僕を忘れた君との恋の小夜曲

フィリア

プロローグ

 君との出会い。そして別れ

 僕は、君が好きだった。心の底から愛していた。この世界の何もかもよりも、君が愛おしかった。


 僕は人生に絶望していた。父親は病死で母親は過労死。生活費に困っていた僕は、アルバイトを掛け持ちしながら、妹と二人でギリギリな生活を送っていた。当然満足のいく食事はできなかったし、僕の高校と妹の中学校二人分の授業料を払うことも簡単には出来なかった。親の遺産は家のローンを返済するのに使ってしまい、僕たちは貧困な生活を絶えず送っていた。


 だからなのだろう。妹は、この生活に耐えかね、家から出ていった。出ていく時に、こんな家に生まれなければよかったと言う捨て台詞を吐いてから。


 妹が出ていき、生活にすこし余裕ができた。良くないとは分かりつつも、妹が出ていったことに少しだけありがたいと感じてしまった。僕は妹と仲が全く良くなかったため、少し寂しかったが、あまりショックというのはなかった。


 だが、妹が消えたことによりできた余裕も、段々と孤独というものに変わっていった。心細いと、心の底から感じるようになった。


 日常生活も、学校生活も、掛け持ちしているアルバイトも、何から何までやる気が起こらなかった。あまりにも孤独で、自分の存在意義を見出せなかった。


 そんな時だった。君に出会った。一目惚れ…というやつだったのかもしれない。とにかく、君に視線を奪われたのだ。


 その日から、僕は彼女を振り向かせるためにいろいろなことをした。彼女と話せるようになってからは、辛くて、生活をするためだけにやっていた、掛け持ちしているアルバイトや、退屈でつまらなかった学校生活も、生きがいを感じるようになった。閉ざされていた心が、暗闇に染まっていた視界が、突如として雲が消え、快晴になった…そん感じがした。


 そして、月日が経過して、僕たちの仲が深まり、お互いを好きだと認識しあったあの日


 君は僕のことを忘れた。

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