第二シーズンスタート!

第一話 喫茶真津へようこそ

 喫茶店の扉が開くと、赤ん坊を抱えた女性が入ってきた。

 彼女は店内をどこか落ち着かない様子で見回しながら、どこか居心地の悪さを感じているようだ。

 赤ん坊はすやすやと眠っているが、女性の周囲には異様な雰囲気が漂っている。

 喫茶店のカウンターで待機していた所長の美帆子が彼女に駆け寄り、2階の女性相談所へと案内した。


「虹雨、さっきから店に近づいていたモヤみたいなの、あれ彼女のせいか?」

「ああ、ここに留まってるのよりも彼女が来店してから様子が変わった。周りに何かがまとわりついてる。街の低層霊が集まって、彼女のネガティブなエネルギーを吸い寄せているみたいだな」

「なんの相談かな……また嫁姑? それとも?」

「聞いたが深夜にメールが来たらしい。急遽所長が講演会前にねじ込んだみたいだから話聞くだけらしい」


 2人はウェイターとしての仕事をこなしながら、心のどこかで次の除霊案件の予感に胸を高鳴らせる。


 彼らがいつもみえている店内の風景は、普通の客たちには決してみえない異様な光景が広がっている。目にみえない霊たちが空中を漂い、時には低層霊が邪魔をしてくる。


「店員さん、水ください!」

「はい、ただいまお持ちします……」


 注文をこなしながらも、虹雨と由貴は気を抜けない。

 雑魚のような低層霊は無視したり、指を鳴らすだけで消えることが多いが、時には存在感のある中層霊や、強烈な怨念を持つ生霊が出現することもあるのだ。


「由貴、換気を強めるぞ」

「了解!」


 虹雨がスイッチを押すと、窓が全開になり、店内に溜まっていた霊たちが風に乗って外へと吸い出される。

 毎日数回、この作業をしなければならない。霊が見えない人々には何の変哲もない風景に見えるが、虹雨と由貴にとっては重要なルーチン作業なのだ。


 そして目にみえない人々はなんとなく体が軽くなったのか肩を回したり、憂鬱な顔だった人が元気を取り戻したり。

 何かしらの変化はあるようである。しかしそれは幽霊たちが去ったから、というのはわかってはいない。


 しばらくすると、美帆子からの呼び出しがかかり、虹雨が呼ばれた。心霊相談ではないかと美帆子が判断したら虹雨を呼ぶことになっている。

「やっぱそうやったんー、由貴あとは頼んだ」

「うん、あとでいく」


 しかしさっきまで声がかからなかったのにもかかわらず客から注文や要望が増るえてきた、由貴はしばらくは自分とマスターとその娘の渚でこのホールを仕切らなくてはいけないのだ。

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