掃除

「椎菜、そっちの箱持ってくれ。」

次の日、俺と椎菜は一階にある物置を掃除していた。

埃にまみれながら大量の箱を廊下へと運び出す。

そしてほうきでちりをまとめて掃除機で吸い取り、雑巾がけをする。

終わった後は、いるものといらないものの分別をして、また箱を部屋にもどす。

この作業を一部屋するだけでも半日はかかる。

あっという間に昼過ぎだ。

「こういう部屋、あといくつあるんだっけ?」

「少なくとも3,4つはあった気がするな。」

綺麗になった部屋のソファーでうなるように椎菜は声をだした。

「そうかあ。」

俺も辛うじて声を出した。

バイト代が高いのも頷ける。

正直、しんどい。

物が多すぎるし、埃も多い。

ついでに風通しもよくない。

窓の建付けが最悪。

下手に力を入れたら壊れかねない。

不満は無限に湧き出てくる。

掃除が久しぶりすぎて埃が床に湿ってこびりついている。

昨日は屋敷全体を見て回ったが、食堂やキッチンにバスルームもかなり広く大人数向きだと思った。

デスゲームの開催が出来そうなくらい、部屋数や準備できるものが揃っている。

考えてみると、長谷野は椎菜や俺が来る前にバスルームや部屋は一人で掃除してたんだよな。

それってすごいことじゃないか?

「部屋のほかにも2階の客室と階段、あとキッチンとバスルームも時間があったら全部しないとな。」

はああと、絶望したようなため息をつく椎菜。

「あー、辛い。」

「椎菜は長谷野さんとどんな関係の知り合いなの?」

思い切って訊ねた。

「……色々あって1年前から連絡取り合うようになったんだ。」

椎菜は寝転びながらそう答えた。

「よく会ってるの?」

「休みのたびにここに来て色々話すようになった。」

椎菜は淡々と続ける。

具体的なことを話すつもりはなさそうだ。

椎名はふいにスマホの電源を入れる、画面がちらっと目に入った。

電話やメールの通知が30件くらい来ている。俺はぎょっとした、すべて母親のようだ。

「えっ、それ。」

思わず声をかける。

「母さんは私のことが心配でたまらないんだ。何かあるとずって気にかけている、それはもう異常なくらいね。」

椎菜はため息をつく。

「辛くないか、それ。」

「うん。」

親子関係、悪くないように見えたが悩みは尽きないらしい。

「私、つねにいい子でいないといけないから。ここは息抜きにちょうどいいんだ。本も読めるし。」

椎菜は起き上がった。

「さて、もう一部屋今日中に片付けようか。」

俺もうなずくともう一度、手に埃まみれの軍手をした。

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