公園で美女を助けた俺、懸賞金500万円の手配書がネットに拡散されていた。平穏な高校生活を送りたいが痴漢冤罪をかけられてるっぽい

でずな

第1話 現役JK社長がいるらしい

 冬の夕暮れ時。周りには、人がいない。

 それもそのはず。歩いている場所は、人通りのない道だ。

 隣りにいるのは幼馴染の――八城莉里やしろりり

 金色の絹のような長髪が特徴的で、モデルかと思うほど完璧なスタイル。そしてそのスタイルに足して、誰もが目を引くほど大きな2つの果実。

 高校の制服であるブレザーを着ているせいでというべきなのか、着ているおかげと言うべきなのか、その存在感は影が薄い俺のことを隠すほど大きい。


 幼馴染ながら、すごい可愛いと思う。

 なぜ恋愛感情を持ってないかって?

 そりゃ、幼馴染だからだ。いくら幼馴染が可愛いくても、カップルなんてそんな関係になるのはありえない。……と、思って正常な心を保っている今日この頃。

 

「ねえねえ、夜一よいち。私たちって高校一年生だよね」

「半年以上前に入学式したの忘れた?」

「む。いくら私でも忘れてないよ。今のは話の振りだよ振り。夜一は空気を読んで私に「え? そうだっけ?」ってとぼけながら聞くところなのっ!」

「ああ、そうだったんだ」


 ぷくぅ〜っとふぐのように頬を膨らませて、俺のことを睨んできた。

 全く。この一つ一つの動作を無意識でしてるなんて、なんとも誘惑的な幼馴染だ。

 もし俺が折れない心の持ち主じゃかったら、今頃莉里はどうなっていたことやら。


「ほら早く。言い直して」

「……え。そうだったっけ(棒読み)」


 棒読みを意識したわけじゃないけど、無意識に棒読みになっちゃった。

 莉理はまだふぐのような頬を直そうとしないが、仕方なく納得してくれた様子。


「私たち高校一年生の同年代に、とんでもない人がいるの知ってる?」

「さあ?」


 これは話の流れを考えてとかそういうのじゃなくて、本当に知らない。


「ぷぷぷ。知らないって、夜一ネット使ってる? もしかして原始人の生活してるんじゃないの?」

「おい。俺を遠回しにゴリラみたいって言うな。……全然見た目もゴリラじゃないからな」

「そぉ〜んなこと、言ってないぞ☆」


 俺の幼馴染ながら可愛いと思うけど、それ以上に性格が終わってるとも思う。


 莉里は毎回のように俺のことを遠回しにいじってくる。その理由は知らないけど、俺の反応が好きなんだろう。一度無反応を決め込んだときは、泣きそうになったのを鮮明に覚えている。


 莉里。俺が反応してあげることに感謝するんだぞ。

 まあ、そんなこと真に受けないだろうから直接言わないけど。


「で、同年代にとんともない人がいるってどんな人なんだ? もしかしてスポーツ選手とか?」

「夜一がスポーツ興味ないことを知ってて、わざわざこんな話振らないよ」


 なんか、すごい焦らしてくる。


「そろそろどんな人なのか言ってもらっても?」

「……その同年代の人、社長なの」

「へぇー。それはすごいな」

「え。それだけ?」

「まあ、うん。なんというか、最近って高校生が社長になるっていうことたまに聞くし」


 莉理は肩をガクッと落とし、猫背に。「ふぅー……」と口から空気を吐き続け……。顔を下を向けてしまった。


 あからさまに不機嫌そうにしてきたじゃん。

 はあ。面倒だけど、これがまた莉理の可愛いとこなんだよな。

 莉里が不貞腐れてるところを見れるのは、幼馴染である俺の特権って考えるとちょっとうれしい。

 家に帰るまで見てたいけど、さすがにトボトボ隣で歩かれると可愛そう。

 

「す、すごーい。同年代の人が社長だっ、てぇー? そんなの考えられなぁーい」

「だよね! だよね! 気になるのなら教えてあげるけど、その人って高校一年生で社長って肩書きで話題になってるんだよね」

「へぇー。それで、その人ってなんの会社の社長なんだ?」

「…………」

 

 まさか何も知らないで話したのか?

 ……ありえる。莉里なら十分にありえる。

 多分、俺にこのことを話したいがあまり何も調べずに目に入った情報だけを伝えたんだ。

 ネットリテラシー……だったっけ? 莉里はそれが足りないな。


「なんの社長なのか知らなくても、その人が同年代で社長をしてるってのがすごいな」

「でしょでしょ? 私も試しに社長になってみようかな〜」

「そんなお金ないでしょ」

「え。社長になるのってお金かかるの?」


 純粋な目で質問されると、莉里の残念さが浮き彫りになってるなって感じる。 

 無知なのも可愛いぃ〜っていう人もいるだろうけど、莉里の場合は可愛いを通り越して当たり前になってる。


 小学生の頃からテストは学年上位なのに、俺からしたらバカ同然だ。

 ま、こんなこと本人に言ったら「ぷぷぷ。定期テスト学年150位の人がなんか言ってるぅ〜」とか言って煽ってくるから絶対言わないけど。


「色々お金が必要なんだよ。その人は自分のことも使って成功してるわけだし、莉里は社長になんてなれないよ」

「決めつけはよくないよくない。これだから定期テストで……」

「あーあー何も聞こえなぁーい」


 俺が想像してたのと違うことがきっかけになって定期テストのこといじってきたよ。

 ……というか、決めつけと定期テストなんて一切関係なくないか? 

 俺はいつ定期テストでいい点が取れないって決めつけて勉強していたのだろか。……まあ、どうせいい点を取るのは無理だろうなとは思ってるけど。


「まあでも、私もいつか社長になってみたいなあ〜」

「……それは莉里の下で働いてる人がかわいそう」

「なんで!?」



  ■■■



 莉里と別れて、あとは家に変えるだけになった。

 が、俺は今近所の公園に来ている。  

 大きな二人がけのベンチに、ドシッと一人で座るのはなんでか気持ちいい。

 公園のベンチで座ってしてることと言えば、誰も人がいない公園を眺めている。ただそれだけ。

 人と会話をしていて、得ることができないこの静けさ。

 やっぱり公園は人がいないのが一番……。


「え?」


 人、いるんだけど。

 滑り台の下にある土で遊べる場所に、スーツ姿の人が倒れてるんだけど。

 え。何あれ。

 頭から倒れてて顔が見えないけど、ボディーラインが女の人っぽい。

 助けたほうがいい……よな?




――――――

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