第2章 列車の旅は素敵な旅?

これまでのあらすじ

 注)こちらは第1章のあらすじになります。飛ばしていただいても問題ございません。次のエピソードから第2章本編がスタートします。


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 平穏な田舎町『ハリエッキ』に暮らす少女、ロズ。


 たったひとりでハリエッキに引っ越してきた少女、アレックス。


 ロズはアレックスと親しくなりたいと思っているが、なかなか彼女に話しかけられずにいた。


 ある日、町に住むコールという男の子が、一人で『ハリエッキの森』に入ってしまう。

 コールの友達であるカイルは大人達に叱られることを恐れ、ロズに助けを求めた。


 コールやカイルにがっかりされたくないと思ったロズは、その場にいたアレックスから『大人に報告するべき』と忠告されたにもかかわらず、自分一人だけでコールを探しに行く。



 ハリエッキの森に入ったロズは、分かれ道が二つあるはずの場所に、が出現していることに気がつく。


 三つめの道を抜けた先には草原が広がっており、草原の奥には一軒の家屋が建っていた。

 躊躇ためらいながらも『家』に入ったロズは、家の中を進んでいく途中でコールを見つけ、彼が無事だったことに深く安堵する。


 ロズの心配をよそに、無邪気にはしゃいでいるコール。

 コールは廊下の先にある広間へとロズを案内する。


 広間の奥には、綺麗な『木箱』が置かれていた。

 そしてコールが木箱を手に取った瞬間、ハリエッキ周辺には現れるはずのない、魔族まぞく──『魔獣まじゅう』が、姿を現した。


 魔獣に追い詰められるロズとコール。


 危機一髪のところで二人を助けたのは、なんとアレックスだった。

 アレックスは見たこともない強力な『魔法』を使い、魔獣を撃退する。


 ロズは強力な魔法を修得した経緯についてアレックスに尋ねるが、アレックスは言葉をにごし、答えようとはしなかった。



 家から脱出しようとする三人だったが、いつの間にか玄関の扉が開かなくなっていた。

 しかも次々に魔獣が出現し、三人は四体もの魔獣に囲まれてしまう。


 ロズと、恐怖のあまり気を失ってしまったコールを守るため、アレックスは魔法を操って必死に戦う。だが、状況が悪いためなかなか魔獣を倒すことができない。


 そんな時、コールが持ち出した木箱の中から、何者かの声が聞こえてきた。ロズが声に従って木箱を開けると、中には『短剣』が入っていた。



 声の主はオーガスタと名乗り、自身の正体が『魔人まじん』であるとロズに明かす。

 オーガスタは、どこか別の場所からロズに声を送っているらしい。


 困惑するロズに、オーガスタはロズ達が閉じ込められているのが『魔人によって作り出された空間』であること、短剣の力を使えば空間に仕掛けられたし、脱出できるということを教える。


 オーガスタは短剣を使うようロズをうながす。

 躊躇うロズだったが、凶暴化した魔獣との戦いで傷つくアレックスを見て、短剣を使うことを決意する。


 オーガスタは短剣の使い方を教えてと懇願こんがんするロズに、使い方を教えてもいいが、その代わり自分のもとまで短剣を持ってきてほしい、と条件を出す。


 オーガスタのいる場所──それは、ハリエッキと同じ『タハティニア』国内にある『ウェルアンディア』という街だった。

 ロズは短剣を届けることを約束し、オーガスタに短剣の使い方を教えてもらう。



『カサンドラの名のもとに』


 それが、短剣の力を発動させるための言葉だった。


 

 ロズは覚悟を決め、短剣をさやから抜いた。


 次の瞬間、ロズの頭に『……お願いね……』という誰かの声が響く。

 その声は、オーガスタのものではなかった。



「カサンドラの! 名のもとにっ!!」



 短剣の力が発動し、床に不思議な紋様が広がる。


 紋様から噴き出した光が魔獣と家全体を包み込み、光が消えた時には、魔獣の姿も消えてしまっていた。

 


 目を覚ましたコールを連れ、ロズとアレックスは開くようになった玄関扉から外に出る。

 その時、ロズは一通の手紙が床に落ちていることに気がつく。それは『オーガスタ宛ての手紙』だった。

 ロズは短剣と一緒にオーガスタへ渡すため、その手紙をポケットの中にしまった。


 存在しなかったはずの三つめの道を抜け、三人はハリエッキの森に帰還する。

 気がつくと、魔人の作り出した空間は跡形もなく消えていた。

 


 ハリエッキに戻った三人は、ロズの父親であるチェスターと、コールの父親であるジェームズ、そしてカイルに出迎えられた。

 反省しているコールは自分のしたことについて素直に謝り、父親達を驚かせる。


 そこに、ハリエッキの町長であるクライブもやってきた。

 ロズ、アレックス、そしてクライブ町長の三人は、森で起こった出来事について話し合うため、町の集会所へと移動する。



 二人から話を聞いたクライブは、ハリエッキの周辺に魔族が出現したという事実に衝撃を受ける。

 魔人によって作り出された空間。

 一体いつ、誰が作り出したのか、なぜ今まで誰にも気づかれなかったのか。

 状況は謎だらけであり、真相を知るにはオーガスタのもとに行くしかなかった。


 短剣を届けるというオーガスタとの約束を、自分で果たしてみせると決めたロズ。

 ロズの決意を聞いたアレックスは、ウェルアンディアまで自分とロズの二人で行くと宣言する。


 アレックスを巻き込みたくないロズはその申し出を断ろうとするが、アレックスは引き下がらない。

 クライブは話をするよう二人に伝え、集会所を後にする。


 二人きりになったロズとアレックス。


 ロズは、初めて会った時のことをアレックスに謝る。

 アレックスに嫌な思いをさせてしまったと、ロズは悩み続けていたのだ。しかし、嫌な思いをさせたというのはロズの勘違いであった。

 誤解が解けたことをきっかけに、二人の距離は少しだけ縮まる。

 

 話を続ける二人。


 ロズは、大人に報告せず一人でコールを探しに行ったことを反省していた。自分の行動を『無責任』だったと悔いるロズ。

 アレックスはそんなロズを励まし、そして、ウェルアンディアまで一緒に行きたい理由を話し始める。



 アレックスは『クリフディール』という国の出身だった。

 クリフディールは、大地に宿る過剰な魔力の影響で衰退してしまった国であり、国民は災害や魔獣の襲撃に苦しめられていた。


 つらい過去を抱えるアレックス。

 彼女はハリエッキに再び異変が起こり、いつかクリフディールのようになってしまうのではないかと恐れていた。

 異変の真相を突き止め、ハリエッキが故郷のようにはならないということを、確かめたい。

 それが、ロズと一緒にオーガスタのもとへ行きたい理由であった。


 アレックスは改めて、短剣を届ける旅に同行させてほしいとロズに伝える。


 ロズは葛藤の末に、アレックスの抱える傷から目を背けたくないという自分の気持ちに気がつく。

 アレックスと向き合い、彼女を支えられるようになりたい。

 そう願うロズは、アレックスと共にウェルアンディアへ向かうことを決心する。


 二人は手を取り合い、一緒に短剣を届けようと約束したのだった。



 翌朝、ハリエッキの門へと向かうロズは、帯剣たいけん用のベルトを身につけていた。そのベルトは、父親のチェスターから譲り受けた物だった。


 チェスターはクライブに説得され、ロズのウェルアンディア行きを不本意ながらも認めていた。

 心配で仕方ないチェスターだったが、決意を固めた様子のロズを見て、父親として娘を送り出そうと覚悟を決める。


 クライブとチェスターに見送られ、ロズとアレックスはハリエッキを出発した。



 同じ頃、ウェルアンディアではオーガスタが、何やら不穏な動きを見せていた──。


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