第2話 関ケ原にて天下人候補死す

関ヶ原の戦いせきがはらのたたかい

西暦1600年10月21日。

岐阜県不破郡関ケ原町をバトルフィールドとして行われた戦国最終戦争(大阪冬の陣はどうなんだろう?)。

 深緑の雑草が生い茂る大草原。そこには東西に赤の軍旗の陣地と青の軍旗の陣地で分かれていた。彼らは睨み合っている。

  歩兵、騎馬隊、鉄砲隊、大砲隊など両軍が充足された軍備を備えている。それは現政権の内乱である。

 東側を陣取る青い軍旗の陣地では軍議が開かれていた。日本の関東、東北、北陸、北海道の大名たちで構成される青龍軍せいりゅうぐん。ここの総大将は徳川家康江とくがわいえやすえ、和服型のブリーツスカートに上半身は青い甲冑と兜を装備している。

【狸姫】「豊臣秀吉太閤殿下が幕府創設のための戦いがここにあり!! 皆のどもよくぞ集まってくれたじゃない!!」

 徳川家康江が東日本の各大名を激励する。豊臣秀吉は実は長生きしていた。朝鮮出兵後、高齢であっても盛況で政務に勤しみ、豊臣幕府創設を宮中から認可を受けた。政庁舎の遷都を考えた時に政権内部で意見が分かれた。それが徳川家康江が率いる青龍軍と西日本各地の大名で構成される赤虎軍せっこぐんである。この軍は大阪城を幕府の政庁舎としてそのまま維持するべきだという思想である。徳川家康江に副官が報告してくる。副官は鬼を象った兜り、軍配を持った大名が近づいてくる。名を武田信玄2世という。

総大将あねご!! 嬉しい知らせですぞ。異国大名が加勢してくれるそうだ」

 武田信玄2世は軍議のところに来るように招く。そこに見たことない少年が入ってきた。


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 現代。時間帯は夜7時。

 既に辺りは暗くなっている。

 埼玉県東水田郡江戸津川村ひがしすいでんぐんえどつがわむら宿駅点しゅくえきてん。国府道と鎌倉街道が交差している地点である。江戸津川が複数の支流に分かれる分岐地点である。それら支流の河川には橋が設置されている。その中で古い橋が一か所あった。そこに青森謙信あおもりけんのぶと徳川家康江が佇んでいる。

「(;^ω^)狸さん……。この橋に来てどういうわけやんでい?」

【狸姫】「ここから天の川を伝い、戦国時代へと行くんじゃない」

 どうみても支流の河川に跨る橋だ。この宿駅点では一番古く建設された橋のようだ。

「(;^ω^)どうやってなんでい? ここを渡れば、江戸津川村の東部を占める千葉隣ちばどなり方面に行くでい」

【狸姫】「お前さんはというものは知っておるのか?」

 全国各地の川に架けられた管理者がはっきりしない橋の数が9697か所ある。

許可を得ずに勝手に架けられた。浸水被害や事故が実際に起きていて、安全性を不安視する反面、地元の人たちの生活に欠かせないものもある。

【狸姫】「この勝手橋は小生が建設したものだ。戦国乱世の世へ帰路につくためにな」

 青森謙信あおもりけんのぶは少女が実体のある亡霊だというのに橋を建設したのだ。どこからそんなお金があったのか、どういう手段を講じたのかは気にはなるが、徳川家康江は橋を渡っていく。ついつい何も気にせず後を追って橋に踏み入れる。

 その時、一瞬であるが悪寒を感じた。すると周囲の水田の田園風景が消失していた。岩盤が大空や周囲を覆っている。まるで真っ暗な鍾乳洞だ。そしてさらに驚くことがある。

 勝手橋の下に流れるのは真っ黒な川だ。それは闇によるものだろう。真っ黒な川で光の玉が魚群のように大軍を形成し、その川を遊泳している。

【狸姫】「天の川は魂の流れというものなの。ここに特定の時代に直通させているのがこの勝手橋。天の川に落ちたらダメじゃない。肉体を失った人魂は人肉を好むの。受肉し人間界で復活したいから……」

「(;^ω^)怖いでい……」

 とにかく青森謙信あおもりけんのぶは徳川家康江の後ろを追って勝手橋を渡る。橋を渡り切った時に一瞬であるが温感を感じた。

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 武田信玄2世が招いた異国の少年は、黒い和服を纏っている。煙管キセルをくわえてお下げ頭の青い髪。青龍軍せいりゅうぐんの女御大将は名を問うた。

「(^_-)-☆俺は福内鬼外ふくうちきがい。旧称は平賀源内ひらがげんないと呼ばれてましたでい。異国からこの倭国に来日してからは名をこの倭国の公用語で改名し、関東の江戸津川えどつかわにて異国の勉学について寺子屋を切り盛りしておりまする」

 江戸時代の発明家の偉人のコスプレをした青森謙信あおもりけんのぶがそこに佇んでいる。福内鬼外ふくうちきがいと名乗る関東ド田舎の少年は自分の肩に乗っている子狸こだぬきのメスに小声で問うた。

「(; ・`д・´)目の前にいる少女。どう見ても狸さんじゃねえのかでい?」

【子狸】「本人であるじゃない♪ 但し、史上の当人。天使である小生は別の生き物にならないといけないじゃない。とりあえず貴様には「権威」、「武芸」、「知恵」の三種の神器スリーサイズを与えてあげるじゃない。日本史で名を馳せた偉人の情報を付与するということよ。まずはその中で「知恵」じゃない。知恵は身なりからまず整える。己に選択肢に与えた。それが江戸時代の狂気の発明家マッドサイエンティストたる平賀源内」

【狸姫】「福内鬼外ふくうちきがい(※青森謙信あおもりけんのぶ)!! 何をブツブツと肩の狸と喋っておるじゃない!!! 何か妬いてしまうぞ!!! この関ケ原の血で焼いてあげようかじゃない!!!」

 歴史上に生きる徳川家康江は立ち上がり、青森謙信あおもりけんのぶの首元の和服の襟を引っ張って自分の顔に引き寄せる。

「(;^ω^) 総大将あねご!!! お戯れを!!!」

【狸姫】「小生は豊臣幕府創設のために人生を賭しているじゃない。小生の前で無礼なことをしたら処すじゃない!!! 斬首はいいじゃない!!!」

 青森謙信あおもりけんのぶは何度も頭を下げてようやく許してもらう。目の前にいる徳川家康江は初対面であり、肩に腕を組んでいる子狸は故人徳川家康江の亡霊である。なんとも微妙な心境になった。

 徳川家康江麾下の戦国武将たちが勢ぞろいしたので副官の武田信玄2世は軍配を振るう。

「我にも異国の大名が参戦してくれた。これより異国の下僕となった西軍どもを完膚なきまで叩きのめしてくれようぞ!!!」

〓〓 一同 〓〓〓

「おおおおお!!!」

「おおおおお!!!」

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 武将たちが腕を天へと突き出して自分の決意を表明する。

 こうして戦国最大の合戦が開かれた。

 関ケ原の地に西方から赤い甲冑と赤い虎を模した兜をかぶる武士たちが10万人近く押し寄せてくる。

 その中心に関ケ原の東方を睨みつける武将がいる。懐から何かを取り出した。時代錯誤のマイクである。そしてその武将は何故かサングラスをかけていた。

「お戦場はウッキウキワックん♪ あちらもこちらもどちらも良い毛利♪  お戦場はウッキウキワックん♪ あちらもこちらもどちらも良い毛利♪」

「さすがは毛利輝元てもりさんだ♪ 異国づけになって異国文化に染まっている」

 騎乗しながら巧に馬を操り、自作自演の歌をくちずさむ毛利輝元てもりに横から賞賛する騎乗中のマネージャー武将がいた。長身痩躯、おでこが広い。

石田三成みっつん♪ 秀吉公は大阪の顔でいいても?」

 変な問いかけをしてきたので石田三成みっつんは両手でサムズアップをして答える。手綱を手放しても愛馬は気にせず自動運転走行を続ける。

「良いても~♪」

「徳川家康江ちゃんさ~~。なんかイエスイエスイエェ~~スマンなんか感じがして気に入らないテモ♪ ど~せ、秀吉公のハートを射止めちゃったから余裕のよっちゃん何でしょ?」

「良いても~♪」

 石田三成みっつんは異国との交易で手に入れた拡声器を取り出して全軍に伝える。

赤虎軍せっこぐんの皆さ~~ん♪ 大阪城は倭国の首都♪ 倭国の中心♪ 邪馬台国の所在地は大阪城♪ と数々の週刊誌を手掛ける週刊「処して良いても」の編集長武将たる毛利輝元てもりさんのお考えをどう思いますか?」

〓〓 一同 〓〓〓

「良いても~♪」

「良いても~♪」

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 赤い虎の甲冑を来た将兵たちは手を振り翳し轟く声で応答する。

「秀吉公からラブコールを受けまくってる徳川の姫狸ひめだぬきが発行する月刊「江戸にして良いYES」。これの虜にされちゃった東国の武将たちはどう思いますか?」

〓〓 一同 〓〓〓

「処して良いても~♪」

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

毛利輝元てもりさん♪ 西国の大名たちや兵たちは毛利輝元てもりのお考えに賛同しださってます♪ だから徳川勢を……処して?……」

「良いてもぉおおお♥」

〓〓 一同 〓〓〓

「良いても~♪」

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 赤虎軍せっこぐんの統率は強固なものだった。織田信長の本能寺の変のとき、中国大返しで大勝利を収めてから毛利氏は秀吉にラブ注入したいくらい崇敬した。そこから週刊「処して良いても」という書物を発行。いつのまにか全国各地の武将たちの心を鷲掴みにし、豊臣政権を築くにまで至ったという。

 他の武将が前方に青い甲冑を纏った軍勢の姿を発見すると即座に石田三成みっつんに報告する。

毛利輝元てもりさん!! 関東に幕府を建立しようと企む者たちの軍勢が見えましたぁあああ!!!!」

全軍みんなぁあああ!! あいつらを処して~~?」

〓〓 一同 〓〓〓

「良いても~♪」

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 赤虎軍せっこぐんは各部隊に分かれて前方の敵勢を取り囲もうとする。それに容易く包囲殲滅される青龍軍ではない。武田信玄2世も軍配を振るって大声を自軍全体に轟かせる。

「東が新たなニューウェーブの発信源になろうというのに倭国西方特有の懐古主義にとらわれるオールドパターンどもの良いようにされるか!!  大きな槍の陣形で敵軍を崩せ!!!」

 武田信玄2世はこの戦のために持久力と走行に我慢強いマッチョなお馬さんのトレーニングプランを考案し、育てまくった。そこに異国から取り寄せた騎士甲冑を模倣した特別製武士甲冑を纏った騎手を乗せる。そして硬すぎる槍を持たせる。それによる棒状の陣形を組ませた特別な騎馬隊を赤虎軍せっこぐんの本陣へと突撃敢行させる。

「馬鹿め!!! 鉄砲隊!!! あいつらを火縄銃撃掃討せよ!!!」

「良いても!!!」

 石田三成みっつんが軍配を振るい、赤い虎の甲冑を纏う鉄砲隊が火縄銃を構えて銃撃を浴びせる。しかし弾丸はその騎馬隊の鎧を貫かず跳ね返る。それに石田三成みっつんは虚を食らい、本陣に突撃される。しかし石田三成みっつんは嘲笑を浮かべる。

「残念~~♪ 影武者さん♪ 毛利輝元てもりさんに扮装できた気持ちはどうかな?」

「良いても♪」

 強固な騎馬隊は一点突破で本陣に突撃し、総大将の首を刎ね飛ばしたと思った。しかしそれは石田三成みっつんの策略だった。

「ご苦労だった純粋な毛利輝元てもりファンの武将さん♪ こういうパターンを想定して既に青龍軍のお尻には手を突っ込ませてます。奥歯をガタガタを言わせて~~~?」

 石田三成みっつんは敵軍の方向に拡声器で問いかけた。武田信玄2世は己の策略が失策だったと感じた時、一点突破の強固な騎馬隊は赤虎軍せっこぐんの挟撃を受けて全滅する。

「良いても~♪」

 別動隊が既に青龍軍本陣の背後へと先回りしていた。単純な陽動作戦にまんまと引っかかってしまったのだ。

 本陣つまり後衛の守りが薄い。しかも別動隊の将兵たちは今殲滅されている青龍軍の強固な騎馬隊と同じレベルと装備である。陣頭指揮は毛利輝元てもりがとっていた。

「終わりだ!!! 徳川の姫狸!!! お前をひっ捕らえていっぱいいっぱい俺の逞しさを享受してやろう。お前の喜ぶご高説をさぞかし聞いてみたいと思うぞ!!!  皆さん、それでいいかな?」

〓〓 一同 〓〓〓

「良いても~♪」

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 別動隊が青龍軍の後方を猛烈な速度で進軍する。だが、青龍軍もそういう危機を鑑み、切り札が存在した。それは抜刀して身構える歩兵部隊であった。馬にも跨らず、鉄砲も持たず、ましてや攻城兵器もない。それを強固さに優れた馬と甲冑を揃えた騎馬隊にどう勝つかは策は予測できない。赤虎軍の兵たちは笑う。

「冗談か? 玉砕戦のつもりか?」

「我らは刀鍛冶を古代より重ねてきた家系の当主、村正津軽太むらまさつがるた!!! 鉄砲の弾丸を跳ね返す鎧ならば、を用意すれば良い!!! かかれい!!!」

 村正津軽太むらまさつがるたという刀鍛冶を生業とする日本本州最北端に小さい領土を持つド田舎武将が号令を発す。それに兵たちが続き、赤虎軍の別動隊へ特攻する。

 その刀の一閃が騎兵を馬ごと切断する。それに騎馬隊たちは愕然とした。

「な、何だ!!!」

「私は異国の鋳造法を学び、溶刀ヒートうを発明した」

 超高温の放熱で焼き切る。それが青龍軍の秘策中の秘策であった。溶刀ヒートうを振り翳す村正津軽太むらまさつがるた部隊の歩兵たちは次々と騎馬隊を切り捨てていく。それには毛利輝元てもりは部隊を後退させる。だが冷や汗をかくも毛利輝元てもりは嘲る。

「だが、密偵が既に本陣に忍び込んだ!!! これで青龍軍は首を失って終わりぞ!!!」

 高笑いしながら毛利輝元てもりの残存する騎馬隊は撤退する。

 本陣内部、合戦の動向を見守る総大将が腕を組んでどのようにしてこの関ケ原の大戦を勝つか思案していると、兵が1人、報告しにきた。

総大将あねご!!! 奇襲を受けましたが、村正津軽太むらまさつがるたの伏兵部隊が直ちに応戦して赤虎軍の別動隊を退けました!!!」

【狸姫】「良かったじゃない!!! ナイスね!!! 村正くんにはご褒美をたんまりあげないとね♪ 君もそう思うんじゃない?」

「良いとも~~♪」

 報告をしにきた兵が小太刀を取り出して徳川家康江に斬りかかる。徳川家康江は悪露どいた。だが、どこからか石礫が飛んできて小太刀を握る兵の手に直撃する。兵は小太刀を落とす。

「何やつ!!」

「(; ・`д・´)どんなけ警戒網が強くてもあの手やこの手で密偵を送り込んでくるでい? だから俺は伏兵として狸さんの監視をしていただけでい」

 【狸姫】「福内鬼外ふくうちきがい(※青森謙信あおもりけんのぶ)!! そなたの言う通りだったじゃない!!! こやつを直ちにひっ捕らえてやろう!!! 出会え!!! 出会え!!!」

 徳川家康江の号令に警備の兵たちが急行してくる。だが、駆けつけてきた直後、次々と身体の一部がえぐり取られて即死していく。まるで強力な弾丸で穿たれたようだった。

【狸姫】「な!!! これはどういうことじゃない!!!」

 兵たちの死体から輝く石が浮上する。宙に浮かんでいるその石は宝石だった。その宝石には血のりがついていた。どうやら宝石によって人体を貫通させられたようだ。

 死体を穿った宝石は全て赤虎軍の密偵のところに集まる。密偵は冷笑を浮かべている。

「拙者は赤虎軍の武将鬼島津おにしまづ!!! 異国伝来の新兵器をマスターしたでござる♪」

 赤虎軍で暗殺担当の武将が扮装を解く。赤い虎を模した甲冑姿。彼の前に小男が現れる。その小男は子供ような背丈であり、全身が黄色い体毛で覆われている。キツネのような尻尾を生やして両目は宝石を埋め込んでいる。額にも宝石が埋め込んである。兎のような長い耳を生やしている。鬼島津は片腕に腕輪をしていた。その腕輪を見せつける。

「火縄銃以上の新兵器!!!幻獣を興じる小鬼の腕飾りゴブリング!!! 拙者のは宝石を自由自在に飛行させる特性を持ったカーバンクルゴブリン!!!」

「ジィーース!!!!」

 鬼島津が操っている異形はゲームや漫画、アニメに出てくるようなモンスターのたぐいに似すぎている。

「村正津軽太部隊ご自慢の溶刀ヒートうがあろうともだ。この宝石で死角から急所を狙撃してやれば、一貫の終わりよう!!! さぁ覚悟せよ!!!」

「鬼島津!!! てやんでい!!! お前の相手は俺でい!!!」

 徳川家康江の前に青森謙信あおもりけんのぶが立ちはだかる。そして青森謙信あおもりけんのぶは袖をめくり、腕にはめている腕輪を見せる。

「俺は青龍軍の異国大名、福内鬼外ふくうちきがい!!! 幻獣を興じる小鬼の腕飾りゴブリングの使い手でい!!!」

 実は初めて使う。日本史に記されていないが、戦国時代の武将たちを最も恐れさせた異国伝来の兵器こそが幻獣を興じる小鬼の腕飾りゴブリングである。火縄銃は模造できたが、幻獣を興じる小鬼の腕飾りゴブリングは模造できなかった。資金に余裕のある武将は個人用に幻獣を興じる小鬼の腕飾りゴブリングを異国から買ったのだ。

 肩にのっている子狸状態の徳川家康江から授かったものである。亡霊の徳川家康江から受けた説明通りに青森謙信あおもりけんのぶは戦を始める。

小鬼は酒池肉林が好きゴブリンエロパートぃいいいいい!!!!」

 その台詞は腕輪からゴブリンを召喚するものであるが、その台詞に特に意味はない。幻獣を興じる小鬼の腕飾りゴブリングを発明した異国の学者の思い付きらしい。腕輪から木こりのような恰好をしたゴブリンが現れる。尖った耳、立派な眉毛と無精髭を生やしている。ハンマーとスパナを両手に持っている。

「ドワーフゴブリン!!!」

 それを見て鬼島津は高笑いをする。

「バカか? ドワーフっていえば、剣や槍とかを鍛冶で作っているイメージが強いだろ? ま、戦闘もするでござるが♪ なら、勝機はあったな!! カーバンクルゴブリン。宝石であいつを射殺しろ!!!」

「ずぃいいいいいす!!!」

 カーバンクルゴブリンは数個の宝石を飛翔させて青森謙信あおもりけんのぶを標的にして被弾させようとする。青森謙信あおもりけんのぶはどうやって対処していいか分からない。

「てやんでい!!! ドワーフの旦那!!! なんか斧とかないんでい? これじゃああ肉体をえぐられて即死でい!!!」

「………ずぃす……」

 カーバンクルゴブリンと異なりドワーフゴブリンは寡黙である。それはそれでドワーフゴブリンの個性でいいのだが、弾丸と化した数個の宝石が飛来してきた。青森謙信あおもりけんのぶは思わず身を庇う。

「危ない!!!」

「………ずぃす……」

 刹那。青森謙信あおもりけんのぶは自身の肉体に何も着弾していないことに気づく。よく見ると、ドワーフゴブリンが全ての宝石を掴み取っていた。凄い早業である。

「ええい!!! カーバンクルゴブリン!!! 次だ!!!」

「ずぃいいいす!!!!」

 カーバンクルゴブリンは無数の宝石の礫を発生させて青森謙信あおもりけんのぶに再度、狙う。青森謙信あおもりけんのぶも身を庇おうとする。すると、ドワーフゴブリンが青森謙信あおもりけんのぶに何かを手渡してきた。それは銃の形をした宝石だった。

「( ゚Д゚)へ? これって宝石でできた拳銃?」

 ドワーフゴブリンは数発の宝石でできた弾丸を渡してくる。そして速くその宝石の弾丸を装填して速射しろと表情と首の仕草でボディランゲージ方式に伝えてきたので青森謙信あおもりけんのぶは即座に宝石の拳銃にその宝石の弾丸を装填して引き金を引く。

「遅い!!! こちらの方が攻撃が先にした」

「ずぃすうううう!!!!」

 宝石の拳銃から放たれた宝石の銃弾は、目の前から飛来してくる無数の宝石の大軍より猛スピードに速かった。カーバンクルゴブリンは眉間を狙撃されて即死する。それと同時に飛んできた宝石の大軍は青森謙信あおもりけんのぶの方向とは別方向に飛んでいき、陣地の天幕へと命中する。

「ええええええええ!!!!」

 鬼島津は愕然とする。だが、2発目の宝石の銃弾が自分の頭部に迫っていると気づかず、側頭部に命中して密偵としての任務に失敗する。

「(;^ω^)お前の特性は……どんな素材でも瞬時に武器を作るこでい?」

「……ずぃす……」

 ドワーフゴブリンは腕を組んで寡黙に首肯する。鬼島津は幻獣を興じる小鬼の腕飾りゴブリングを戦わせるが、青森謙信あおもりけんのぶ幻獣を興じる小鬼の腕飾りゴブリングは使い手に戦わせるタイプのようだ。代わりに無尽蔵の武器を作れる特性、それがドワーフゴブリンの特長である。

 とりあえず徳川家康江を暗殺から救ったので、これで歴史は変化するだろうと思って徳川家康江の方向を振り向く。

「おおい、総大将あねご!! ――え!!!!」

 そこには斬られて突っ伏している徳川家康江がいた。驚いた青森謙信あおもりけんのぶは急いで駆け寄りを身を起こす。徳川家康江は吐血する。

「Σ( ̄□ ̄|||)どうした!!! 誰がやった!!!」

 虫の息であるがなんとか喋れる。

【狸姫】「……別の密偵がいた……。鬼島津は……陽動……。あやつは……朝鮮出兵の……」

 と言って息を引き取った。

「(; ・`д・´)姫狸!!! これはお前が殺されたときと同じでい?」

 肩に乗っかっている子狸に問う。子狸は眉間に皺を寄せながら答える。

【狸姫】「鬼島津のはず……。小生の仇討ちは……村正津軽太がとるんじゃ……。逃げる鬼島津を追討し首級をあげる。その功績から青龍軍の総大将に出世するじゃない」

 徳川家康江を救えなかったとしても犯人を探さないといけない。とにかく本陣内部を探索する。本陣内部の兵たちは総大将が暗殺されたのを知り大慌てである。本陣から戦場に足を運ぶと、既に青龍郡は赤虎軍の大半を殲滅して優勢にたっていた。女総大将を抹殺した犯人はどこに見当たらない。

「(;´Д`)すまんでい……暗殺を……防げなかった……」

【狸姫】「仕方ないじゃない……。とりあえず元の時代に戻ろうじゃない。別の日に……犯人を捜そうじゃない……。歴史を遡って朝鮮出兵のときね……」

 徳川家康江の言う通りだ。犯人の手掛かりは今しがた暗殺された徳川家康江の死に際のヒント「朝鮮出兵」に隠されているからだ。




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