夢幻飛行~異次元への旅路~

葦沢かもめ

第1話 宇宙船がやってきた

 いつもと変わらない毎日に、私は退屈していた。同じ時間に起きて、同じように学校に行って、同じような授業を受ける。そんな代わり映えのない日々。私には、夢もなければ希望もない。

 そんなある日のことだった。学校の帰り道でふと空を見上げた時に、何か変なものが見えた気がした。目を凝らしてよく見てみると、それは宇宙船だった。私は思わず立ち止まってしまった。だって目の前にあるものは、映画やアニメでしか見たことがない。しかもそれは、今まさに私の方に向かってきていた。私は恐ろしくなって逃げ出そうと思ったけれど、足がすくんで動けなかった。

 やがて宇宙船は、ゆっくりと降下しながら近付いてきて、地面に着陸すると扉のようなものを開いた。そこから現れたのは、なんとも奇妙な姿の生き物たちだった。人間に似ているけど少し違うというか……まるで幽霊みたいな姿をしていて、半透明なのだ。彼らは、それぞれ思い思いのことを喋っていた。その声は、頭の中に直接響いているようだった。でも不思議と何を言っているのか理解できた。どうやら彼ら(彼女ら?)は、私が知っている言葉を使っているみたいだ。

 彼らが何者なのか気になった私は、話しかけることにした。

「あなたたちは、一体何なの?」

 彼らはお互いに顔を見合わせると、一人ずつ話し始めた。

「僕たちは、君たちの言葉で言えば、宇宙人ということになるのだろうね」

「へぇ〜、そうなんだぁ……」

 なんだか意外で、私は驚いてしまった。

「ああ、そうだ。自己紹介がまだだったね。僕はアル。そしてこっちが僕の友達のダガンだよ。それから、彼女はユイっていうんだ」

 アルさんがそう言うと、二人は小さくお辞儀をした。

「よろしく頼むぜ」

「よろしくね」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 私も挨拶を返した。アルさんは続けて言った。

「ところで、君の名前は何ていうんだい?よかったら教えてくれないか?」

「あっ、ごめんなさい。まだ名乗ってなかったですね。私は、マミといいます。よろしくお願いします」

「マミちゃん、いい名前だね。可愛いと思うよ。よろしくね」

 アルさんは爽やかな笑顔を浮かべた。

「ありがとうございます。アルさんたちも素敵な名前ですよ。とても綺麗です」

「あははっ、そう言ってもらえると嬉しいよ。ねぇ、ダガン?」

 アルさんが同意を求めるように尋ねると、ダガンさんは「そうだな」とぶっきらぼうに答えた。

「それで、あのぅ、どうしてアルさんたちがここにいるんですか?」

「実は、僕たちの星ではエネルギーが不足して困っているんだ。そこで、僕らはエネルギーを生み出すことのできる人間を探しに来たんだよ。そうしたら、ちょうどマミちゃんが通りかかった。これはチャンスだと思って、僕たちはついてきたってわけさ」

「えっと、それってつまり……」

「そうさ。マミちゃんをさらいに来たってこと」

 アルさんはあっさりと認めた。

「えー!?ちょっと待ってください!そんなの嫌ですよ!」

「大丈夫だって。すぐ終わるから」

「そういう問題じゃないんですよ!!」

「まあまあ、落ち着いてよ。ほら、深呼吸してみよう。吸って、吐いて、吸って、吐いて……」

「すー、はー、すー、はー」

「落ち着いたかい?」

「はい。落ち着きました」

「それは良かった。じゃあさ、少しだけ僕たちの話を聞いてくれないかな? もちろん断ってくれても構わない。でもできれば聞いてくれるとありがたいんだけどね」

「……わかりました。聞かせてください」

「うん。ありがとう。せっかくだから宇宙船の中でお茶を飲みながら話すことにしようか。マミちゃん、お茶は飲めるよね?」

「はい。好きですよ」

「良かった。じゃあ、早速行こうか」





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