二人きりの部屋、汗だくでツユダク
息が乱れながらもアパートに到着。
全力疾走してしまった。
汗だくでツユダクだ。
「……はぁ、ビックリした。なんだよ、あのナンパ野郎」
「そ、そうだね。口から心臓が飛び出るかと思った。あんな俳優みたいな人を相手にするとかムリムリ!」
夢香は怖がって震えていた。
とにかく気持ちを落ち着かせる為にアパートの中へ。
ドアを開けるとギィィと古めかしい音が響く。俺の住むボロアパートは、築二十年だったかな。
かなり古いけど、内装はそれなりに現代風。
家賃三万円と格安の部類だ。
これで2DKなので驚き。
トイレと風呂も別れているし、正直かなりお得なアパートだ。
ひとまず俺の部屋に向かい、その場で脱力した。
「「……ふぅ」」
息を整え、チラリと夢香を見ると――ブラウスのボタンを外していた。
「……ちょ、夢香!」
「だ、だって……汗掻いちゃったし、暑いし……」
「だからって俺の部屋で脱ぐことはないだろ……」
「今日の下着、黒だよ。すっごくえっちなヤツ」
「って、オイ。話を聞けって」
大胆すぎる谷間を見せつけ、俺を誘惑する。
やばい、このままだと俺が食べられちゃう!
「汗だくで……する?」
「ちょ、顔が近いぞ」
「なんてね」
俺の胸に顔を埋める夢香。
今日一番に落ち着いた表情だった。
「なんだ、冗談か」
「ううん、夢香はいつでも本気だよ。でも、この方が落ち着くから」
「あ、ああ……俺もこの方がいいな」
甘え上手な義妹に負け、俺はそっと抱きしめた。
* * *
貧乏学生なので晩御飯はもちろん、自炊だ。料理は夢香がしてくれた。
住まわせて貰っているのだからと聞かない。
「ねえねえ、お兄ちゃん。見て見て、新しいお洋服どうかな」
フリフリの黒ワンピースを着こなす夢香。いわゆる地雷系の服。もはや、ゴスロリにも近い。
目の下のクマは、あえてメイクで入れているとか何とか。
「可愛いけど、どんどん悪化しているような」
「リボンも変えたんだよ~」
どこが違うんだ。
いつもと変わらないような。
しかし、普段でも地雷系のスタイルは変えないんだな。これは“普通”はますます遠のくばかりだ。
けれど、今はこれでいい。
夢香が幸せなら、これで。
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