? マジで痛いんにゃから、陛下はさっちゃんたちのお願い聞かないでくんにゃい?」

「面白いので、つい……アマテラス様」

「ぎゃっ!? 次やったら陛下も戦場に連れて行くからにゃ~~~!!」


 でも、天皇陛下を使ってタライを落とすので、わしはキレるのであったとさ。



 そんなことをしていたら、ウクライナの東部に到着。そこでわしだけUFOの外に出て、まずは隠蔽魔法を解いてからの威嚇だ。


『ごろにゃ~~~ん!! ウクライナからロシア人は即刻退去しろにゃ~! これからロシア大統領と交渉してきにゃ~す。byシラタマにゃ~』


 大音量の翻訳した言葉を発したあとは、わしは飛んで移動。UFOからは玉藻たちが光に乗って地上に下りて恐怖を振り撒き、ウクライナ人を探してインタビューを配信する。

 その頃には、わしはモスクワに着いて脅しに脅し、地下シェルターでロシア大統領を発見。シェルターの天井という天井を一撃で吹き飛ばし、外に連れ出してやった。


「どうかにゃ? わしと核兵器、どっちが強いと思うにゃ??」

「シラタマ王です!!」

「にゃはは。じゃあ、もう核兵器は必要ないにゃ~」


 ロシアには、戦争で奪い取った土地の返却、人命には充分な賠償金を支払わせる。エネルギーが抱負なんだから、余裕で払えるだろう。さらに中国で言ったこともいろいろ付け足して、平和維持に貢献してもらおう。


「中国の国家主席にも言ったけど、わしは再びこの地に戻って来るにゃ。間違っても、この場の口約束で終わるにゃよ? もしも、わしを騙したにゃらば、お前にもロシアが更地にされるところを目の前で見せてから、ゆっくりと拷問を楽しませてもらうにゃ」

「はっ! はい!!」

「それじゃあ、バイバイにゃ~ん」


 ロシア大統領がへたり込むなか、わしはダッシュでリータたちと合流。また結果報告と住人投票をするように言って、次の目的地を指定する。


『ちょっと通り過ぎてしまったけど、ネパールのみにゃさ~ん! いまから行くからにゃ~!!』


 そしてUFOはネパールの上空を少し浮遊してから首都の広場に着陸。そこで群がるネパール国民を押し返してさっちゃんたちと喋っていたら、偉そうなおっちゃんが血相を変えてやって来た。


「シラタマ王! 我が国も人権侵害をなくすように力を尽くしますので、どうか拷問だけは勘弁してください!!」

「えっと……」

「賄賂も取り締まります! 何卒なにとぞ、何卒……」


 知らないおっちゃんが懇願して来るので、とりあえず喋ってみる。


「確かネパールって大統領制だったかにゃ? んで、あにゃたが大統領にゃ??」

「はい!」

「わしたち、東の国がだいたいこの辺りにあるから、違いを見ようとやって来ただけなんにゃけど……」

「え……」

「ぜんぜん文化が違うし気候も違うから、地形が微妙に違うのか、もっと北なのかと話をしてたところなんにゃ」

「あ……そうでしたか。でしたら、隅々まで見て行ってください。では、私はこのへんで失礼しますね」


 大統領のおっちゃんがペコペコ頭を下げながら立ち去ろうとするので、わしは素早く回り込んだ。


「さっき聞き捨てならにゃいことを言ってたよにゃ? ちょ~っと、わしと話をしていこうにゃ~」

「あ、ああぁぁ……」


 大統領のおっちゃん、おっちょこちょい。わしが二つの大国を脅しまくって難しい問題を解決しているので、国連に注意されたことを口走ってしまったんだって。

 なので、きっちり脅してから、UFOで飛び去るわしたちであったとさ。

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