毒の合成、そしてギルドへ。
錬金術師リミヤから、Fランクポーションを全て買い取って。
俺は店内の棚に並べた空の薬瓶を、10本ぐらいまとめて持ってカウンターの上に並べた。
「じゃあ、ここに座ったまま少し待っていていただけますか?」と、まだうっとりと金貨を見つめている少女に声をかける。
「あ、はい! すみません」
少女は緩んでいた顔を引き締め、金貨を鞄の中に、大切そうにしまった。
俺はもう一度、彼女が精製した魔力補給ポーションを手に取る。
――『分析』
とんでもなくこんがらがった成分。しかしこの淀みは、俺にとって馴染のある成分だった。
――『抽出』
毒草から、毒の成分だけを抜き取るように。
あるいは傷口から、残さず毒を吸い出すように。
俺は淀んだポーションから、スキルが反応する成分をくまなく抽出した。
そして自分の持っている空瓶に、抽出した成分を移し替える。
「……えっ」
少女の口から、呟きが漏れた。
――『分析』
移し替えた成分を分析すると、見事にとんでもない毒が混ざり合っていた。
そして、毒を抜き出した元の小瓶にスキルを使うと。
――『分析』
毒の反応はなく、整った形をしている。
おそらくこの反応は薬効……魔力補給成分に違いない。
ポーションの見た目も、薬屋によく並んでいる、おなじみの透き通った緑色に変わった。
よし。どうやら俺のスキルでいけそうだな。
「え、え、えっと……」
少女が戸惑っている。が、説明はとりあえず後だ。
今のはただのまぐれかもしれないし、他の7本でもできるかどうかをとりあえず試してみないと。
だが、俺の考えは杞憂に終わった。
全て問題なく、毒成分を取り出すことに成功したのだった。
そしてついでにちょっと思いついて、移し替えた毒成分を全てフラスコに混ぜ、スキルで『調合』してみた。
含まれていた毒成分に対する、抗毒成分が出来上がった。
『分析』で見て見たけれど、今までに作ってきたような単独の毒消しではなかったので、効能がよくわからなかった。
まぁこれは余った毒液でつくったものだから、別に使い物にならなければ捨てればいいだけの話だが。
「これは、一体……」
彼女が狐にでもつままれたかのような顔で、俺が毒を取り除いた小瓶に入ったポーションたちを眺めている。
「副作用を発生させる有害な成分、要するに毒をスキルで取り出してみたんです。たぶん、うまくいったとは思うのですが」
「!!!」
リミヤは勢いよく顔を上げて、俺をまじまじと見た。
「そ、そんなことができるですか……!?」
「あー、えっと。さっきもお話した通り、俺は毒に特化したスキルを持っているので……」
リミヤはぶんぶんと、激しく首を振った。艶のある銀髪が、フードの中でばさばさ揺れている。
「でも、既に出来上がったポーションから特定の成分だけを抜き取るなんて……そんなの、聞いたことないです!!」
「あ、そう、ですか。確かに、数の少ないスキルではあるみたいですね」
「すごい、そんなスキルが……」
うんうん。でも今、俺のスキルのことは脇に置いといて。
「あ、それで。今から、これを持ってギルドの鑑定窓口に行きましょう。
鑑定結果が出次第、契約の話に移りましょう」
「あ……」
「で、大丈夫ですか?」
「はっ、はい! お願いします!!」
商人ギルドへ行くと、すぐにギルド長が走り寄ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。