理想卿
私の前にいる四人の男は、互いの顔を見合い、憎しみに溢れ、悲しみで打ちひしがれたような顔をしている。
どうなの?私と一緒に来てくれる男はいるの?
「ねぇ、見て。」
男達が私の方を見て同時に私は一歩、後ろに下がった。
また一歩、また一歩、
あと一歩で下に落ちるところまで来たのに、男達は全く動かない。顔だけは心配そうな、私を止めたそうな顔をしているけど実際どうなの?
しゃがみ、崖の淵に手を掛け下を覗き込む。
男達はいよいよ焦ったような声を上げる。
「やめろ、やめるんだ!」
「落ち着いて!大丈夫だよ、俺と一緒に幸せになろう」
嘘ばっかりつかないで。自己保身、責任回避、あなた達が考えているのはたったそれだけのこと。だってそうじゃない。もう一回やり直したければ命を張ってでも助けに来るでしょ。
一回きりで終わってしまうマッチのような愛も、着いたり消えたりするライターみたいな愛も、大きく燃えて一人で勝手に我が身を滅ぼしてしまう山火事のような愛も要らない。
私の近くにいつまでも寄り添って私を温め、死んで冷たくなった私をも温めてくれるような…そんな愛が欲しい。
それが無いのなら、私のこの愛を求める熱をどうかすっかり冷ましてしまって!
十一月の冷たい海の水で
はぁ、やっぱり恋しい初恋のあの人。あなたはもう燃え尽きちゃったけど私は今からあなたに会いに行くわ。毎日同じ時間に一緒にプラットホームに立っていた、あの頃のままで
最果ての詩 忌川遊 @1098944
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