第4話
要は電話を肩と耳で挟んで返事をしながら、机の上に置いてた腕時計に手を通した。やっぱり、呼び出しなんだ。
「悪い。やっぱり呼び出された」
電話が終わると、手刀をかざして私に言った。あらかじめ呼び出しがあるかもと言われた日は、大体そうなることが多い。だから今日はもう、そうなるんだろうなって諦めていた。
「ううん。気をつけてね」
「ああ。じゃあ、また。連絡する」
「はーい」
机の上に1万円を置くと、要は個室から出て行った。ここ、1万円もしないんだけどな。私はそれにそっと手を伸ばし、ピンと張って天井にそれをかざす。諭吉の顔がよく見える。
「やっぱ、いい男だよなあ」
イケメンで、お医者さんで、優しくて。こんな男に出会えるチャンスなんて、二度とないと思う。だから逃しちゃいけないって何度でも言い聞かせる。
「そろそろ帰ろうかな。」
要が帰っちゃった後に一人さみしくご飯を食べるのは、苦手だ。
「ありがとうございましたー。」
お支払を済ませて、心なしか肩を落として駅の方へと向かうと、ギターの音色が聞こえてきた。
今日もやってるのかな。時間もできちゃったし、聴いていこうかな。最近の私の楽しみは、駅前の有料駐車場でたまに行われているストリートライブを聴くことだ。音の聞こえる方へと足を伸ばすと、思った通りにそこに彼が居た。
「あれ。柚ちゃん。聴きに来てくれたの」
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