第一話 始まり
■■■
赤髪の青年が問いかける。
「
眼鏡をかけた青年が言う。
「怖いよ?だからいいんじゃあないか。それにこの本まだ三回しか読んでないから全然飽きるなんてありえないね!
恐介と呼ばれた青年が自信満々に言い返すと、陽太と呼ばれた青年が頭を掻きながら困ったように言う。
「恐介、お前とはめちゃくちゃ趣味も合うし、話してて楽しいし親友だと思ってるけどよお…」
「そのホラー好き少しは自重してくれませんかね?」
しかしそういわれた本人である恐介は全く持って心外だとでも言いたいかのような顔で言う。
「いやこれでもかなり自重してるほうだと思うけど?」
「どこがだよ?確かにホラーのこと話す頻度は二割ぐらい減ったかもしれねえけど」
「うーん、俺さ、ここ2年間一度も陽太を部屋に入れてないじゃん?」
「そういえばそうだな。」
言われてみればいつもリビングに通されてゲームばかりしてたような気がする。
とうなずく。
「その理由は、たぶん俺の部屋に案内したら陽太気絶すると思ったから…」
それだけじゃないよ、と続けて言う。
「あとキーホルダーとか私服とか全部怖くないやつにしてるんだよ?
昔、道行く人に見られて怖がられて大変だったんだからね。」
そう、自分はこれでも精一杯抑えているのだと。
一片の曇りもない根拠に基づいた完全論理を展開した。そう訴えかけている曇りなき眼に。ついに陽太は折れた。
「うん、がんばってたんだなお前…」
どこかあきらめたかのような眼差しをして彼はそういった。
そして話題をすり替えるようにしてこう続ける。
「ホラーもいいっていうのはわかったからさ、たまには別ゲーやってみないか?」
「別ゲー?」
「ああ、お前立ち回りとか謎解きとか一級品なんだから、ホラゲー以外でも意外と適応できると思うんだよ。とりあえず俺よりうまくなれるのは保証する。」
少し考え込むような仕草をして、言う。
「うーん。でもその時間でホラゲーをやりたいなあ。」
そう――――
彼、鞍馬恐介はどこまでも自分の欲求に素直であった。
だがしかし!陽太にも退けない理由があった。
「お前とやったことがあるゲームってホラゲだけなんだよ!
もう少し心臓に優しいゲームを一緒にやりてぇんだ!」
「ああ、そういえば…」
本当に陽太は困っていたのである。
彼が陽太と一緒にやったゲームはゲームセンター以外ではそれぐらいだったのだ。
陽太はホラーが苦手というわけでもないが、それほど得意でもない。
考えてみてほしい。
数年間、キラキラした目でホラーゲームを進められ、やっている男の気持ちを。
遅かれ早かれこうなることは寧ろ必然だったと言えよう。
「「ああ、そういえば…」じゃねーよ!
まさかそんなに自覚なかったのか?数年間遊んでおいて?」
「楽しかったから。」
「そんな小学生の感想は求めてない!」
はあ…と大きなため息をついて陽太は言う。
「お前も少しほかのゲームやってみてくれよ…頼むからさ。」
「うん、わかった。やろう。」
数年間ずっと同じゲームにつき合わせたことに負い目を感じたのか、ついに恐介は首を縦に振った。
「でも家族の許可が出たらね。」
ここにきて最終防衛カード、家族が買ってくれないかもを発動!
だが…
「すでにお前の母さんの許可は取ってあるぜ。」
いつの間にか外堀を埋められているのって普通にホラーだよなと思いながら、恐介は考えることをやめた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
二話目です!
三人称視点って難しすぎでは?
二話あとから主人公視点に代わります。(予定)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます