ポーションの売れ行き
(作者連絡:なかなか更新できなくて申し訳ないです……。
たとえ読まれる方が0人になったとしても、この物語は最後まで書きあげます。
ひとまずはとにかく早く更新再開できるよう、尽力します。
更新遅く、ご不快に思われる方、多くいらっしゃると思います。
ひとえに私の作者としての力量不足です。大変申し訳ありません。
遠慮なく、お気に入り登録を外してください。
それでもお付き合いいただけるという方おられましたら、引き続き、何卒よろしくお願いいたします。
作者連絡、失礼いたしました。)
開店した薬屋、初めてのポーションが無事売れた後。
その後も何人かのお客さんが来てポーションを買っていった。
そして気が付くと、お昼時が近づいてきた。
ポーションが売れる時間帯の最初のピーク――仕事前の冒険者たちが店の前を行き来する時間帯は、どうやら終わったようだ。
「お疲れ様でした。じゃあ、順番にお昼休憩を取りましょうか」と俺はみんなに提案する。
「そうですね。あっ、でも、私は大丈夫です。そんなにお腹、空いてませんし」とファシアさんがすぐに言う。
「いや。それでも昼休憩は取ってください」と俺はたしなめる。
開店準備で一番頑張ってくれたのは、間違いなく、元ギルドの受付嬢である経験を活かしてくれたファシアさんだ。それに、放っておくと彼女がいつまでも仕事をし続けてしまうことは、この数週間でよく理解していた。
しかし彼女は、「うーん」と迷っていた。
「マルサスさんのお気持ちは嬉しいんですが……できればあまり店を離れたくないんですよね。初日ですし、何かあったときにすぐに立ち会えるようにしておきたいというか」
するとアーガスが、「じゃあ俺が何か買ってこよう」と立ち上がりながら言った。
「マルサス、店内で休憩をとるのは問題ないか? そうすればファシアも、気兼ねなく昼休憩をとれると思うのだが」
「あっ、うん。そうだね。
じゃあ二階を休憩に使ってもらおうかな。
ファシアさん。普段俺が寝泊りしてる部屋なんですけど、そこで休憩してもらってもいいですか?」
「へっ!? 寝室!?」
ファシアさんが素っ頓狂な声を上げる。
「あっ、まずかったですか?
でも、お客さんに見えるところで何か食べてもらうというのもちょっとあれですし……」
「い、いえ! だ、大丈夫です! マルサスさんのし……寝室で休憩させていただきます。ふへへっ」
ファシアさんは、ファシアさんらしくない声で笑った。
「……?
じゃあ、そういうことで。
申し訳ない、アーガス。じゃあ、屋台かどこかで、何か軽食を買ってきてもらえるかな」
俺は巾着から、金貨を3枚ほど渡して言った。
「ああ。ファシアの分と……マルサスの分も買ってきたらいいな?」
「あっ、うん。それだとすごく助かる。ありがとう。
先にアーガスも何か食べて、休憩とってね。この金貨で支払っていいから」
「いや、自分の昼代ぐらいは……」
「いいから、いいから」
こういう時に俺が譲らないことを、アーガスも分かってきたのだろう。
「……分かった。じゃあありがたく何か食べさせてもらうよ」
「うん。遠慮せず使ってね」
アーガスが薬屋を出ようとする。
すると店内に声が響いた。
「す、すみません!」
そう言ったのは、錬金術師の少女リミヤだ。
俺たち三人は、彼女のことを見る。
「わ、私も……か、買い出しに行かせてもらっても、いいですか?」
俺は頷き、答える。
「ああ、もちろん。リミヤも休憩しておいで。
俺とファシアさんの分はアーガスが買ってきてくれるから、じゃあリミヤのお昼代はこれを……」とお金を渡そうとすると、フードを被った錬金術師は、ぶんぶん首を振った。
「わ、私、アーガスさんと行ってきます……!」
その言葉を聞いて、俺は目を丸くした。
厳ついB級冒険者アーガスのことを本能的に恐れ、二人だけではポーション素材の調達にいけないと申し訳なさそうに言っていた少女リミヤ。
その彼女が、王都内の買い物とはいえ、率先してアーガスと行動をともにしようとしている。
「えっと、でも……」
「い、行かせてください」
俺はリミヤの表情をうかがう。
その顔には、決意の色が現れていた。
『変わろうとしてるんだ、リミヤ』
リミヤがアーガスと二人だけでは行動できないということに対して、俺はもう、「そういうものだ」と受け入れてはじめていた。
元ギルド受付嬢のファシアさんに店番をお願いすれば、俺も素材調達にいけるし、もしそれでも足りなければ、開拓者ギルドから素材を購入すればいい話だ、と。
でもリミヤ自身は、ずっとそのことを気にしていたのかもしれない。
「ありがとう、じゃあお願いしようかな」
俺はリミヤに追加のお金を渡し、アーガスにも声をかける。
「アーガス、いいかな?」
スキンヘッドの頭を撫でながら、アーガスは頷いた。「俺は構わないが……」と、リミヤの方を見る。
「あっああ、アーガスさん。い、一緒にか、買い出し、行かせてください。よ、よろしくお願いします!!」
リミヤは勢いよく頭を下げた。
「……ああ。わかった」アーガスは頷き、俺たちの方に、分厚い手を上げた。「じゃあ、行ってくる」
「うん、よろしくね」買い出しというよりは、リミヤのことをという意味で、俺はアーガスにそう伝えた。
アーガスの方もそれは分かっているようで、こくりと意味ありげに頷いた。
大きな背を向けて、アーガスが薬屋を出る。
小柄なリミヤが、その背中を追いかけた。
「いってらっしゃい、リミヤ」と俺は声をかける。
少女は振り返り、「はい!」と気合いの入った残して、店を出て行った。
「リミヤちゃん、偉いですね」とファシアさんが隣で微笑んだ。
「ですね」と俺も笑った。
アーガスとリミヤが戻って来るのを待ちながら。
俺とファシアさんは引き続き店番をしつつ、午前中の売り上げを確認した。
8人のお客さんが、合計19本のポーションを買っていってくれていた。
思ったほどではないが、とりあえず売れるということが分かってほっとする。
しかしファシアさんの表情は、思ったより明るくない。
「どうかしましたか?」
「そうですね……」ファシアさんは、口元に手を当てて考え、それから言った。「正直なところ、もう少し売れるかなと思っていました。人通りもそれなりにありましたし……」
たしかに、店を通る冒険者の数はそれなりだった。
その数から考えると、そもそも店に入ってきた人数が少ない気がしないではない。
「やっぱりまだ、店としての信用がないからですかね?」と俺。
俺がもともとこき使われていた薬屋含め、この付近には幾つかポーションの取り扱いを行っている店がある。
うちのような得体のしれない新店よりも、元からあるそちらの店の方がお客さん的には安心なのだろうか。
「そうですね。商品の質さえ確かめてもらえれば、間違いなくもっと買ってもらえると思うのですが……」
ファシアさんが言う。
最初にポーションを購入してくれたお客さんも「鑑定書を見せてくれ」と言ってきたし、それを確認するとすぐに複数のポーションの購入を決めてくれた。
それだけポーション自体には自信を持っていいということだと思うのだけど……問題は、まだ信頼のない状態でどうやって店の中まで入ってきてもらうか。
ファシアさんと二人、頭を悩ませていると、薬屋の扉が開く。
「いらっしゃいませ」とファシアさんが、椅子から立ち上がる。
『あっ』
俺は入ってきた人を見て、驚く。
「立派な店だな。マルサス」とその人が、気さくに俺に話しかけてくる。
接客しようとしたファシアさんが、ばっと俺のことを振り返った。
「マルサスさん、あの方とお知り合いなんですか!!?」
「あ、まぁ……」
薬屋に現れたのは、王都のアンデッド騒動時に知り合った女性。
短く切りそろえられた金髪に高い鼻、美しくも鋭い青の瞳。
「久しぶりだな、マルサス。元気にしてたか?」
騎士団長であり、冒険者ギルド長も現役で兼任しているこの国のとんでも実力者、サラ=ラフィーネだった。
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