【サッカー大河ドラマ】タマシイを抱いてくれ ~168cmの日本人サッカー選手が駆け上がるバロンドールへの道・改~
高坂シド
序章 2018
第0話Prologue
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その夏 少年は青年となり 日本人初の
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少し意地悪な質問をしてみようと思う。
東京から岡山へ向かう新幹線の中で女はそう思い、すこし自分でもいやらしいと蔑んでしまいそうな笑みを浮かべた。
若干17歳の若造が、伝統ある日本有数のサッカー雑誌『ウィークリー・フットボール』の巻頭表紙を飾るのだ。それくらいは世間の荒波というやつで許されるであろう。
今回のインタビューの相手、
13歳まではアンダー世代の日本代表!
しかしそのあとの経歴は昨年の
「さて、最初の質問からどういう流れでその質問に持って行くかな……」
女は新幹線の窓のふちに缶コーヒーを置いた。赤い眼鏡を通して流れる田園風景に目をやりながらこれから行うインタビューに対して想像を膨らませる。
「ヒーローインタビューで『そうですね』しか言わない無難なつまらない人か、年相応の野心を抱いた無謀で危険を顧みない若者か……」
サッカー雑誌、『ウィークリー・フットボール社』で3年目を迎えようとする彼女、
今回のインタビューのターゲットは『何かが違うのではないか』、その思いが強い。
「それが現実だったら素晴らしいんだけど……」
手を添えたコーヒー缶は、まだ喉を潤すには充分な量が残っていた。
Jリーグ1部に所属する岡山の予算に見合った簡素でささやかなクラブハウス。そこで凛は、向島大吾というひとりの小さく華奢な若者に対して右手を差し出す。若者はそれを手に取り、軽くハンドシェイクを繰り出した。
凛は若者に対して端正と言って良い、だが、みずみずしくもどこか人生に疲れた張り詰めた印象を受けざるを得ない。
(まるで切れてしまいそうな、伸びた一本の糸!)
緊張感を伴う壊れてしまいそうな
ふたりは握手を交わしてそれぞれ椅子に座り、凛はボイスレコーダーの録音ボタンを押した。
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