平行世界17日目その1にゃ~


 元女房のララと密会していたことがバレたわしは平謝り。誠心誠意謝って、ララとの関係を説明したら、ちょっとだけ許してくれた。


「この人がシラタマさんの……」

「若すぎるニャー!」

「一回死んでるからにゃ~。ゴロゴロゴロゴロ~」


 撫で回しの刑は免れないので、わしはそのまま気絶。晩ごはんには起こしてくれたけど、怒られたり撫でられたりしながらなので、ぜんぜん食べた気がしない。


「それはなに~?」

「コリスも食べるにゃ?」

「食べる!」


 なので、インスタントラーメンを追加。頬袋が膨らんだままのコリスと一緒に3分待つ。


「熱いから気を付けるんにゃよ~? ズルズル~」

「うん! ズルズル~。星みっちゅ!」


 コリスが最高得点を付けるものだから、子供たちも「くれくれ」うるさかったので、わしの分が取られた。でも、いっぱい買ってあるので新しく作ろうとしたら、全員御所望。

 全員分、魔法でお湯を入れて3分待たせたら、ズルズルとすする。ちょっとジャンクだけど、インスタントラーメンは大好評。お湯を入れるだけで作れるので、特に子供に大人気だ。


 そんななか、昔ながらののインスタントラーメンとちょっとお高いインスタントラーメンを交互に食べているベティにツッコンでみる。


「にゃんてわんぱくな食べ方してるんにゃ。太っても知らないにゃよ?」

「いや~。つい気になっちゃって。こっちの生麺タイプっての? よくこのクオリティを出せるわね。それに、昔のまんまのラーメンも残っているのも嬉しいわ~」

「まぁわしも、結局は昔ながらのヤツを手に取ってしまうからにゃ。なくしたら、暴動が起こるかもにゃ~」

「アハハ。それはそうと、インスタントラーメンの技術も手に入れられない? あたしが料理する時は、シラタマ君にはそれを出してあげるから」

「手抜きするにゃよ~」


 ベティの言い方はムカつくが、わしも食べられる物ならうちでも食べたい。とりあえずスマホでインスタントラーメンを調べてみて、簡単な作り方や最新の作り方の画面をスクショで収めておく。


 それから晩酌をしつつ、今日の京都観光の感想を聞いてみたら、ララとの密会が再燃。いちおうどうやってバレたのかと聞いたら、外務省の七三メガネのせいだった。

 わしはエミリに抱かれて安らかに眠っていると皆に思われていたらしいが、七三メガネに電話が掛かって来て焦っているなと見ていたら、スマホの画面でララの動画サイトを見せられたとのこと。


 わしが分身の術でも使っているのかと問い詰めて、七三メガネが触ってみたらぬいぐるみ。これでは言い訳もできないので、事情を知ってるベティが「脱走しちゃった」と嘘ついたんだって。

 そのあと、七三メガネはずっと電話を掛けていたと聞いたから、たぶんわしの捜索をしていたのだろう。おそらく、高校にも大勢の警官がアミを持って向かったと思うけど、わしは隠密行動をしていたので捕まえられなかったと推測する。


 わしの影武者がバレた話を聞いたら、怒りを逸らそうと玉藻に京都観光を質問。そしたら、めっちゃうるさい。まったく違う町になっているのだから、わからないこともないが、声のトーンを押さえてくれ。

 ただ、御所の建物が半数近く壊された上にほとんど使われていないと聞かされて、かなり落ち込んだそうだ。


 そのせいで、わしはやけ酒に付き合わされて酔い潰れるのであった。でも、リータとメイバイの説教が減ったので、助かったとも思うわしであったとさ。



 平行世界滞在17日目は朝早くから叩き起こされて、さっさと移動。移動中の電車の中で、わしは爆睡。皆はだいたいゲーム。一両貸し切りだから、やりたい放題だ。

 そしてやって来たのは、大阪にある埋め立て地。ペンペン草も生えなかったあの場所は、複合リゾート施設へと様変わりしていた。


「さあ、カジノで一攫千金を当てるにゃ~~~!!」

「「「「「にゃ~~~!!」」」」」


 そう。ここはカジノも併設されていると聞いたので、遊びに来たのだ。ちょっと子供と猫兄弟が黒服に止められたけど、勉強のためと嘘をついてなんとか入れてもらえた。

 基本、子供はママロックで捕まってスロットやパチンコで遊んでいるので、わしはさっちゃん1人では2人の子供と猫兄弟を相手にするのは大変だろうと思って一緒に回っている。


「それにしても、いっぱいゲーム機があって楽しい場所ね~」

「正確に言うと、アレはゲーム機じゃないんだけどにゃ~」

「どゆこと?」

「カジノってのは、ギャンブルにゃ。高額当選にゃんてしたら、いっぱいお金が貰えるんにゃ~」

「あ……一攫千金ってそういうこと!?」

「意味もわからずに返事してたにゃ??」


 さっちゃんは「日本語喋れませ~ん」とか言っていたけど、それが日本語。そうツッコンだら、わしの説明不足と返って来たので、ルーレットのテーブルに逃げ込んだ。


「ほい。赤か黒、好きなほうにこのコインを置くんにゃ~」

「うん!」

「ちょっと~。娘に変な遊び教えないでよ~」


 さっちゃんの娘に遊び方を教えていたら、さっちゃんがいまさら教育論を語っていたけど、娘が当てて「きゃっきゃっ」と息子と嬉しそうにしていたので、自分もやるとかうるさくなった。


「次こそ21番が来る予感!」

「熱くなるにゃよ~」


 一回数字を当てただけでさっちゃんは高配当ばかり狙うので、あっと言う間におけら。わしと子供たちが遊んでいたコインも奪おうとしやがったので、黒服に追い出してもらおうかと思うわしであったとさ。



 さっちゃんは反省したとか言いながら、次のブラックジャックでも「イカサマ」とか叫び出したので、わしは口を塞ぐ。

 そして、子供たちに「ギャンブルには人の怖い一面を引き出す欠点がある」と教えていたら、さっちゃんも恥ずかしくなったのかゲームはやらなくなった。

 かといって、カジノもわしたちの世界にお持ち帰りするかもしれないので、勉強はしなくてはならない。わしとさっちゃんは、子供たちがゲームをする姿を見ながら話し合うのであった。



 ゲームをしたり楽しそうに遊んでいるリータたちにも感想を聞いてウロウロしていたら、ベティ親子を発見。ルーレットの場所で何やら叫んでいたので寄ってみたら……


「エミリ。この指輪とコインを交換して来て。異世界の物って言ったら、絶対に高く買い取ってくれるから!」

「にゃにわしがあげた物を売ろうとしてるんにゃ……」

「シラタマ君!?」

「ベティ……退場にゃ~~~!!」

「そんな~~~」


 借金してまでやろうとしていたので、激オコ。さっちゃんにも「これがさっちゃんの未来だった」と教えたら、今ごろ怖がっていた。


 ベティを追い出したいところであったが、1人にするほうが危険なので、わしは手を掴んで離さない。

 わしたちの組にエミリと一緒に加えて歩いていたら、ブラックジャックのコーナーにめちゃくちゃ人だかりができていたので覗いてみたら……


「またノルンちゃんの勝ちなんだよ~~~!」


 ノルンがバカ勝ちしていた。


「てか、見ないと思ったら1人でにゃにしてるんにゃ~。危ないにゃろ~」

「だって、ベティといたら、ノルンちゃんのコインが奪われるんだよ」

「こんにゃ小さい子にたかるにゃよ~」


 ノルンをちょっと叱ったら、矛先は「シーッ!」とか言ってるベティに変更。

 さっちゃんたちはブラックジャック攻略法を聞いていたけど、ノルンは「全てのカードを覚えているから楽勝」って言ったので、「できるか~!」ってツッコミが聞こえて来た。

 ノルンのことはエミリに任せてまたウロウロしていたら、丁半バクチで玉藻を発見。なんか揉めていたから寄ってみたけど……


「こやつがイカサマしてるとか疑って来るんじゃ」


 玉藻もバカ勝ちしてるっぽい。それも、一回も外してないらしい……


「勝ちすぎだからにゃ~。もう許してやれにゃ~」

「なんじゃと? こんな稼げるチャンスをわらわに捨てろと言うのか??」

「稼げるにゃ??」


 玉藻の言い方がおかしかったので必勝法を聞いてみたら、ディーラーが下手クソだから、玉藻の動体視力ならばサイコロが丸見えだったらしい……


「ちょっと君。イカサマとか言う前に、もっと上手い人を呼んで来いにゃ。ツボからサイコロが見えてるらしいんにゃ」

「シラタマ! そちは何をバラしておるんじゃ!!」

「玉藻はもっと洋風のゲームをしろにゃ~」


 日本独自のギャンブルがあるのは凄く嬉しいことなのだが、玉藻はそこから排除。ポーカーの席に着けて次に移動する。



 会う人会う人に注意しているわしを見たさっちゃんの子供に「おじちゃんも大変だね~」って労われたり わしが「お兄ちゃんって呼んで」と反論していたら、スロットコーナーでゴージャスにモグモグしているコリスとオニヒメを発見。

 やたら儲けているように見えたので、また不正していないか心配だから話をしてみる。


「そのお菓子の数々、どうしたにゃ?」

「モゴモゴモゴモゴ~」

「んっとね。お姉ちゃんは……」


 コリスは頬袋が膨らんでいて何を言っているかわからないので、オニヒメが通訳。といっても、オニヒメもどうしてこうなっているかわからないようだ。


「マジにゃ……ジャックポット当てたんにゃ……」

「うん。コインが止まらなくて困ったの」


 わし、愕然。ジャックポットとは、全てのスロット台で外れて溜まりに溜まったコインが1人の元へ流れるシステムなのだから、コリスの運の強さに驚きを隠せない。

 いくらかと言うと、うん千万は確実。下手したら何億もありそうなので、普通の人なら人生が変わりそうな額だ。


 それなのに、コリスは通常運転。スロットのレバーを引けばいくらでもジュースとお菓子をバニーガールが運んで来てくれると思っているのか、無駄遣いしている。

 バニーガールはその都度コインを持って行ってるのに、そのことも理解していないようだ。

 その隣では、オニヒメがコインを拝借。なくなったら補充しているようだけど、コリスの台はガバガバなのか全然減る気配がない。わしが見てるだけでも、何度か高額配当を当ててたもん。


「もうじきお昼にゃし、ごはんにしにゃい?」

「うん! ごっはっん。ごっはっん♪」


 というわけで、ギャンブルはお昼で終了。コリスだけでもとんでもなく勝っているので、台から引き離すわしであった。

 ちなみに、離れ際にバニーガールが「ありがとうございます」とボソッと言った気がしたので振り返ったら、スロットに故障中の張り紙を張っていたので、機械に何か不具合があったのかもしれない……

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