第163話 やらかした事を冷静に考えれば、そりゃあペタンお爺ちゃんだって激おこになるわさ
ああ、下総兵四郎だ。
結局、植民地軍? チャド軍?の残存勢力を捕縛すべく増援が来たのは、50口径弾を使い切って、予備の九九式狙撃銃の最初の1
一応、九九式でも砂漠みたいに遮蔽物のない開けた場所なら、1㎞以内なら当たることは当たるからな。
まあ、その増援ってのも何処から飛んできたのか4機の零式輸送機(空挺仕様)に分乗した空挺部隊だったんだがな。
100名ちょっとの部隊で3,000名の敵地上部隊を押さえるなんて普通に考えれば無茶無謀もいいとこだが、4機の
いや、半狂乱だった奴とか結構いたので、そういう意味では苦労してたが。
なお、生存者の中で最も階級が高かったのは大尉だったらしい。
一応は同じ階級の軍人としては、詰め腹を切らされるだろう自由フランス大尉には同情してしまう。
だが、パリ政権の正統フランス軍でもないのに「自由
第一、「自由フランス」は国家などではなく、ドイツとフランスとイギリスが公認の”
本来なら、テロリストとして捕縛した全員を即時現場処刑しても構わなかったらしい(つまり、降伏を一切認めずに、国境侵犯したテロリストとして射殺処分しても問題なかったらしい)のだが……これ以上面倒ごとを引き受けたくない(火中の栗を拾いたくない)皇国政府の意向もあり、栗林遣リビア軍総司令官とおそらくは武者小路外交官とリビア三国連合の担当部署と話し合いの結果、生存者はフランス政府へ引き渡しとなったようだ。
とはいえ、最終的な死者は7割以上に達したために引き渡せる数は、そう多くは無いだろうけど。
そんなこんなで自由フランス軍大尉殿は部下共々「フランス軍を詐称し、
基本的に国軍の詐称は立派なテロ行為、つまりハーグ陸戦条約やジュネーブ条約の対象外。普通は、まあ末路は決まっている。
処刑を免れる方法としてはフランス政府との司法取引だが……いずれにせよ軍人としてのキャリアはおしまいだろう。
とりあえず、ここいらは上層の判断になるだろう。
そして、俺が
「自由フランス軍を僭称する
「ああ」
少佐は頷きながら、
「”警察の装備では対処できない相手故に治安出動で皇国軍が出る”ことになる。上はそういう方向で調整してるようだ」
まあ、攻められっぱなしじゃ面子が立たんか。
それに、
「とりあえず、”アオゾウ地帯”を押さえる大義名分にはなる……ですか?」
”アオゾウ地帯”ってのは、前世だとリビア・チャドの国境地帯、そのチャド側にある係争地で、そこを巡ってリビア・チャド戦争がカダフィ政権時代に起きている。
その係争の理由は、アオゾウ地帯に『有力なウラン鉱脈』があるかららしい。
隊長は小さく頷き、
「そうだ。また大義名分としては、今回の反政府組織による悪質な国境侵犯に対する対抗処置。それに加え、キレナイカ王国サヌーシー陛下より、直々に
あー、確か某大佐がリビア・チャド戦争起こした時の大義名分が、「アオゾウ地帯に住んでいた住民はサヌーシー教団に臣従しており、その後オスマン帝国に臣従し、その権限はリビアが引き継いだ」だったな。
いや、「お前がクーデター起こしてサヌーシー教団を国王ごと潰しておいて何言ってんだ? コイツ」ってのが俺の知ってる歴史だが、
(これ、
間違いなく黒幕、あるいは裏で糸引いてるの転生者だぞ?
「今すぐどうこうという訳ではないが、心に止めておけ」
「ハッ!」
一応、ちゃんと敬礼を返す俺氏だったが……この時は、考えもしなかったんだよ。
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「あのテロリスト共がふざけおってっ!! 仮にも元祖国の立場を何と心得るっ!!」
フランスは、パリ政権は、ペタン首相は揃って大激怒していた。
まさに”怒髪天を衝く”である。
当然だろう。
日本皇国の取りようによっては、
・日英同盟とドイツの休戦協定がご破算
・休戦が失効した途端、リビアの日本軍がアルジェリアに攻め込む
可能性があったのだ。
日本人が聞けばコーヒーを吹き出しかねない発想だが、戦乱絶えない欧州の人間には当たり前の考え方だ。
必要なのは口実であり大義名分である事を、彼らはよく理解していた。
しかも尋問(あくまで彼らの解釈で言う尋問ですよ?)の結果、生き残り指揮官は、
『日本人がイタリア人に代わってリビアを取ったので、簡単に占領できると思った』
とクソ
無論、捨て駒としてだ。
悲劇的な喜劇なのは、ド・ゴールの行動を黙認した米ソ(米国は当然、この動きを掴んでいたが制止せず、またコミンテルンを通じてソ連にも筒抜けだった)はいざ知らず、ド・ゴール一派にそこまで深い意図は無かった事だろう。
前述の通り、自由フランスの目的は「効果的なパワープレゼンス」、言ってしまえば「将来の祖国奪還に向けた布石となる、”売名行為”」、誰もがよく知る「戦後ド・ゴール主義フランスが大好きな冒険的(笑)行動」であるのだが……
だがしかし、この世界線ではそんな判断は誰もしてくれない。
失敗して事実上、全滅したからよかったようなものの、万が一にもリビアの小さなオアシス都市一つでも占領していたら、日本から何を要求されるか分かったものではなかった。
歴代転生者達の尽力により、日本皇国は戦後日本のように左翼に腐り墜とされた甘さだけの国でもなければ、戦前の大日本帝国のような傲岸不遜で道理の通らぬ国家でもない。
鎖国を拒否したために国際社会で生き抜く強かさを身につけた”海洋性重商主義国家”……そうであるが故に何をしてくるか分からない怖さがあった。
日本人は、どちらかと言えば謙虚で過剰や無茶な要求はしてこない。
しかし、一度敵と認識されればそこで終わる。
日本人は感謝も忘れないが、恨みも忘れない。
日本には「水に流す」という言葉があるが、それは(話が進まなくなるので)「なかったことにする(=そうみなす)」だけであり、本当に忘却する訳でもない。
そして、水に流さないと決めた時は厄介なのだ。
日本人は一度敵と認識すれば、その認識が翻る事は無い。
帝政ロシアからソ連に変わろうと、ロシアの認識はずっと”敵性国家”のままだ。おそらく、この先もそうだろう。
日本人は一度切り捨ると判断すれば、”例え何があろうと”二度と関わろうとしない。
一切の手を引いた朝鮮半島や中華大陸を見ればわかる。
それどころか、今は該当地域への邦人渡航は政府の許可がなければ一切認められず(観光なぞ以ての外。ビジネス渡航も基本は今は不可)、また該当地域の住人の来訪も滞在も全て原則拒否と徹底している。
そんな扱いとなれば、今のフランスなら死活問題に発展しかねない。
端的に言えば、ペタン政権の深読みの方が解釈としては筋が通ってしまったのだ。
事態を重く見たフランス政府は、かねてより議論が続けられていたある懸案事項を実行することに決定した。
赤道アフリカはフランス植民地の中でも、(今のところ)唯一自由フランスに尻尾を振った《b》”裏切り者”《/b》であり、フランス政府にとり今回の一件は、まさに「飼い犬に手を嚙まれた」のだ。
ならば、捨て置くことなど到底出来ぬ。
徹底的な躾が必要だった。
しかし、今のフランスは戦後復興まっただ中で、しかもアルジェリアとチュニジアを防衛しなければならない。
当然、赤道アフリカに戦力を割く余裕は無かった。
では、どうするか?
フランス政府の最終的判断は、再び世界を仰天させるっ!!
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