あの‥‥これ異世界転生ってやつですか? 〜期待したのに若返りとかもなしですか?異世界も厳しいんですね〜
@eimi-47
第1話 異世界転生しちゃったよ!
私の世界は夢で溢れる。想像力には自信あり。なぜって、それはもちろん現実が厳しいからね。逃避といえば、逃避。
(異世界ってあるのかな?異世界転生したいな、楽しいかな??魔法が使えて冒険とかしたいな。
その前に神様とかに会って特別なスキルをもらえたり容姿を変えてくもらいたい!せっかくなら、若くて可愛くなりたいよね。
あ、でもだいたい召喚されるのは若い学生なんだよね。どうしよう、わたし39才だけど。いやいや、そこは神様のパワーでなんとかしてもらって……そう、前世の記憶持ったまま子供スタートもあるじゃない)
口には出さずにこんなことを考える。
39才がこんなことを言っていてはイタイ奴だからというだけの理由ではなくて。
わたしの人生の大半は入退院を繰り返し、ベッドの上での生活だったといって差し支えない。
学校も休みがちで、それゆえ友人も少なかった。諦めたくなくて、必死で手を伸ばした。…出来ることを懸命に探してた。
完治できない難病だと、はっきり診断がついたのが20歳。進学も諦めた。
わたしの人生は諦めの連続だ。
そんな一見、悲壮感満載なわたしの趣味。
それがアニメ!声優さんの演技に魅了されて、そりゃあもう、どっぷりと!!
好きで好きで、ラノベも声優さん大好きで……という隠れオタク生活を送ってきたので、入院期間ラノベを読み
本を読みながら、推し声優さんの声も脳内変換されて聞こえてきたり。想像するのはとにかく大好きで得意。
最初は制限があっても自宅生活もできたし、多少動けた頃はアニメイベントにも参戦できた。
それも徐々に出来なくなり、入院日数が増え、出来ないも増え、今では意思疎通も難しい。声もでないし動く事もない。
大好きだったラノベは読めなくなったけどアニメは両親が流してくれていたので見ていた。そのおかげで想像の世界は広がるばかり。
頭は働いているけれど自由はない毎日。
(わたし死ぬのかな…そしたら異世界転生したいな。勇者じゃなくていいから、自由にいろんなことができるようになれたらいいな。
…ひとりは寂しいよね。友達作りたい、できるかなぁ。ううん、できるよねっ!)
そんなことを考えて眠りにつくことも増えてきた。今日も起きたらベッドにいるはずだった。
けれど今日は目が覚めたら。
なんか‥外??木がたくさん。木漏れ日が眩しい。
…
……あれ?妙にリアルなんですけど。
「なにこれ…」
思わず声が。
ん?声??声出たの、今のわたしの声ですか?!懐かしすぎてピンとこないな。おそるおそる立ってみる。
立てる。自分の足で立ってるよ、わたし!!
これってもしかして、もしかして!異世界転生ってやつ?!
わー、神様!ありがとうございます!!嬉しい!!
これは人生謳歌していいって事でいいですよね?神様!!!
…しかし神様は現れないな。なんでだろう?
ん?…洋服もそのままで来たのね。よりによってパジャマで。ワンピースタイプの襟にも袖にもフリルのついた可愛いタイプ。しかもピンクで。
洋服を着て外に出かける機会が減って、好きなオシャレもできなくなってきたことを可哀想にと、ファンシー大好きな姉のセンスそのままに。
正直いい大人のわたしが着るには可愛すぎて好みではないけれど、その気持ちが嬉しかったから笑顔で応えたら、お気に入りとされた一着。
「まだワンピースなら普段着に見える?防御力は無さそうだけど。
そうそう、神様もどこでしょう?わたしのステータス教えてくれたり、どんな世界か、とか。いろいろ説明があるよね?」
目の前に突然パパッと何か出てきた。
「わっ…あ、これステータスって言ったから?」
見えます。何か出てきたよ、ウィンドウっぽいの。ラノベやアニメと同じだよ!ワクワクする〜!!
……読めるところと読めないところが混在しています。なぜ??
むしろほぼ読めません。なに?このステータス。
不思議に思いつつ読める箇所を見ることに。
「えっ?!」
ステータスのウィンドウ画面を握りしめ、思わず叫ぶ。声に慣れてなくて自分で自分にびっくり。けれどそれにかまっている場合ではない。
「びっくりなんだけど!ちょっと待って!
わたしの年齢39才って?!若返ってないよ、神様!間違いじゃなくて?!」
鏡!ねぇ、どっかないの鏡?!白髪は?残ってる?!見たい!今の自分の姿を。じゃあ水場を探さなきゃ。
顔をペタペタ触りながら思考があちこちに飛んで疲れる。
お願いだから、お姿見せてくださいよ。神様ー!
わたしの人生やり直させてくれるんじゃないの??そのままスタートなの?マジで?ちょっと厳しくありませんか?しかも、自分が読めるステータスのところが
名前『トリイ ウズキ』
年齢『39』
で終わり。正確には『スキル』とか『
なぜそこだけ読めるのかはもう置いておくとしよう。読めるところがあるのは安心だと思う方向でいこう。
「やっぱり魔法が使える世界なんだね。これぞ異世界!」
って。書いてあるけどその先が読めません。なんていうか…全体的に文字化けしてるみたいな。
不安しかないんですけど。一体どうしたら。外だし。魔法がある世界ってことは、やはり魔物的なのも出てくるんじゃないの?
神様は出てこない、こんなに心の中で呼びかけて声にも出してみたけど全く音沙汰がない。
これは、とりあえず街を目指すべき?だって人生やり直せる‥‥のよね、これ。年齢同じだけど。異世界転生したんだったら、即死ぬのとかごめんこうむりたい。
街があるだろうか…魔物も今のところいないのが救いだけど、日が落ちたらどうなるか分からない。
「なんか道はないだろうか?」
きょろきょろ見渡してしてみると、うっすら獣道っぽいものが。本当に獣が待ってたら終了だけど、もう進むしかないじゃない。歩けるって素晴らしいことだわ!と、勇気を出して進んでみることにした。
わたしの人生謳歌が始まるのよ、謳歌よ、謳歌!楽しむわ。例え39才であっても。何も特技もないけど。神様は現れてくれないけどっ!きっと後から現れてくれるはず。
近くにあった手頃な木の枝を拾う。これが武器にならないことくらい大人だから分かるけど、もしかしたら異世界パワーでやっつけられるかもしれないし!進むしかない、なんでもこーい!!!
そうして人生再スタートを切ったわたし。楽しい、を味わいたい。どんとこい!!
怖いけど、心の奥でワクワクが止まらない。
怖いけど、動けないより全然いい。前世?(になるの?)で出来なかったことをやりたいわ。そういうのが異世界転生のテンプレだもの!
どこかで見ているであろう神様。よろしくお願いしますね、1日も早くわたしの前に現れてくださいませ。そして、わたしに安息もください。よろしくお願いします。
「ほんと、ここどこよ…ラノベやらに出てくる転生者たちって、みんな
と実感しながら、腰が引けて少ずつしか進まないのは、やはりわたしが勇者じゃないからだろう。モブでもいい、幸せに楽しく暮らしたい。ささやかにして最大の幸せのために、今は進む一択。
「やっと見えてきた……」
どれだけ歩いたのか、歩くことが久しぶりすぎてよく分からないけど、2、3時間は余裕で歩いたはず。なんとなく日も陰ってきたような気もするから、大きく間違えてないと思う。
お腹すいた。喉乾いた。ここに来るまで、水を少し飲めたのはラッキーだった。魔物に出会わなかったことも。
湧水っぽい場所を発見して、鏡代わりに自分の顔を見ることはできないか?!と覗き込んだけれど、水場が小さくて見えず残念。
ただ、きれいなお水だったので(飲める気がする)と飲んだら、とっても美味しかった。幸いお腹の調子も悪くない。水筒になるようなものは持ってないから、なにも持ち歩けていない。
拾った木の枝だけは、ずっと持っているけれど、この木の枝も草が生い茂っている場所なんかではかなり役に立ってくれて、転生者パワーは発揮してないけれどありがたい存在になってくれた。
あの獣道っぽいのも進んで正解だったということになる。
それより遠くに見える街っぽいもの。そこを目指さなきゃ、この先、生きていける気がしない。
神様はこなかった。どれだけ寝坊しているんだろう?
頑張れわたし!進むしかないんだから。あと何時間かかるか分からないけど、目指せるものもないし、行こう!!
とにかく歩く。日が落ちる前になんとか!
だってこういうの散々読んだよ、時間になったら街を魔物から守るために閉まるよね?そしたら野宿確定。魔物と戦うスキルも持ち合わせていないので、なんとか街に入れてもらいたい。
街へ入る入行料を取られませんように。もちろんお金もありません。ヘトヘトになりながら体に鞭打ちさらに1時間近く歩いたんじゃないか?と思ったところで街に着いた。
「人がいる!村人発見!!」
嬉しさのあまりダッシュ。早く早くと門の近くに立っていた人を見上げた。
大きい…さすが冒険と魔法がありそうな異世界。その男性に声をかけたい。ぜぃぜいしながら必死で声をかけたら同時に頭上から声。
「あのっ…」
「▽◇●⬜︎●#○☆※××……」
わかりません、神様……(泣)
言語変換スキルもなし?テンプレがことごとく通用しないな、この世界。
しかし、どうやら歓迎されてないような、お前誰だ?!的なのは感じ取れます…。
察知能力は長きにわたる入院生活で培ったもの。ここで活きるとは。経験で無駄なものは無かったのか。
わたしすごいな、と感心していたら門番さん?兵士さん?怒鳴り始めた。これは、よくない。
やばい!捕まったりしたらどうしよう。せっかく街まで辿り着いたけど言葉が通じないのなら意味がない。
「これ、逃げる方が良さそう。悪いことしてないのにーーーー!!」
気付いたらダッシュしてた。もちろん街から離れるためのダッシュ。
門番さんの声はなんか、うっすら聞こえるよっ。遠ざかる感じはするから、わたしの足は速いのか。頑張れ!とりあえず逃げるー!
なのに、ここまで来たのにっ!戻らなきゃいけないのー?!
神様、わたしどうなるの?いい加減、助けに来てくれてよくないか?
せめてわたしに言語能力やお金やスキルくださいー。
異世界を満喫させて!と、思う気持ちとは裏腹に、戻る一択の選択肢ってどういうことよーーーー!!うわーーーん!!
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