ホラー小説家
連喜
第1話 俺について
俺は自他共に認める売れないホラー作家だ。今までコンテストで賞を受賞したこともなければ、ネット書籍や同人誌を売ったこともない。ただ、書いているということに満足しているだけなのだが、ほとんどの人はアマチュアで終わるのだから俺なんて到底無理、と最初から諦めている。作家志望者が実際にデビューする確率は、年間に1万2500分の1しかないというから、本当に狭き門だ。実際デビューしてる人は、自分がどれほどすごいかと改めて驚くかもしれない。こういうサイトでこんな話をするくらいだから、俺は空気が読めなくて友達もいない。
ただ、ホラー小説を読むことも書くことも大好きで、毎日のように何か書いている。俺はネタが浮かんだら書くんじゃなくて、取り敢えずテーマが浮かんだら書き始める。今これを書いていても、これから何を書くか決めていないのだ。そして、自然と話が浮かんできたら書き進め、オチはどうするかという段階になるとアイディアに行き詰ってしまう。そこからは、しばらく間を置いて書くか、パソコンの前で頭を捻る。すると、ポンと答えが出て来る。そして、俺の作品は出来上がっている。こんな風に手間を掛けずに書いている作品なんかに付き合わされたらたまらないと思う人もいるだろうけど、俺の場合、書くことが自己流の精神療法になっているのだ。
書くことで過去に対峙しそこに意味を見出すことができる。嫌な人間を許し忘れるようになる。小説を書くようになって過去の忌まわしい出来事がどんどん清算されて、浄化されて行くのを感じる。頭の中の支離滅裂な思考を整理できているし、驚くほどストレスを感じなくなっている。俺の精神疾患は発達障害なのだが、最近、自然に治ったのではと勘違いするほどだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます