異世界転生、66人目の勇者様

@karakasa1111

第1話

キーンコーンカーンコーン。

チャイムの音と同時にガタガタと椅子の引かれる音が一斉に教室内を包む。

それに合わせるように自分も椅子を引けば日直のクラスメイトが「起立、礼」という。

いつも通りの日常だ。

刺激も、興奮も、快感も、何も無いいつも通りの日常。

人々はいつも通りの日常ということは平和でいいじゃないかと言うけれど俺はこの日常が嫌に退屈で狭苦しくて嫌だった。

もし、もしもの話だ。

突然異星人が地球を侵略しに来たり、隕石が落ちてきたり、

突然超能力的なものに目覚めたり、勇者の末裔だと言われ旅を強いられたり

そんなことが起これば俺の人生どれほど鮮やかになることだろうか。

そんな妄想は先生の「22ページ開いて」という声とページをめくる音で現実に戻される。


あぁ。今日も平凡で平和で退屈だ。


授業が終わって、彼女もおらず部活動にも入ってない俺は誰にも引き止められることも無く校門を出る。

少しおんぼろできぃきぃと耳障りな音を立てる自転車を漕いで坂道を登っていく。


踏切で足止めを食らったそんな時、ふとある考えが過った。

待っていても刺激的な日常は来てくれない。

ならば自分から飛び込みに行けばいいんじゃないだろうか。


いつもよく見る異世界転生漫画。


転生するにはトラックに引かれて死ねばいい。


そう思ってしまった。

思ってしまってからは早かった。


カンカンカン


と響く踏切。

遠くからごおごおとなる電車の走行音。


きっと、電車だろうが車だろうがそう変わるはずもない。


電車の走行音が徐々に近づいてくる。

俺は自転車が人の邪魔にならないように端に寄せて止めて、そして遮断管を持ち上げる。


電車からけたたましい警笛と目を焼くようなライトに焦がされながら俺の世界は暗転した。


自殺願望があった訳では無い。

ただ、この世界では無い世界に行きたかっただけだった。

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