恋人繋ぎで登校
朝食を食べ、学校を目指す。
なんてことのない日常だが、隣には夢香がいた。もう見慣れた光景ではあるけれど、こうして女子と一緒に登校は気分が違う。
ひとりの時は鬱屈としていたが、これほど晴れやかとはな。
「最高だ……」
「なにが最高なの~?」
「いや、なんでもない。それより、いつも思ったんだが……スカート短くないか」
「これくらい普通だよ。それにタイツ穿いてるからね」
「そういえば、いつも穿いてるよな」
「うん。肌荒れと日焼け防止。あとまだ少し肌寒いからね」
「なるほどな」
「それと、お兄ちゃんにビリビリ破って欲しいから」
「…………!?」
耳元で囁かれて俺は心臓が破裂するかと思った。
ちょ……今のは不意打ちすぎるって。
「あはは、驚いた?」
「そ、そりゃな」
照れていると、夢香が俺の手を握ってきた。いわゆる恋人繋ぎってヤツで。そんな指を絡めてきて……ったく、仕方ないヤツめ。
「ゆっくり行こうね」
「あ、ああ。そうだな」
ほのぼのと学校へ向かう。
校門前に近づくと自然と手は離れた。誰かに見られたら恥ずかしすぎて登校できなくなるからな。
夢香はすっかり顔を真っ赤にして俯いていた。そんなに緊張していたのか。俺もだけど。
「…………」
「大丈夫か、夢香」
「だ、だ、大丈夫! 多分だけど!」
「そ、そか。さて、到着だ」
学校に入り、俺は夢香と別れた。
この瞬間がとても寂しい。時間がもう少しゆっくり進んでくれればなぁと思う。
だが、時間は前へ進む。
だから俺も前へ進む。
教室へ入り、いつもの隅の席へ。
着席すると隣の席の女子がこちらをチラリと見た。……な、なんだ?
「……おはよう、平田くん」
……ッ!
俺は激しく動揺した。
ま、まさか女子に挨拶されるとは。
だが、返さないのも礼儀としてどうかと思ったので、俺は勇気を振り絞って挨拶を返した。
「お……おはよ」
「なんだ、普通に話せたんだ」
「え……」
「いやぁ、昨日さ、女の子といるところ見ちゃったから」
「あー、夢香ね」
「へえ、夢香ちゃんって言うんだ。可愛いよね。彼女?」
「違うよ。義妹だ」
「妹さんかぁ。にしては可愛すぎる気が」
直後、チャイムが鳴ってホームルームが始まった。……まさか夢香以外の女子に話しかけられる日が来ようとは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます