準備

俺はメモを見ながら、商品を探す。

「……じゅうそう?あ、重曹か?」

土曜日、俺は1人でホームセンターに行き洗剤やスポンジをかごに入れていた。

椎菜が、掃除道具があるのかどうかわからないという話をしていたので、念のため自分で用意することにした。

自分の母親に聞いて、一般的に必要な掃除道具のメモを書いてもらった。

重曹とクエン酸に、酸素系漂白剤に、メラニンスポンジ、普段聞かない単語の上に全部ひらがなかカタカナで書かれているせいかわかりにくい。

俺が四苦八苦していると、遠目に見慣れた顔があった。

「ん?」

「藍蘭に頼まれてたのはアクリル絵の具の黒と青だけか?」

「うん。それだけあったらいいって。」

男性と2人で買い物をしているようだった。男性は40代後半くらいで、揃えてない髪の毛と白髪が目立つ。

「椎菜?」

「あ、九薬。」

どうやら横にいるのは父親のようだった。無愛想で細身な所と雰囲気が似ていた。

「何してるの?」

「何ってお前のーー。」

バイトの準備だよ。そう答えようとして、椎菜は遮る。

「あぁあ!文化祭の準備な!買い物一人なのは大変だな!」

わざとらしく話をごまかす椎菜。

相当焦ったのか首を激しくブンブン振った。

俺はその気迫に押されて

「あ、ああ!気にしないでくれ!」

と同意してしまった。

もしかして、今ここでバイトの話をすると迷惑かもしれない。

「遅くなるなら、俺は先に行っている。」

椎菜から強引に買い物カゴを受け取ると、レジに向かう。

まるで俺たちのことどうでもいいみたいだった。

「父さん、待って。じゃあな、九薬。」

椎菜は父親の後を慌てて追いかけていった。

「……買い物の続きするか。」

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