第13話 勇者ユウの休息

「……マオ……」


 勇者ユウは城下町にある自分の家のベッドで寝言を呟いていた。そこへ看病中の僧侶ハンナが濡れタオルを持ってやってきた。


「ユウ様……夢の中でも魔王と戦っていらっしゃるのですね……うぅ」


 まさかハンナは、ユウがマオのことを想ってその名を呼んでいるとは露知らず。ユウの額にある、氷が溶けてしまった氷嚢を取り上げる。


 ハンナはユウの顔をじっと見つめた。

(はあぁぁっ、ユウ様……なんていじらしいお顔! このまま唇と唇を重ね合わ

せてしまいたい!)


 ついでに、ハンナはユウのおでこに手を当ててみる。――体温はよくわからなかった。やっぱり体温を図るには額と額を合わせないと! 


 ハァハァと息を荒げながら、ハンナは自分の顔をユウの顔に近づけていく。あと少しでおでこがつき、唇も触れるか触れないかの近い場所へ……というときだった。


「どうだハンナ、勇者殿の様子は?」


 後ろからアッシュの声が聞こえて「ひょおわぁっ!」とハンナは変な声を出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る