平行世界2日目その3にゃ~


 ファミレスにてコリスが食品サンプルを食べてしまうトラブルはあったので、水魔法で綺麗に洗って皆に見せ終わったら返したのに、女性店員は受け取ってくれない。


「もうバッチクないにゃ~」

「もっと魔法見せてくれたら全部あげます!」

「……君ってアルバイトじゃにゃいの?」


 どうやらわしが魔法を使ったからテンションが上がっているっぽい。しかし、店員はどう見ても学生っぽいので、店長を連れて来いと言ったら近くにいた。


「んじゃ、本当に貰うからにゃ~?」

「どうぞどうぞ」


 いちおう迷惑料程度に簡単な魔法を見せてあげたら、こんなにいらないと言っているのに食品サンプルを全て押し付けられたので、全て次元倉庫へ。

 胸元に開いた次元倉庫に押し込んでいたら店員たちはキャーキャー言っていたので、これを見るのが目的だったのかも?


「リアルどらえ……」

「みにゃまで言うにゃ!!」


 だって、わしはアニメの中の住人みたいなんじゃもん。でも、全ては言わせねぇよ。



 ファミレスで一通り堪能して封筒から支払いをしたら、もう一軒入るかとの話になったので、次は中華バイキングに挑戦。テレビクルーがゲーゲー言っていたところを見ると、大食いの人はいないみたいだ。


 とりあえず中華バイキングに入ったら、早くも撤退。コリスが容赦ないんじゃもん。

 目を離したわしたちに完全に非があるので、料金は倍払って店を出た。まさかバイキングを根刮ぎ頬袋に入れるとは……


 まぁこれでお腹は膨らんだので、買い物に戻る。先ほど子供たちを迎えに行ったオモチャ売り場で大量のゲーム等をツケ払いで買ったら、子供たちが買ったオモチャも次元倉庫へ。

 ちなみに子供たちが買ったオモチャとは、男の子はロボットやヒーロー系のアイテム。女の子はお人形と魔法少女系のアイテム。アニメも見ていないのに、日本の子供と同じような物を買っていた。


 ちなみにちなみに、大人とコリスたちはぬいぐるみばっかり。それも大型を買っていたからわしの代わりなのかもしれない……

 ついでに猫兄弟は、コマゴマしたオモチャを買っていた。噛み心地がいいそうだ……



 すぐに使う物だけを受け取ったら、家電ショップでの爆買いツアーは終了。まだ夜には時間があるので、次は百貨店にやって来た。


「にゃ? 服が欲しいんにゃ……店長さん。ツケでお願いにゃ~」


 ギャル服を着ていた一同は、どこへ行っても浮いていたので服装はチェンジしたい模様。しかし、百貨店と言えばハイブランドが多いので、手持ちでは心許ない。いや、すでに飲食店で散財してしまったのでまったく足りないだろう。

 なので店長に事情を説明して、ナマ物以外の商品は全て2個ずつ買うと言ってみたら……


「かしこまり!」


 ツケは簡単にオッケー。わしの豪快な買い方に惚れ込んでいるようだ。と、思う。外務省の七三メガネが何か耳打ちしたように見えたけど気のせいだろう。

 適当に入った服屋では、皆は値段を見ないで大量購入。わしの元へ、多少の知識があるベティが呆れて寄って来た。


「こんな高いブランド、マジでこんなに買っていいの?」

「まぁ服もデザインの勉強になるからにゃ。それにハイブランドにゃら生地も縫製もしっかりしてるにゃろ。帰ったらパクって売ろうにゃ~」

「ふ~ん。んじゃ、あたしもいっぱい買おっと。これなんてどう??」

「斬新すぎにゃい??」


 ベティの持った服は透明なビニール製でスタイリッシュすぎる。よく言うと未来人。悪く言うと裸の王様にしか見えないし、どう着るかもわからない。

 なので、さすがにベティも買うのをやめていた。どうせわしが買うから挑戦した服は我慢していたけど、その服もよくわからんわ~。


 前と後ろのデザイン違いの服を着たベティは気に入ったようで、ギャル服からチェンジ。各々気に入った服を着たみたいだけど、尻尾のある人はどうなってるんじゃろう?

 あ、穴開けてるのですか。ここの服はめっちゃ高いのですけど……似合ってるから、まぁいっか。エリザベスとルシウスも帽子似合ってるよ~。



 なんだかわしとコリス以外はスタイリッシュなモデルみたいになった集団を連れて闊歩かっぽしていたら、ペットショップを発見。エリザベスとルシウスの服も買ってあげる。


「これでいいわ」

「俺はこれ」

「にゃんだこりゃ~~~!!」


 値段を見たら、ペットの服なのにうん万超え。よく見たらブランド物だったので、違う服もかわいいと勧めて見たけど、2人はハイブランドしか選ばない。猫のクセに、目が肥えてやがる……


「モフモフ~。これもかって~?」

「これって……キャットフードにゃんだけど……」

「モフモフいっしょに食べれるね~」

「まだ開けちゃダメにゃ~」


 コリスがキャットフードを開けてしまったので、店員にはツケでお願いして、エリザベスとルシウスを呼んで試食させてみる。その結果、コリスは「星みっちゅ」。エリザベスとルシウスは「まあまあ」。

 点数の甘いコリスだけでは信用ならないが、口の肥えている兄弟がそんなことを言うのでわしもチャレンジ。


「にゃんかくやしいにゃ!」


 マジでちょっと美味しく感じたので、猫の口が恨めしい。わしまでポリポリ食べているものだから、皆もキャットフードに手を伸ばしていたので、ゲーゲー言っているところをバッチリカメラで撮られてしまった。


「いまのにゃし! いまのとこだけ消してほしいにゃ~? うちの銅貨あげるにゃ」


 これでもわしたちは平行世界の代表みたいなモノ。文化レベルは確かに低いけど、猫様の食べ物を食べるほど落ちぶれてはいない。

 なので、格安の袖の下で危機を脱するわしであったとさ。



 今日は百貨店のデパ地下を回ったところで爆買いツアーは終了。バスに乗り込みテレビクルーを適当にあしらいながらホテルに戻る。テレビクルーに感謝の言葉を残して部屋に戻ったら、子供たちはさっそくタブレットに向かって行った。


「先にごはんにしようにゃ~? ほら、美味しそうにゃ~」


 晩ごはんは、デパ地下で買って来た大量のお惣菜とお弁当。食後には大量のデザートとお酒も揃っている。匂いに釣られた子供たちがママロックで席に縛り付けられている間に、わしは各種セッティング。

 それらが終わったらテレビを見ながらバクバク食べて、デザートとお酒に突入したら頃合いかと思い、スイッチオンだ。


 チャーラー、チャララララーラー♪


 電気屋で見ていた映画を、大画面テレビでの上映だ。子供たちも見れるように、英語で上映してあげている。

 最初はタブレットに向かおうとした子供たちは、のっけから迫力のある映像が来たので、大口を開けて釘付け。リアルなCGに驚いているみたいだ。

 大人たちも似たような感じで、大口を開けて口からボタボタなんか落としていたから、軽くつついてテーブルは拭いてあげた。


 これで2時間は全員に動きがなくなるので、わしはチラチラ見つつ、パソコンで今日の情報収集。やはり、ニュースはわしたち一色だ。

 変なことを書かれていたら苦情を入れてやろうと思っていたが、好意的な意見が多い。しかし、日本政府の動きが遅いのが気になる。まだ国会も開いていないし、わしたちの対応の仕方も悩んでいるみたいだ。

 まぁ自由に動けているのだから、文句を言う必要もないだろう。何か用があるなら外務省の七三メガネが言って来るだろうから、それまで放置だ。



 しばし酒をチビチビ、パソコンをポチポチしていたらエンドロールが流れていたので、映画を消そうと立ち上がったら全員グスグス言っていた。


「にゃ? 泣くような話にゃっけ??」

「「「「「なんで泣かないのよ~~~」」」」」

「「「「「人でなしにゃ~~~」」」」」

「猫にゃ~~~」


 姫を助けて宇宙を救った話なんて、ありきたりすぎてわしは見飽きている。でも、みんな初体験だから、わしが血も涙もない猫だと思ったっぽい。


「ほらほら。子供たちからお風呂に入るにゃ~。アヒルもいるんにゃよ~?」

「「「「「猫でなしにゃ……」」」」」

「間違いなく猫にゃ~~~」


 言い直しする子供たちは、魔法とジャグジーでバッタバッタと倒すわしであったとさ。



 子供たちが眠り、全員お風呂に入ったら大人の時間。乾杯をして、お酒をチビチビやりながら、お惣菜の残りを摘まむ。


「このワイン凄いわね……どうやって作っているのかしら?」


 さっちゃんはワインを口にして質問するので、わしはワインのラベルを確認する。


「これは……シャトー・シュヴァル・ブランの20年物だにゃ。ワイナリーがブドウを選別して20年も寝かしていたから、柔らかい味わいになったんだろうにゃ」

「20年? そんな作り方があったなんて初耳だわ」

「東の国ではそんにゃに取り置く習慣がないもんにゃ~。ちょっとせっかちにゃ人種なのかにゃ?」

「どうだろう……昔は獣被害が多かったから、早く飲まないともったいなかったとか?」


 わしとさっちゃんがお酒談義に花を咲かせていると、玉藻も話に入る。


「面白そうな話をしておるな。日ノ本では、地方によっては酒を寝かしておるぞ。琉球なんて、百年物の泡盛もあるんじゃ」

「にゃに? 自慢しに来たにゃ~?」

「まぁな。ここの清酒もいいが、我が日ノ本の蔵元も負けておらんからのう」

「いいな~。やっぱり歴史が長いと、技術で引けを取らないのですね」

「うちの秘伝、少しは融通してやってもいいぞ。フフン♪」


 玉藻は酒が入って上機嫌で自慢しているので、わしはさっちゃんの味方になってあげる。


「玉藻が言ってるのは、やんごとない人が飲むお酒のことにゃ。ここにゃんて、庶民でも頑張ったらその程度のお酒が飲めるんだからにゃ」

「その程度じゃと~~~??」

「にゃはは。ちょっと言いすぎたにゃ。そろそろ冷えた頃だろうから、ちょっと待ってろにゃ」


 喧嘩腰の玉藻を押し退けてわしは冷蔵庫に向かうと、冷やしてあったグラスと缶を持って2人の元へ戻る。そしてトクトクと液体を注いで2人に渡した。


「ささ。一気にとは言わにゃいけど、ゴクゴクと飲んでやってくれにゃ」


 2人はわしの作法を渋々マネしてゴクゴクと喉に流し込む。


「プハーッ! なんじゃこの旨い飲み物は!?」

「プハーッ! 本当に美味しい! 冷たくて喉ごしが爽やか!!」

「にゃはは。酒飲み大好き、生ビールにゃ~……プハーッ!」


 わしたちが騒いでいると、リータたちも寄って来たけど冷えたグラスはわし用に用意していた物しかない。なので、普通のグラスを渡して入れ方だけ教えてビールを堪能する。


「そりゃ、手間暇かけた高い酒はうまいにゃ。でもにゃ。安い酒だって、ここでは試行錯誤して作られているんにゃ。わし的には、こういった酒で、仲間と気兼ねなく飲む酒が一番美味しいにゃ~」

「プッ……シラタマちゃんらしいわね」

「ふむ……少数だけでなく多数を満足させる、か……」

「玉藻は難しく考えすぎにゃ~。もう一回、かんぱいにゃ~!」

「「「「「かんぱいにゃ~!!」」」」」


 こうしてわしたちの平行世界2日目は、お酒を飲みながら夜が更けて行くのであった……

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