告白(2)
ファシアさんの案内で向かったのは、近くのカフェだった。
中に入ると、焼きたてパンとコーヒーの香りが鼻をくすぐった。初めて来たけれど、何度も来たことがあるかのように親しみがもてる、落ち着いた店内の雰囲気。
うーん、すごく感じの良い店。
魔物肉定食の美味しいあの酒場に続いて、ここのカフェにもすぐ常連になってしまいそうだ。
「ここのコーヒー、とても美味しくて気に入ってるんです」
隣でにこりと笑うファシアさん。
『お酒も同じくらい好きなんですか……?』とは、もちろん口が裂けても聞けない。
頭に浮かんだ質問を抑え込んで、「そうなんですね~」とにこやかに相槌を打つ。
案内された席に座り、ファシアさんと同じモーニングセットを頼んだ。
「急にお誘いしてすみません。薬屋さんの開店前の時期に、御迷惑じゃなかったですか?」
「大丈夫です。今日は特に予定がありませんでしたから」
「そうなんですか」
「むしろファシアさんの方は大丈夫でしたか?
開拓者ギルド、でしたよね。ギルドの受付の方って、朝も早くて、お仕事、大変なイメージですけど……」
開拓者ギルドといえば、冒険者ギルドと並ぶ大手ギルドだ。あまり詳しくは知らないが、請け負っている内容や所属している人たちも近いイメージを俺は持っている。
屈強な男たちや力のある魔法使いなどを集めて、魔物が生息する場所でのクエストを行うギルド。
冒険者ギルドがどちらかといえば「魔物討伐」に、開拓者ギルドが「未開地域における資源取得」に力を入れているとの違いはあるそうだが。
そんな大手ギルドの受付をしているなら、それは仕事も楽ではないだろう(し、酒を飲んでやさぐれたい夜もあるだろう)。
そんなことを考えながら話を振ると、ファシアは浮かなそうな顔をしていた。
「それが、その……」
ためらいがちに、彼女は口を開く。
「クビになっちゃったんです。ははは……」
乾いた笑いが、彼女の口からこぼれた。
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