ストーカーかも?

 昼休みなり、俺は早々に教室を出た。


 ……なぜだ、なぜ隣の席の彼女は俺をチラチラ見ていたんだ!?



 朝からだ。

 名も知らぬ女子は俺を監視するように視線を向けてきていた。



 なんで俺を?

 まさか、怪しい壺でも売ってくる気か?


 やべえ、やべえ、やばい人に目を付けられてしまったぞ……。



 俺は足早に二年を目指した。

 すると向こうからも夢香が現れた。顔を青くして。足元も震えているし、これは重症だぞ。


「…………」

「夢香!」


「お、お、お兄ちゃん……」

「おいおい、まるで強制的にバンジージャンプをやらされた後みたいに顔が引きつってるじゃないか」


「あの人がまた来たの……」

「え? 誰が?」


「昨日、ナンパしてきたイケメン! あの丸眼鏡の!」

「アイツ、夢香の教室まで来たのかよ」


「う、うん……」


 詳しく聞くと、どうやら丸眼鏡はしつこく夢香を誘ったらしい。けれど、夢香は俺と同じ超絶コミュ障。相手を前にしてガクガクになってしまい、轟沈したようだ。


 しかもクラス内でかなり目立ったとか……。

 うわぁ、それはクリティカルダメージだわ。痛すぎる。


「しつこいなら俺が何とかしてやるから」

「頼りにしてるよ、お兄ちゃん」


 やや涙目で抱きつかれて、俺の意思は固くなった。

 そうだ、俺が夢香を守らないと。


 そのまま教室を出て屋上へ。


 屋上なら、ヤツが来る心配もないだろう。



「……ふぅ、ここは聖地だな」

「今日は人も少ないし、風も気持ちい」

「ああ、快適だ……ん?」


 近くのカップルのひそひそ話が聞こえてきた。



「ねえねえ、三年の小鳥遊たかなしくんってカッコいいよね~」

「あぁ、あの眼鏡のチャラ男な。噂じゃ、アイドルやってるらしいってさ」

「ええ、そうなんだ! けど、二年の後輩をしつこく追ってるって聞いたよ。さっき……平田さん? っていう女の子をつけ回していたとか」


「うわぁ、マジ!?」



 ――って、それ夢香のことじゃねぇか!!


 あの丸眼鏡、小鳥遊って言うのか。

 しかも、高校生にしてアイドルもやっているのか。道理でイケメンすぎると思ったよ。



「ねえ、お兄ちゃん。隣のカップル……夢香のこと言ってなかった?」

「き、気のせいじゃね」

「そうなのかな~」


 どうやら、夢香には聞こえなかったらしい。

 俺の手を握って安心した顔をしていた。

 うん、俺が守らないとな。

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