#私が悪役だったらありそうな設定をフォロワーさんが引用リツイートでイメージ3個言ってくれる、っていうのを小さな小説にしてみた!
冬寂ましろ
第1話 甘えて誘ってチューブをつなぎ合う悪役
銀色小鳩様からいただいた設定:
①目の下にクマをつくって「ねぇ……一緒に徹夜しようよ……」と甘えるように誘い、一緒に徹夜で仕事をするが、怪しいチューブでお互いの体をつないで、一緒に徹夜した相手のエナジーを吸い取って自分だけ生き延びる。相方はげっそりして枯れる。
https://twitter.com/rLYde3rus2cjqSd/status/1591053380319064070?s=20&t=UelNN10t8i9PsnPLmUIItw
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明日は学園祭だというのに、このちんちくりんな白衣女は……と思ったけれど、理科室でいろんなケーブルであちこち体を縛られ、半泣きな顔を見ていたら、怒るというより呆れかえった。
「これ、どうすんの?」
「どうしたらいいんでしょうか、先輩?」
「こっちが聞いているんだけど?」
「とりあえずほどいてくれます?」
「ああん? なんで私が。ああ、もう。わかったからそんな顔で見んな。仕方ないな……」
ましろの体にからまったケーブルやら何やらをほどこうとするが、芸術的にこんがらがってるせいで、なかなかほどけない。私はサジを投げたように言う。
「ねえ。このまま、ましろを展示したほうが早いんじゃないの?」
「え、嫌ですよ」
「でもさ……。あと12時間ぐらいでしょ? もうあきらめなよ。何を展示するんだか、わからないけどさ」
「あきらめられません。私はやり遂げるんです」
「おい、ばか、急に立つなって!」
立ったましろにからんだケーブルがひっぱられる。それは私の足元にもある。結果、私は足をすくわれて倒れた。尻餅をついたましろにおおいかぶさるように。
私はましろの顔を間近に見ながらたずねた。
「ましろ、大丈夫?」
「ねぇ……、一緒に徹夜しようよ……」
ましろの頭をぺちりと叩く。
「いったーい」
「そんな甘え顔で迫ってもダメ」
「ええ、どんな顔をして迫ればよいです?」
「ちょ、なにそれ。あはは、手伝うから、その変顔、止めてよ」
「やったー! 先輩大好きです!」
「こら、抱きつくなって」
「うにゃあ、ぐるぐるぐー」
「顔をなすりつけんな、お前は猫か!」
それから5時間ぐらいふたりでケーブルと格闘していた。星を映していた空はうっすらと明るくなり、からんだケーブルをよくわからない銀色の円筒形につなげていたときだった。
「先輩、あと少しで、出来上がりそうですけど……」
「よかった。少し仮眠できるな」
「あの、先輩」
「なに?」
「私達が出会ったときのことを覚えています?」
私は手を止める。
「確か小学校のとき……。あれ、最初どうだったっけ。確かどこかで会っているんだよな……。中学にはもう一緒だったし……、あれ……、なんでだろ。はっきりとしない……」
混乱していた。確かに会った感覚があるのに、それをつかもうとしてもつかめない。暑くもないのに汗が噴き出る。
「良かった。まだプロテクションは効いているんですね」
「プロテクション?」
ましろが後ろで、何かのスイッチをパチリと押した。
何かの機械がぶーんという音を加速させていく。
その音が私の頭をはっきりさせていく。
私はこれを知っている……。
「アルデバランのアルファタウリ星系で見たじゃないですか、一緒にこれを」
「……なぜだ。なぜ私がこれをわかる……」
「思い出せましたね」
「ああ……。おまえは時空を渡る魔女……。そうだ……。なぜ私はおまえなんかと……」
「私がそうしたかったからですよ。大好きなんです、先輩のことが」
「この人類の敵が!」
「でも、あなたの恋人ですよ?」
ケーブルが脈動しはじめた。吸い込んだものをどこかへと送っていく。
ましろは微笑みながら赤いチューブの端を私に手渡した。
「さあ、これを首に」
「これは……、もしかして〈天秤〉……」
「あのとき、先輩は勝ったんです。おかげで私の本体はまだアルデバランの光の中に閉じ込められています」
「また、やるのか?」
「そうですよ。私は青いチューブ、先輩は赤いチューブ。勝てば生き残る。負けたら魂魄を吸われて星に縛られる。彼らは本当に面白い遊びを思いつきますね」
「おまえの首を絞めたほうが早いだろうが!」
手を伸ばす。あれを生かしておいてはいけない。私のお母さんだってあれに……。
ましろは迫る私を面白そうに見つめていた。
あともう少しで触れるというときにケーブルがうごめいた。とたんにそれが何十本も体を這いずり回り、私を縛り上げる。
身をよじって動こうとするけど、からんだケーブルは外れない。
「先輩に拒否権はありません。私はあなたのことが大好きで、そして私を負かした人なんですから」
「……おまえは本当にどうしようもないな」
「ええ。そんなものです。私は人類の敵ですから。さあ、首元にこれをつけてあげます」
「止めろ!」
身動きできない。狂いそうになりながら暴れていたら、首の後ろにひんやりとした感触が伝わった。とたんに何かが吸われていく感じがした。
「さあ、私もつけますね。んっ……。いつも、この感触はなれませんね」
「いつも……?」
「ええ、何度もこれを繰り返しているんです。戦績は3091勝2067敗で、まだ先輩が勝っていますよ」
「待て、そんな記憶は……」
「私しか記憶していないはずです。私だけが中学時代に戻って、やり直していますから」
「な……。タイムリープ……」
「先輩が言ってたじゃないですか、私は時空を渡るって」
ましろが私に抱きつく。私に絡んでいるケーブルがぎゅっと締まる。私の耳元に甘い声でましろがささやく。
「さあ、賭けの時間ですよ」
薄れていく。吸われていく。私はがくんと落ちた。
ふと気が付いて目を開ける。開けづらいのを無理矢理開ける。
私はまだ生きている。勝ったのか……。
「あ、先輩、起きちゃいましたか」
徹夜明けしたとは思えないほど、元気な声でましろは私に声をかけた。心なしか顔がつやつやとしている。
「もう先輩の体は枯れ木みたくなってます。ぽきりとできるぐらい。やってみますね。よいしょっと。ほら、見えますか? 先輩の右腕です。ああ、喋れないと思いますよ。声帯も枯れてますから」
私の前で、ましろがくるりと踊るように回る。
「今回は私の勝ちでしたけど、まだまだ勝ち足りません。私はしつこいんです。勝ち逃げなんて許しません」
手を振る彼女を私は必死につかもうとするが、何も動かせなかった。
彼女はとてもうれしそうに、私を絶望させるように、目を細めて微笑みながら言う。
「では、また中学1年の春にまたお会いしますね、先輩」
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