別れ

二日間、ジュンは大学関係で地方に行っていた。

「ジュン!お帰りジュン!」

「ただいまレイカ」

どんなに寂しかったことか!


白昼の自由ヶ丘、お互い派手な服に髪色で並んで歩く二人はすれ違う人の目を引く。それにも構わずに真っ直ぐ前を向くジュンと、いかにも「幸せそうでしょ」と言いたげなレイカ。そんな二人の目の前に一人の男が現れた。


「え…」


男はジュンに向かって走る。ギラリと銀色に光る刃がジュンの胸を突いた。




「白山ジュンさんの遺品ご覧になりますか」

白山、そんな名字だったんだ。思い返せば私とジュンはお互いのことをあまり知らなかった。お互いの家族も、出身地も、名字も。

「ジュン」

「レイカ」

そう呼びあって、愛を確かめあって、それだけで事足りたのだ。


突然ドアが開き、一人の女が飛び込んできた。

「ジュン!ねぇジュン!どうして?どうして死んじゃったの?」

誰?この女。

女は私を一瞬見たが、またすぐにジュンの遺体に駆け寄った。

なんなの?私を見て何のお構いも無く、

「あの失礼ですけどあなたは?」

「なに?あぁ、あんたこそ誰なの?」

「ジュンの彼女ですけど」

「あぁ、あなたが例の勘違い女ね。で何々?何て言ったよ?」

「ジュンの彼女…」

「それ二日前から私だから。あなたはただの側室、いや元正室みたいな感じ?言っとくけどね、私達もう結婚決めてたのよ」

そう言ってまた女は泣き始めた。


ふざけるな、ふざけんな。

嘘ばっかり


ただの適当野郎か、私を一生愛してくれる人だと思ったのに


「あんた、彼氏出来たの初めて?」

涙を拭きながら私に聞いてくる。ふざんけんな、その涙は私のものだ。

「ああ?そうだよ!」

「ああ残念ね。すぐに信じすぎなのよ、一生の恋とかそういうの」


レイカは絶叫した。女が悲しみを忘れるほど、泣き叫ぶだけ泣き叫び、部屋を出ていく。


嘘の言葉を積み重ねただけの私の恋。

虚実で終った私の恋。


本当の愛はどこにあるの。

どうしたら見つかるの。


ジュンを刺した男、あの時は気付かなかったけど。

トオルくん…

あなたはどうしてジュンを刺したの?

もしかして私が欲しかったの?


「それならそうと早く言ってよ」


レイカは街を歩きだす。ようやく見つけたかもしれない「本当の愛」を求めて


この世界から逃げて私と一緒に暮らそう

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