第39話 勇者と魔王と温泉と その8
「……ゴホン!」
マオは声が出なかった。目の前にいるのは確かにユウちゃん。そして隣にいるのは……確か一緒に魔王城に来ていた僧侶。ただ仲良く遊んでいる……ようには見えなかった。例えるなら恋人同士がじゃれあっているような感じに思えたのだ。
なんとかイチャイチャをやめさせようと咳払いをしてみたけれど……マオの胸のドキドキは止まらなかった。
これまでに感じていたドキドキとは種類が違う。
ユウちゃんに会えた喜びなんてものは感じなかった。それよりもどうしてこんなところにいるの? どうしてそんなことをしてるの? そんな思いでいっぱいだった。
マオは黙ったまま二人の前を通り過ぎ、温泉の一番奥まで進むと、そのまま頭の先までボチャンと沈んだ。
「……上がりましょうか、ユウ様」とハンナ。そして湯船に沈んだ入浴客に対して「すみませんでした、うるさくしちゃって」と謝罪すると、「アーッシュ! そろそろ上がるからね!」と岩の向こうに声をかけた。
静かになった女湯で、何か言いかけたユウだったが、ハンナに言われるがまま、女湯を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます