義妹の為に一万円をゲットする決意
夢香との昼休みはあっと言う間に終わった。
午後のマラソンに備え、全員体操服へ着替えた。
そのままグラウンドへ向かうと、またもや祥雲が話しかけてきた。今日はやけに積極的だな。
「平田くん、いよいよだね」
「そういえば、思い出したよ。俺、全学年マラソンはいつもサボっていたんだった」
だから覚えていなかった。
だるいし、意味ないと思っていた。
でも、賞品が出るとは知らなかった。
知っていたら頑張っていたのにな。まさか、上位十位ならアマドンギフト券が一万円も貰えるとか、やるしかないじゃん。
十一~三十位までなら三千円が進呈されるようだ。そんなご褒美企画だったとはな。
ちょっくら本気でも出すか――と、気合を入れていると人の波を掻き分けて、夢香が現れた。
「お兄ちゃん、来たよー」
「待っていたぞ、夢香。けど、すまないが俺は本気だ」
「え……?」
「アマドンギフト券が欲しい。一万円を勝ち取って、夢香に贅沢させてやりたいんだ」
「え、ええッ!? そ、そんな無理しなくていいよ? 夢香と一緒に最後尾をのびのび走ろうよ」
「いや、お金の為なら俺はやる。夢香が幸せになるなら、俺は本気だ」
メラメラ燃えていると、背後から声がした。
この声は、まさか……!
「見つけたぞ、平田杏介!」
「ん? って、お前は……小鳥遊なんとか!」
「なんとかって言うな! こうなったら勝負だ、平田杏介!」
「勝負だと?」
「ああ、そうだ。平田さんを懸けて勝負だ。勝った方が平田さんを好きにできる」
好きにできるって、勝手に義妹を賞品にすんな。こんな勝負に乗る必要はないな。
「お断りだ」
「なに!?」
「それに、俺の狙いはアマドンギフト券一万円分……お前の勝負興味ねぇんだわ。ほら、夢香も困ってるし」
実際、夢香はかなり困惑していた。
そりゃそうだ。いきなり人を賞品にされて気分の良いヤツなんていない。この小鳥遊とかいうヤツは、そんなことをしてまで俺の義妹を奪いたいのか。不毛な戦いだ。
「くっ……! なら、順位を勝手に争うぞ」
さすがの小鳥遊も夢香の表情を見て焦って、気が変わったらしい。
「あっそ。勝手にしろ」
「ああ、勝手にする! だけど、これお前の順位が僕より低ければ平田さんは……どう思うかな?」
ニヤッ笑い煽ってくる小鳥遊。俺は至って冷静に対処した。
バカバカしい。
そんな安い挑発に乗るほど俺は愚かではない。小鳥遊なんとかとの勝負よりも、もっと大切なことが目の前にある。
そう、夢香の幸せだ。
俺は一万円が欲しい!!!
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