「あんたもう用済みw」と彼女にフラれてる所を生配信したら翌日から悲劇のヒロインになった。
棘 瑞貴
第1話 用済みな僕
「あんたもう用済みw」
僕に悪意しか無い笑みでそう言い放つのは僕が付き合っている女──
いや、付き合っていたと言うべきか。
僕達が向かい合っているのは放課後の誰も居ない教室。
高校2年の僕達が青春を謳歌する極めて神聖なる場所だ。
そんな場所で……言うまでも無い事だろうが、見事にフラれている真っ最中。
聖はギャルっぽい見た目で派手に生足を晒す僕とは正反対の種族の人間だ。
初めての彼女で、向こうから告白してきてくれたんだけどな。
3ヶ月程の短い付き合いの中、どうやら僕は彼女の心を繋ぎ止めておくことが出来なかったようだ。
……思いの外ショックだな。
そうだ。
どうせもう話さなくなるんだし、最後に用済みの意味だけ聞いておこう。
「……聖、用済みって言うのは一体……?」
「はぁ?わっかんないの?あたしさぁー男と付き合った事とか無かったし、男って言うのがどんなもんなのか知りたかったの。間違っても本命の
つまりこう言う事か。
聖は俺を実験台にしたんだ。
入試を控える僕達学生が模試を受けるように。
学年1のイケメンと付き合って粗相をしないように。
……そっか、そうだったんだな。
結構本気で好きだったんだけどなぁ……
この先一緒に進学して、ずっと楽しく暮らせたらとかキモい妄想までしてたのに。
……まぁしょうがない、か。
僕みたいな陰キャラがクラスで1,2を争うくらいの美人と付き合えただけでも夢みたいな話だったんだ。
ってかなんで気付かなかったんだろ。
どう考えても嘘告じゃないか。
全然釣り合ってないしな僕達。
聖は垢抜けていて華があって、クラスでも一目置かれる人気者。
片や僕は髪も長くボサボサで、見た目で誇れるものなんか一つもない。
「いやーでも
「……」
伏見、ね。
付き合ってんのに名前ですら呼んで貰えなかったんだよな。マジピエロじゃん僕。
「あ、でもあんたとお試しでも付き合ってたとか知られたくないしマジ黙ってなよ?言ったら殺すから」
……これが嘘でも付き合ってた相手に対する言い種かよ。
確かに僕らが付き合ってる事は内緒にしようと言われ、校内でも喋らないようにしていた。
全てはこれが紛い物の関係だったから。
「んじゃもうあたしらの関係もここまでで!あ、付きまとうとか止めてよね?そだ、あんた髪でも切れば?ずっと鬱陶しかったんだよね。あと名前呼びももう止めてよね、晃史君に勘違いされちゃうし!!んじゃね~♡」
「……」
言いたい事を一方的に告げ、短いスカートを翻して聖──いや、天野は教室を後にした。
階段を軽やかに降りて行く音が聞こえ、やがてそれも消える。
そして僕は僕以外の誰の気配も無くなった教室の教壇へ向かう。
そこには立て掛けると同時に、天野からは見えないようにセットしていたスマホが存在している。
僕はスマホを手に取り、画面の中央下にある停止ボタンを押した。
それは配信を停めるボタン。つい先ほどまでの光景を。
実は今日僕がフラれる事は分かっていたんだ。
……まさかあんな酷いフラれ方をするとは思わなかったけど。
1週間程前だったか、天野が
だからせめてささやかな仕返しをと思って、僕に天野の本心を教えてくれたあいつにだけ見えるよう生配信していたんだ。
別に他の誰にも知られる事はない。
ただその人物にだけ今日の事を知って貰えたらそれで良い。
それだけで僕の矮小な自尊心が保たれるから。
「……悪いな天野。3ヶ月間楽しかったよ」
僕はスマホをポケットに入れて教室を後にした。
少し癪だが、この整いの無い前髪を切ってみるかと弄りながら──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます