無題
茶色い目
第1話
ここでアイツらの胸ぐら掴んだら何かが変わる。そんで、全部吐き出させてやろう。私の声を聞いた事。私の人生を狂わせたこと。勝手に聞いてる分際で物申されたこと。全部さらけ出させてやろう。…紅潮した顔は電車の中が暑いのかそれとも興奮してるのかもう判断がつかなかった。だがそんなことをすれば当然騒ぎになり、私は捕まりと容易に想像出来る。それが心の中に残っていた小さな「良心」なのかもしれない。
なんとかその場をやり過ごし、電車を乗り換えた。空いている席に座ると隣に眼鏡をかけた女が座った。女は必要以上に端を座っていた。私は我慢ならず女を睨みつけて立ち上がった。女は穏やかな表情だった。滅茶苦茶だ。別に私一人がいい気分になるくらい良いのに。誰にも迷惑かけてないのに。iTunesのプレイリストを触る。
イヤホンからお気楽珍道中が呑気なテンポで流れる。乗っている電車は冷ややかな空間そのものだった。当然私の周りには誰も寄り付かない。こんな時、自分の詩的な性分が役に立ったと思った。この悲劇的な地獄の空間が何故か、それはそれで物語の一部になった気がした。
無題 茶色い目 @chairoime
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