地雷系義妹とデート
後日、三十万円を受け取ることになった。
小鳥遊は最後まで悔し涙を流し、俺に再戦を誓った。……まだやる気かよ!
――放課後。
授業が終わって、俺は帰る準備を進めた。すると隣の席の祥雲が話しかけてきた。
「平田くん、もう帰る?」
「ああ、うん。また明日、祥雲さん」
「そっか。暇がある時で良いんだけどさ、今度二人きりで遊ばない?」
「マジか」
「マジマジ。たまにはいいじゃん」
「そうだなぁ、分かった。時間作っておくよ」
「ありがとう。じゃあ、またね」
手を振って別れ――俺は教室を飛び出した。
祥雲さんと遊ぶ……か。
そういえば、夢香以外の女子と遊ぶだなんて初めてだった。この前のカラオケは夢香がいたからな。
って、よくよく考えるとなんで祥雲さんは、俺を誘ってきたんだ?
あんな美人女子だったら、彼氏がいてもおかしくなさそうだが……。
まあ、細かいことはいいか。
廊下を歩いていると夢香が向かってきた。
相変わらず校則ギリギリの地雷風味でキラキラしている。正直、アウトな気がするが先生から指導は特にないという。
あの髪の毛のインナーカラーとかバレたら怒られるだろうな。見えない範囲だから大丈夫かな。
「お兄ちゃん、そっち向かうところだった」
「俺もだよ。さあ、我が家へ帰ろうか」
「それなんだけどさ」
「ん、どうした」
「帰りに映画館に寄っていかない~? 見たいのがあるの」
「映画か」
スマホの画面を見せつけてくる夢香。そこには【ジョン・ライバック】というタイトルと共に男が銃を構えていた。
どうやら、男は世界一の殺し屋らしい。
そんな男が家族を殺されて復讐するのだとか。
ほ~、アクション映画か。これは面白そうだ。
そういえば、夢香はこういう映画が大好きなんだよな。
「ほ、ほら……デートしよっ」
夢香は顔を赤くしながらも、俺の腕にくっついてきた。そんな無理して……可愛い。
「たまにはいいか。幸い、三十万円の臨時収入が入る予定だからな」
「でしょ。勝利の女神がいたからだよ」
「そうだったな。じゃ、行くか」
「やった~!」
すっかり恋人みたいにくっ付いてきて、俺は凄く嬉しかった。夢香がこんな喜んでくれるなんて、俺も幸せだ。
* * *
舞鶴駅から舞鶴八千代館へ。
かなりレトロな映画館として知られているが、最近の映画を普通に上映している。
徒歩で十分ほど歩いて到着。
子供の頃以来に来たが、相変わらず昭和の香りが残っているな。
「夢香、ここは初めてか?」
「そんなことないよ~。たまに来てた」
「そうなのか。映画、よく見に来てたんだ」
「たまにね。ここ中学生で千円、高校生で千二百円で見れるから」
そう思えば安い。
一般料金が千八百円もするからな……。
そういう意味では学割最強だ。
学生のままの方が何かとお得。
一生学生でいられればいいのに。
映画館に入って受付のおっちゃんに【ジョン・ライバック】のチケットを頼んだ。ドーホーシネマズみたいなタッチパネルでチケット購入ではなく、昔ながらの受付でチケットを買う方法とはな。
ここは本当に変わらない。
「ペットボトルを買っておくか。ほら、夢香。好きなの選べ」
「ありがと、お兄ちゃん」
ここはドリンクホルダーがないから、ペットボトル推奨なのだ。
さて、いよいよだ。
この映画館は全席自由席。
好きな場所に座れる。
真ん中の隅にして、席へ座った。
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