第13話

「いいかい、あんたたちね。いつもいつもいつも言ってるけどね」

 その声は地の底から響くような、本物の怒りのこもった声だった。

「もう一回だけ言っとくよ。生活水準落としてまで応援するのはやめなさい。……なに? 命狙われてるだけで別に生活レベルを下げてはいないって? おばか、おおばか、おろかもの。あんた知らないから言っておいてあげるけどね、実は命狙われると生活水準はガク落ちするものなの! 気軽に外もいけないし、おちおち眠ることもできない。そんなことくらいもうとっくにわかってくれてると思ってたけどね! ていうかね、命狙われるだけならいいけど、結局それって最後には命おとすことになるんだからね? そんで、ばかなあんたたちは知らないかもしれないけど、死んでしまったら応援もできなくなるんだからね。ファンがいなくなるのは悲しいってことくらいわかってよ。だいたいさ、そもそもそんなことまでして応援されてうれしいと思う? 『はいはーい、モネちゃん。この投げ銭は僕内臓を売って作った投げ銭だよー、実質内臓。喜んで受け取ってねー』って受け取れるか! そんなお金渡されても誰もうれしいとは思わないし、喜びもしない、ただ気まずい気持ちになるだけでしょうが! 小銭手に入れようと内臓売る契約する前に、そのお金もらった相手がどんな気持ちになるか考えたことある? ないよね? ちょっとでもあったらそんなことするわけないよね。

 だから、改めて言っておくよ。生活水準提げてまで応援なんてするな。わかったか、ばかものども」

 とここまで一息にまくしたてた後に、少しだけため息をついて続けた。

「まあ、でも、やっちゃったことは仕方がないからさ、頑張りなさいよ」

 それから、そうだ、もう一度ためらうように口を開いたんだった。

「頑張って、生き延びなさい。それだけ」

 思い出した言葉で、薄れかけていた意識を取り戻す。

 生き延びないと。


【続く】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る