平行世界4日目その2にゃ~
靖国神社からバスに揺られてホテルに向かっていたが、まだ帰るには早いので、気分転換に街ブラ。子供たちにジュースとお菓子でも買ってあげようとコンビニに入ったら、全員突入して来た。
「なにここ? なに屋さん!?」
「本も服も売ってますよ??」
「アイスがいっぱい売ってるニャー!」
「「「「「かってかってにゃ~~~」」」」」
そして、さっちゃん、リータ、メイバイ、子供たちが同時に喋るので聞き取りにくい。
「いっぺんに喋るにゃ~~~」
こんな狭い店内に18人も入ってはお店に迷惑が掛かるので、人数制限。まずは子供たちだけを入れて、欲しい物を5個ずつカゴに集めさせる。迷っていたら時間短縮で追加してあげたら、10個ずつぐらいになっていた。
それらを全てレジ袋に入れさせ、支払いはニコニコ現金払い。でも、レジ袋代を取られたのでイライラ現在払い。いつからタダじゃなくなったんじゃ!!
全員の買い物が終わったらコンビニの仕組みを教えてあげたけど、こんなコンパクトな店内に生活必需品が揃っていたり、24時間年中無休でやっていることに驚いて、アルバイト君を困らせていた。
「寝ないと死にますよ! 休んでください!!」
「シラタマ殿に頼んだら、奴隷から解放してくれるニャー!」
「ちゃんと彼にも休日があるにゃ~~~」
リータとメイバイを引っ張って離れると、もっと詳しくコンビニの説明をして納得させるわしであった。
それから街ブラに戻ったのだが、コンビニ入店は禁止。コンビニに入る度にお弁当やデザートが棚から消えるんじゃもん。
しかし、禁止しても皆はコンビニを探しているので、何か近くに面白いお店はないかと道路を渡りながらキョロキョロしていたら、遠くから衝突音と悲鳴が聞こえた。
「危険な獣でも出たのでしょうか?」
「この世界には、リータたちが満足するようにゃ強い獣はいないにゃ~」
リータは何故か戦闘モードに入っていたので注意していると、騒ぎの正体が近付いて来た。
「こりゃマズイにゃ。もしもの時は、対応よろしくにゃ~」
「はい! 防御陣形です!!」
「「「「「キャーーー!?」」」」」
わしののん気な声にリータが応えたその時、周りから悲鳴があがった。
暴走車だ。
信号は赤だというのに、前の交差点からスピードを落とさずに突っ込んで来たのだ。
リータたちが子供たちを守るように陣形を組むなか人々は逃げ惑い、わしは消えるように移動。一瞬で車の前に立ちはだかったわしは、車を受け止めて
さらに、受け止めた衝撃で車が壊れないようにトトトンと足を動かしステップを踏んで、リータたちが渡っていた横断歩道手前でピタリと止めたのであった。
「撮ったか!?」
「「「「「うおおぉぉ~!!」」」」」
テレビクルーが映像を確認し、民衆が騒いでいるなか、リータが車の前輪を上げているわしの元へ駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「うんにゃ。でも、運転手がアクセル踏んだままにゃから下ろすに下ろせないにゃ。ブレーキ踏むように言って来てにゃ~」
「わかりました!」
リータが車の運転手側に歩いて行くと、メイバイが寄って来たのでこちらにも指示。車のバンパーにへこみがあるので、コリスとオニヒメを連れて前の交差点に行ってもらい、怪我人への対応をしてもらう。
メイバイたちが走り去るとリータが戻って来たのだが、車が故障して止めようがないとのこと。なので車はリータに持ってもらい、わしはトコトコと運転席側に移動する。細い女性が軽々持つので野次馬はどよめいていたけど……
「故障にゃって? どれどれ」
「さっき
運転席の窓は開いていたのでわしが手を掛けてよじ登ったら、老人に幽霊でも見たかのように驚かれた。しかし慣れた物なので、車の中を覗き見たら暴走した理由に気付いた。
「じいさん、アクセル踏んでるにゃ~。足を離せにゃ~」
「いや、ブレーキだ。ブレーキなのに止まらないんだ」
「にゃ~? ちょっと失礼するにゃ」
明らかにアクセルを踏んでいるのに老人は自信満々でそんなことを言うので、スマホで証拠写真をパシャリ。
「じゃあ、エンジン切ったらどうにゃの? んで、パーキングブレーキしたらいいにゃろ?」
「あ、ああ……」
たぶんわしのせいで混乱しているわけではないはずなので、わしが違う止め方を提示したら、老人も落ち着いてエンジンを切ってくれた。
パーキングブレーキまでを確認したら老人を車から降ろし、リータにも「もう大丈夫」としらせ、警察にはスマホを預けてあとを任せる。
そしてわしはダッシュ。前の交差点で救助に当たっているメイバイと合流した。
「そっちはどんにゃ感じ?」
「何人か怪我してたけど、コリスちゃんたちでなんとかなりそうニャー」
「思ったより大きにゃ事故じゃなかったのかにゃ?」
メイバイと喋りながらコリスとオニヒメの治療を見ていたら、後ろから悲鳴のような声が聞こえて来た。
「助けて~! 娘を助けてください!!」
わしが振り向くと血塗れの女性が立っていたので、わしとメイバイとコリスは急行する。
「あにゃたも怪我が酷いにゃ。すぐに座れにゃ~」
「娘が……娘があそこに……」
「コリス! この人頼むにゃ!!」
「うん!!」
女性は必死に血塗れの指で差しながら崩れ落ちたので、わしが受け止めてコリスに託す。そしてメイバイと共に女の子の元へ駆け寄った。
「うっ……酷いニャ……」
およそ6歳ぐらいの女の子が鉄製の棒に腹を貫かれた現場を見たメイバイは顔を歪める。おそらく、暴走車がこの親子を跳ね飛ばしたから、事故現場から離れていたのだろう。
「シラタマ殿……助かるニャー?」
わしが黙って触診しているとメイバイが心配そうに声を掛けて来たが、その時、女の子の目が開いたのでかまってあげられない。
「ねこ、さん……」
「うんにゃ。猫さんがいま痛くないようにしてあげるからにゃ~? もうちょっとだけ我慢してにゃ~?」
「う、ん……」
「メイバイ。手伝ってくれにゃ」
「はいニャー!」
メイバイには女の子と刺さっている棒を同時に支えてもらい、わしは棒を刀で切断。そして今度はわしが女の子のお腹を挟み込むように両手で支えたら、メイバイに合図を出す。
「いいにゃ? この子に痛みが走らないぐらい、真っ直ぐ素早く抜いてくれにゃ」
「任せてニャー!」
「3で行くからにゃ? いち、にゃの……」
「「3にゃ~~~!!」」
「にゃ」で行ってしまったが、息もピッタリだったので気にしない。女の子に刺さっていた棒はメイバイに一瞬で抜かれた瞬間、わしの回復魔法フルスロットル。辺りは強烈な光に包まれるのであった。
「ねこさん……いたくないよ」
「にゃはは。それはにゃによりにゃ」
奇跡は起こせる。いや、奇跡なんて代物ではない。わしは女の子の患部を体内に放った探知魔法で確認していたから、メイバイが引っこ抜いた瞬間に、中央から両側に向けて一気に傷を塞げたのだ。
「ちょっと血を流しすぎてるから、わしがお母さんのところに運んであげるにゃ~」
「うん! モフモフ~」
全ての傷を回復魔法で治してお姫様抱っこで立ち上がったら、女の子はたぶんお礼を言ったと思われる。周りの声も凄まじく、猫コールが起こっているけど無視。
わしたちが母親の元へ着くと、オニヒメも合流してコリスと一緒に綺麗に治してくれていたので、泣きながらお礼を言う母親に女の子を預けて立ち去るのであった。
「にゃに揉めてるにゃ~?」
わしたちが駆け足で暴走車の元へ戻ったら、老人が警察を怒鳴りつけていたので割って入った。
「この猫が! 偽物の写真なんて撮りやがって! 私は元財務次官だぞ!!」
「チッ……反省の色なしだにゃ」
警察に聞かなくても老人がわしを罵倒してくれたので全てを理解した。なので、軽く飛んでからの、老人の顔に両肉球スタンプ。手加減しまくっているので、威力的にはペチッてぐらいだ。
「なにをする!」
「お前がにゃにをしでかしたか教えてあげてるんにゃ。その血は、死に掛けた女の子の血にゃ!!」
「血? ヒッ……」
わしが怒鳴り返すと、老人は自分の頬を手で撫でて、手に付いた血を見てへたり込んだ。
「もうこいつ、テロリストでいいにゃろ? わしがこの場にいなかったら少なくとも2人は死んでいたし、もっと死んでいてもおかしくなかったんだからにゃ。大量殺人事件の犯人で極刑にしてくれにゃ」
「えっと……私共に言われましても……量刑は裁判官が決めるので……」
警察官は当然のことを言っているが、わしはそれを許せない。
「もういいにゃ。お前たちが裁けないにゃら、王様のわしが裁くにゃ。じいさんは、操れもしにゃい車という凶器で、大量の人を殺そうとしたにゃ。よって、死罪とするにゃ~」
わしが刀を抜いて振り上げると、警察官からは銃を向けられた。
「なにしてるんだ! その化け猫をさっさと撃て! いくら税金を払っていると思っているんだ!!」
「そんにゃ豆鉄砲、当たっても痛くないから撃つだけ無駄にゃ。それに鉄砲より先に、わしはお前の首を斬り落とせるにゃ。んじゃ、死刑を執行するにゃ~」
わしが一歩進むと警察官は銃に指を掛け、それと同時に老人は、いまさら命乞いを始めた。
「す、すまなかった! 私が悪う御座いました!!」
「わしに謝ってどうするにゃ! 被害にあった人にゃろ! いや、車に乗る前にどうしてわからないにゃ! ブレーキもアクセルもわからない奴が車にゃんか乗るにゃ! 車だって凶器だとわからにゃいのか!!」
「被害者に誠心誠意謝ります! もう車にも乗りません! どうか、どうか命だけは~~~!!」
「ダメにゃ。死ねにゃ……」
土下座なんてもう遅い。いくら泣き叫ぼうが、わしは非情に刀を振り下ろすのであった……
「にゃんてにゃ。ただのパフォーマンスにゃ~。殺すわけないにゃろ~。にゃははは」
振り下ろした刀を笑いながら鞘に戻すと、全員、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔。老人も似たような顔で
「でも、二度目はないにゃ。次、お前が車に乗っている姿を見たら、わしは容赦にゃく車ごと真っ二つにしてやるにゃ。こんにゃふうににゃ」
最後は脅し。老人の高そうな車は、わしの素早く振った刀でパッカーンとなる。
「「「「「あわわわわわ」」」」」
そのありえない現象に、老人は失禁垂れ流し、民衆も声にならない声を漏らすのであっ……
「リータ。そっち持ってにゃ~」
「はいはい。でも、戻すなら斬らなきゃいいのに」
さらに神剣【猫撫での剣】の効果、斬った物は何でもくっつく現象に、全員言葉をなくすのであったとさ。
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