第49話 魔王襲来 その9
ティファニーは見逃さなかった。それは一瞬の出来事だった。
マオが湯呑みに口につけた瞬間、勇者ユウが目にも留まらぬ速さで自分の湯呑みとすり替えたのだ。緊張していたマオはそれに気づかず、ユウのお茶を一気飲みした。マオの様子ばかり気にしていたハンナもそれに気づくことはなかった。
そしてマオがお茶を飲むと同時にユウもにやけながら湯呑みに口をつけたのだ。
(もしかして、お茶に何か入っていたのに気づいて、勇者ちゃんがすり替えてくれた? いや、あの表情を見る限り、ただ間接キスしたいだけのようね)
ティファニーがちらりとハンナの方を見ると、彼女は驚いてマオを見つめていた。
どうして効かないの? ハンナの表情がそう言っているようなものだった。――やっぱり、お茶に何か仕込んでいたのね。ティファニーは僧侶の企みに気づき、こちらもまた誰にも見えない速度で自分とハンナのお茶をすり替えた。
(落ち着くのよ、落ち着くのよ私!)
ティファニーにバレているとも知らないハンナは、平静を装おうと自分の目の前に置かれているお茶をぐいっと飲み干した。
「ぐえぇ」
一瞬でハンナは眠りについた。
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