お兄ちゃんのお世話する部

 こんな屋上でブラウスを大胆に開いて……。


「夢香、誰かに見られたらマズイって」

「大丈夫だよ。ここカップルしかいないし、夢香とお兄ちゃんのことなんて誰も見てないよ」

「ダメったらダメ」


 俺は、手を伸ばして夢香の谷間からキャロリーメイトをそっと引き抜く。……非常に生々しいが、致し方ない。


「それ食べてよ、お兄ちゃん」

「……こ、これを!?」


 夢香の胸に挟まっていたモノだ。

 それを食べるとか……。

 けど、昼食はこれしかないのだ。


 貧乏人にとっては貴重な食糧。

 選択肢はひとつしかない。


 俺は震える手でキャロリーメイトを口にした。



「うんうん、素直でよろしい……(あぁッ、お兄ちゃんがわたしの胸に挟んでいたキャロリーメイトを食べてくれたぁあ、嬉しいぃ♡)」


「ん、どうした? 顔が赤いぞ、夢香」

「そ、そりゃ少しは恥ずかしいよ」



 本当に恥ずかしそうにブラウスのボタンを直す。案外、無茶していたのかもしれない。……まさか、俺の為に?



「ところで、夢香は部活とかやらないのか。運動得意なんだろ?」

「やらない。お兄ちゃんのお世話する部で忙しいから」


「なんだそれ。そんな部活があったとは初耳だ」

「うん、部長はわたし。部員はお兄ちゃんなの」


「へえ、なにをしてくれるんだ?」

「……膝枕とか耳かきとか……キスとか。えっちなコスプレもしてあげる」


「!?」


 俺に幸せしかないじゃん!

 なにその部活、最高すぎるな。


 という俺も部活には所属していない。永久とこしえの帰宅部だ。中学から今に至るまで部活なんて所属したことがなかった。


 なら、夢香のお世話になろうかな。




 なんて考えていると昼休憩の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 楽しくも幸せな昼は終わった。




 授業が淡々と進み、

 ――放課後、俺はスマホを確認した。


 お、夢香からメッセージがあるな。



『お兄ちゃん、助けて』



 ……え、なにかあったのか!?

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