ホラー小説家

連喜

第1話 俺について

 俺は自他共に認める売れないホラー作家だ。今までコンテストで賞を受賞したこともなければ、ネット書籍や同人誌を売ったこともない。ただ、書いているということに満足しているだけなのだが、ほとんどの人はアマチュアで終わるのだから俺なんて到底無理、と最初から諦めている。作家志望者が実際にデビューする確率は、年間に1万2500分の1しかないというから、本当に狭き門だ。実際デビューしてる人は、自分がどれほどすごいかと改めて驚くかもしれない。こういうサイトでこんな話をするくらいだから、俺は空気が読めなくて友達もいない。


 ただ、ホラー小説を読むことも書くことも大好きで、毎日のように何か書いている。俺はネタが浮かんだら書くんじゃなくて、取り敢えずテーマが浮かんだら書き始める。今これを書いていても、これから何を書くか決めていないのだ。そして、自然と話が浮かんできたら書き進め、オチはどうするかという段階になるとアイディアに行き詰ってしまう。そこからは、しばらく間を置いて書くか、パソコンの前で頭を捻る。すると、ポンと答えが出て来る。そして、俺の作品は出来上がっている。こんな風に手間を掛けずに書いている作品なんかに付き合わされたらたまらないと思う人もいるだろうけど、俺の場合、書くことが自己流の精神療法になっているのだ。


 書くことで過去に対峙しそこに意味を見出すことができる。嫌な人間を許し忘れるようになる。小説を書くようになって過去の忌まわしい出来事がどんどん清算されて、浄化されて行くのを感じる。頭の中の支離滅裂な思考を整理できているし、驚くほどストレスを感じなくなっている。俺の精神疾患は発達障害なのだが、最近、自然に治ったのではと勘違いするほどだ。





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