第3章

3-1.地獄

3-1.地獄


「まず私の武器を置くわ」

ルチアはホルスターの銃を示して、ゆっくりと引き抜き、そしてテーブルに置いた。

二人は油断なくその様子を見守っていたが、ルチアが銃を置くと若干安堵したようだった。

「二人とも、得物を置いて」

『ふぁーい』

『アイサー』

JとMは素直に武器を置いた。

彼女らにしてみれば武器があろうとなかろうと絶対的な優位は揺るがない。

不死の存在なのだ。


「オーケー、とりあえず武器は預からせてもらう」

白人が銃と刃物を取る。

その間も黒人が狙いをつけている。

「大丈夫だ、入ってもいいぞ」

白人がドアの外に声を掛けると、


ひゅー


口笛を吹きながら、ビジネスマン風の男、

無言で、アジア系の男が入ってきた。

二人とも拳銃で武装している。


「こりゃなんの仮装だ、ビル?」

 ビジネスマン風の男がニヤけた笑いを浮かべる。

「女性三人もいるとはね」

『四人だよーん』

フラニーがビジネスマン風の男の横に立って、あかんべーをして見せた。


「ビル、この人たちは?」

アジア系の男が聞いた。

「派遣されてきたと言ってる」

白人、ビルは答えた。

「事態の収束のために来たらしい」

「ほー、ならすぐにでもお願いしたいね」

ビジネスマン風の男は冗談っぽく言う。

オーバーアクションなヤツである。


「それが今すぐにはムリなのよ」

ルチアは説明した。


「ふーん」

ビルは半信半疑といった顔。

「デタラメだ」

黒人、RDは呟いた。


「そうだな、信用していいようには見えないかな」

ビジネスマン風の男、ボーマンは軽い感じで言う。

「なんていうか、不気味だ」


ルチアはスラッシャーズをチラと見やったが、特に気分を害した様子はない。

言われなれてるのだろう。


「でもこの人たちを監視し続けるのは骨だよ」

アジア系の男、ケンが言った。

「できれば関わりたくないけど」

「だが、野放しにもできんしなぁ…」

ビルは優柔不断な男らしかった。


「ではこうしましょう」

ルチアは提案した。

「私たちは、あなた方が救出されるまで保護する」


「無償でかい?」

ボーマンが問う。


「いい質問です」

ルチアは一呼吸おいて、答える。

「必要があれば手伝ってもらいます」


「そうきたか」

ボーマンはチラリと仲間達を見る。


「この際だ、救かるのならぜひお願いしたいが…」

ビルはその視線に気付いて仲間達を見回した。

「異論のあるものは?」


一瞬の静寂。


「気に入らんが、どの道、ここは地獄だ」

ポツリとRDが呟く。

「他に方法もないからな」

「じゃ、決まりだな」

ビルの言葉に、ルチアはうなずいた。

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